§38 結論と代償
理屈は理解した。
個人的な意見としての異論は勿論ある。
でも他の世界の事も知っている重鎮が様々な要因を検討した結果の判断だ。
それは尊重するべきだろう。
「わかりました」
「無論、異論はあると思う。だが今回は決定という事でどうか了解して欲しい」
「ええ」
まあしょうがない。
それに元々その辺りの知識はあまり細かくはわかっていなかったのだ。
せいぜい原理だけ。
自分で自作する腕は残念ながら無い。
俺一人ではこれらの技術を実用化させるのは無理だろう。
「さて、ここからは私の番かな」
この人が誰かは知っている。
二十代そこそこにしか見えない彼はカウフォードの市長、ディアマント氏だ。
入学式の時に挨拶をしていたから顔がわかる。
「さて、その代わりと言ってはなんだけれどね。科学技術世界で生きてきた君に見て貰いたい物があるんだ」
何だろう。
「ステルダ地方の西北端近くにシルダという街がある。ここがどういう街かは既に知っている筈だね」
その街の名前はレマノの知識の中にある。
「魔法都市ですね」
彼は頷いた。
「その通り、魔法の使用と研究に特化した魔法都市だ。
通常は元々の住民と許可を持った魔法使いしか入る事が出来ない。ただしシルダの管理庁の許可証があれば別だ。
進歩した科学技術を知っている君がシルダに行けば、きっと新たな発見がある筈だ。もちろん学校の授業もあるから今すぐという訳にはいかない。夏休みくらいがいいだろう。どうせなら仲のいい先輩や友人達と一緒に行ってくればいい。
そんな訳で許可証を用意した。ちなみに五人分だ。一人足りないと思わないでくれよ。許可証を必要としない友人がいる筈だ。彼女に色々案内して貰えばいい」
なかなか面白そうな話だ。
更に言うと俺の現在の生活環境をよく御存知の模様。
それにしても彼女とは誰だろう。
魔法使いというとアン先輩かメル。
おそらくメルだな。
「ありがとうございます」
かなり本気で頭を下げる。
そして中央の席の男が口を開く。
彼はこの中で最も有名な一人だ。
「さて、今日の話はこんな処かな。あとこの話は別に秘密じゃ無いから友人達に話してもいいよ。ただ蒸気機関と内燃機関の原理や構造についての話だけは控えてくれ。
そんなところで今日は時間を取らせたあげく、残念なお知らせをする事になって申し訳無かった」
国王様自ら頭を下げられてしまった。
おいおい。
「いえ、とんでもありません。こちらこそ色々お手数をお掛け致して申し訳ありませんでした」
慌ててこっちも頭を下げる。
この国は中級学校の生徒相手でも容赦無く大人扱いできちんと礼儀を通してくる。
だからこそ逆に気が抜けない。
「それでは大変申し訳無いが、私達はこれで失礼する。話が急ぎ足で申し訳無い。詳細は後程パヴァリアに責任持って引き継がせて貰う。パヴァリア、宜しく頼むよ」
「了解致しました」
パヴァリア先生がそう言って頭を下げる。
同時に、ふっと重鎮達の姿が消えた。
残ったのはパヴァリア先生と俺だけだ。
「これは?」
「投影魔法だ。首長はそう簡単に領地を離れるわけにいかないからな。さて、我々も戻るぞ」
俺が立ち上がると同時にまたあの浮遊感が襲ってきた。
「これは先生の魔法ですか」
「私は魔法使いでは無い。それにこれ程の魔法を使う魔法使いはそういない。私も知らんがおそらく王室か首長付の魔法使いだろう」




