§35 次の共同制作課題
その直後。
「たっだいまー!」
ラインマインが帰ってきた。
「どうなのだ?」
アン先輩がさっと表情を変えて尋ねる。
「廊下だと少し滑るね。でも他は悪くないよ。何より走っていて安心だし。ざっと公園まで走った感じでは問題は無いかな」
「ではこれも商品化出来るか送ってみますね」
そんな訳でヘラの実家に配送準備。
俺では無くアルが使用説明書を書いて、更にアン先輩が制作者側からの意見を添えて箱詰めし、ヘラが自分からの手紙を添えて箱を包装する。
なおアルが取扱説明書を書くのは俺より文字も図も書くのが上手いから。
説明も短くわかりやすい文体で書いてくれる。
完成した小包をヘラが手に持つ。
「では行ってきます」
荷物を出しに出ていった。
「でもこれはどうかな。ヘアブラシ程一般的では無いし、色々部材も使ったしさ」
俺自身はちょっと今回の物に不安がある。
「下駄や草履に比べると高価になるだろう。でも一定の需要はあると思う」
「私は欲しいな。これがあれば実家に帰る時に足を怪我しないし」
「交換用の靴底五つ添えて正銀貨一枚か二枚というところかの」
「それなら私は買うな。お父さんもきっと買うと思う」
皆さんの意見はそんな感じ。
特にラインマインの評価が高いのは、実際に走りまくる事があるからだろう。
そして。
「さて、次は何を作ろうかの」
アン先輩はいくつかの紙を見て色々考えている。
俺が日本にいたころの道具でこっちの技術で出来そうなもののメモだ。
「色々材料が足りないですよね。本当は色々金属製品を使いたいところですけれど」
この国では金属はかなり高価だ。
一番量産されている鉄でさえ、たたら等の製法で作っている状況。
だから鍋ひとつで正銀貨三枚とか普通にする。
この前実験で使った針金だって国立の上位中級学校だからこそあったという感じ。
普通は高価すぎておいそれとは使えない代物だ。
「焦るな焦るな。僕らはまだ上位中級学校生なんだからさ」
「そうですけれどね」
現代日本に住んでいたからだろうか。
あれも足りないこれも足りないと思ってしまう。
タイヤのゴムとか金属製品とか。
思ってもしょうが無いのだけれども。
「よし、取り敢えず第二弾を決めたぞ。このザックとかバックとかなのだ」
アン先輩がそう行って俺のメモを取り出した。
これはアタックザックとフレームザック、それにディパックの開発案だ。
この世界で荷物を運ぶのに使われているのは、袋に背負紐をつけたような物。
例外としてラインマインのお父さんが箱を背負うための特注フレームザックみたいなのを試作して使っている。
でもあれは見るからに硬くて頑丈な人で無いと背中を痛めそうな代物だ。
そんな中、立体として背負う形を考えて縫製したバックを開発すればそこそこ便利なのでは無いかという案がこれ。
まずは荷物運び用の大型フレームザック、普通の人が大荷物を持つ時用のアタックザック、日常に使えるディパックの三種類の開発を考えている。
「言われてみると確かに、今使っている袋って背負い心地は良くないのかもしれないな。重いと紐が食い込むし」
「まずは小さい方から作ってみる方がいいかな」
「小さいのと大きいのは実は構造がちょっと変わるんだ。大きいのは中にフレームを入れるし、身体と固定するベルトが増えるしさ」
「だからこそ簡単な方からつくってみるべきだろう」
いつもの議論が始まった。
こうやって議論をして、設計をして、素材も決めて発注して。
サンダルはコルクの調達のため一月かかった。
これはどれくらいかかるかな。
そんな事を思いながら設計図、そして紙で作った模型と段階を進めていく。




