§33 今度はサンダルの試作です
翌日放課後。
注文していた素材が摂理実験室に届いていた。
その素材とは地球で言うところのコルク。
この国でも南方で栽培しているというので取り寄せたのだ。
「これで色々作れるのだ!」
アン先輩が張り切っている。
ここ摂理実験室には様々な素材が置いてあるが、在庫量はそれほどでもない。
だから大量に使いたい素材は見本を中心に注文するしか無い。
そんな訳で貯まる一方のお金を使って色々使えそうな素材を買い集めている。
その一つがこのコルク。
ゴムが無いここでは重要なクッション役だ。
「蛇口や水筒の栓くらいにしか使わないよね、これ」
ラインマインは今日もいつもと同じ調子。
あの後だから何かあるかなと思ったけれど特に何も無かった。
俺は色々どきどきしっぱなしなのだが、意識しすぎだろうか。
「まずはサンダルというものだな」
「ええ」
俺が暇を見て描きためたいくつかの図案からサンダルの紙を先輩が出す。
「底はこの藁を編んだものでいいのだな」
「滑り止めになって、かつ柔らかい物という事で」
「コルクの足形は前に薄く、かかとに厚くでいいのだな」
「ええ。厚さは革紐が無理なく止められて耐久性も考えて」
今作りはじめたのはスポーツサンダルもどきだ。
この国には履き物は草履、下駄という感じの物がメイン。
この辺はゆっくり歩くならいいのだが、走るのには向かない。
走る場合は裸足か、長い紐のついたわらじを履くことになる。
この走り用のわらじは紐で足首に縛って履くのだが、面倒で着心地も悪いそうだ。
「結局裸足で走った方が楽なんだよね」
ステルダから走って学校まで来たラインマインの話である。
だから履き心地が良くて、かつ走ることも出来る靴を作ろうと思ったのだ。
だが問題はいくつもある。
まず足のサイズ。
靴だと色々なサイズを作らなければいけない。
それに靴底に使っているゴムという素材はこの国には無い。
その辺を色々皆で案を出し合って作ったのがこのスポーツサンダルもどき。
靴底はゴムでは無く葦藁を編んだ素材。
これを革紐でサンダル本体にくくりつける。
サンダル本体はコルク製。
ある程度の柔らかさと柔軟性を持っていて、クッションにもなる。
そして上は革紐で足先と甲、くるぶしを止める形式にした。
またつま先は石とかで怪我しないように固めの革で保護。
更に耐久性とか藁の編み方や凹凸だとか色々考えた。
ただ大きいコルクの板材がこの辺では手に入らない。
そんな訳で実際の制作が延び延びになっていたわけだ。
まずはラインマインの足形を取り、一回り大きい形でコルク板を切り抜く。
かかと部分を厚くするためニカワを熱した接着剤でかかと部分をコルク二重に。
靴底部分の編み藁は革紐で止める。
靴底が減ったら簡単に交換できるように折れにくい木で引っかける場所も作った。
その辺のこの国にあわせたカスタマイズはここの全員で意見を出した成果だ。
いわば技術研究会の完全合同制作物の第一号だ。
「それにしてもアン先輩の魔法は便利だよな。思いのままに物が作れるし」
「この魔法そのものは珍しくない。千人に一人くらいはいるのだ」
それって人数比にするとかなり少ないのでは……
「大きな街等に行けば大抵数人はいるのだ」
「でも仕事の時間単価が普通の十倍はするんですわ。でも確かにそれだけの仕事はしますから仕事は途切れないようです」
「命令されて人と同じ物を作るのは面白く無いのだ」
そんな会話をしつつ、試作品第一号が出来上がった。




