§23 美味しい食事
ただこの組み合わせ、美味しいけれど喉が渇く。
見るとあのボールから直接あの水と何かを混ぜた物を飲むようだ。
なので俺も試してみる。
ボールは大きいので間接キスにはならない。
飲んでみて気づいた。
これって向こうでいうところのカ●ピスとかコー●スだ。
つまり甘い系の乳酸菌飲料。
「美味しいな、どれも」
「どれもラインマインの家の特産品なんだ。ステルダは遠いからこっちで買うと高いけれどさ」
「チーズやパストラミはともかく、この飲み物は日持ちしないしね。一周が限界。だからステルダ近郊しか出していないの」
「でもどれも美味しい。クラッカーもバターがしっかりきいていて」
そう、俺の元いた世界に持って行ってもこれは評判がいいだろう。
それくらいに美味しい。
「ラインマインの家ってこういう物を作っているんだ」
「農場も工場もお店もあるかなり大きい家なんだ。父もこの飲み物が好きで、水や酒と混ぜてよく飲んでいた」
「ステルダでも三指に入る大きな家」
アルとメルがそれぞれ説明。
「でも内情は色々大変なんだよ。農産品はどれもこれも天候に影響受けるしね。チーズとかパストラミとか製造に時間がかかって貯蔵も出来る加工品でやっとバランスをとっている感じ。この飲み物はチーズやバターを作る時の余りの乳清で作るから利益率いいんだけどね。
他にも加工品を色々考えたいっていつも父が言っている。このクラッカーも保存がきいて便利だけれど他の家でも作っているしね」
なるほどと思ってちょっと考える。
そして知識をさらってみる。
うん、この国には発酵させたふんわり系のパンというものは無いようだ。
クラッカーか、硬くて保存が効くガチガチの無発酵パンのようなものだけ。
なら、上手く行けば儲かるかな。
このハムとチーズでサンドイッチを作ると美味しそうだし。
酵母は干しぶどうとかで作れるよな。
他の材料はありそうだし、あとで作り方を考えよう。
「どうしたの、何か考えているようだけれど」
「また何か、作りたい物でも思いついたか?」
ラインマインとアン先輩が俺の顔を覗き込む。
「いや、ちょっと向こうの食べ物で作れそうな物を思い出したんだ。ただすぐには作れないし材料や設備も必要。だから明日の放課後にでも作り方のメモを書いて、ラインマインの実家で試して欲しいんだ。色々手間がかかるから最初の一個が出来るまで二周くらいかかるかもしれないけれど」
ちなみに一周は六日だ、念の為。
「それはどんな物なんだ?」
アルが真っ先に聞いてくる。
「このクラッカーと同じ材料で、もっと柔らかくてふわふわした感じのものになると思う。でも材料さえ揃えばクラッカーと同じ施設で作れる筈なんだ」
「何か楽しみですね」
ヘラものってきた。
「それって保存が効きますか」
「残念だけれど硬く作って三日が限度かな」
「うちの商売には向かないですわね」
ヘラ、相変わらずしっかりしている。
「でもいいの、そんなの教えて貰って」
「多分教えただけの内容じゃ簡単にはうまく作れないと思う。でもそういった食品加工の専門家なら、理屈さえわかれば色々工夫して商売になる物まで作り上げられると思うんだ」
「何か楽しみなのだ」
アン先輩がそんな事を言っている。
あ、そう言えばサンドイッチと言えばマヨネーズも欲しいよな。
卵も酢も油もあるから、これは放課後にでも試してみればいいか。
でも生卵ってこの世界のものは使っても大丈夫なのだろうか。
そんな事を思いつつ、美味しいクラッカーサンドをいただく。




