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進学先は異世界でした ~俺の異世界学園生活記  作者: 於田縫紀
#35 合宿第二部に向けて

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182/216

§182 合宿最後の夜に

 そんなこんなで南の島合宿も五日目の夕食を迎えた。

 明日に帰る予定なので今日が最後の夜だ。


「刺身にも飽きてきたなんて贅沢ですよね」

「毎日食べているからしょうがないのだ」

「でも確かに揚げたり干して焼いたものの方が旨味が強い気がするな」

「そろそろ野菜も欲しい」

「持ってきた分は食べ終わっちゃったしね」

 そんな勝手な事を言いつつも刺身だの漬けだの一夜干しだの揚げ物だの。

 そんな豪華な食事を食べながら会話。


「これで合宿も終わりだな」

 予定では明日にカウフォードに帰る予定。

 途中カイドーでヘラと荷物を下ろし、カウフォードで残りの面子は解散。

 そういう予定だ。

 ちなみに下ろす荷物とはキャンプ用に開発した一式全部。


「おかげで色々と良い道具が出来たと思いますわ」

「いくらくらいになるかな」

「結構色々改良したのだ」


 そう、キャンプ用具類はここに来た後も日々改良している。

 魔法調理器具は魔力の弱いこの場所でも使えるよう増幅機能を更にアップ。

 コットには寝心地を考えて取り外し可能な枕を付けた。

 水なしで自動洗浄が可能な魔法まな板はここへ来てから開発した一品だ。

 多少汚れようが魔力を通すだけで汚れが一気に粉末化して落ちる。


 更に釣り道具まで色々改良を加えた。

 サバ皮を付けた『餌無し針付き釣り仕掛けセット』は糸にウキや集魚餌入れ、錘にサバ皮付きの針三本をセットした高機能な仕掛け。

 岩場や船着き場のようなところからなら餌無しで投げても釣果を期待できる。

 竹カゴ部分に魚のアラとかを入れれば更に釣果を期待できる一品だ。

 

 これらは全部カイドーでヘラの実家に引き渡し予定。

 使い方を示す説明書きや図等も作成してある。

 今では魔法推進舟を開発している関係でヘラの実家でも魔法製品を製作可能。

 そこで舟以外にも商品を色々揃えるための開発作業。

 それを今回の旅行は兼ねていた訳だ。


「もう課外活動の活動費は充分貯まりました。ですから今回の収入は皆で分けようと思いますの。売れ行き次第ですけれどいいお小遣いになる事は保証しますわ」


「何か遊んでいるだけでお金が入るって納得いかないな」

「貰える物は貰っといて損は無いと思いますわ」

「同意」


「でもアルは稼いでもどうせ本に消えるんでしょ」

「……否定できない」

 そんな感じで話しながら夕食をいただく。


「ところでこの合宿の後、皆はどうするんだ。まあ実家に帰ると思うけれど」

 特にこれといった意図無しで俺は尋ねてみる。


「私は普通にアムの実家に帰る予定だよ」

 ラインマインがそう言った時だ。


「でも合宿の第二弾を実施する予定ですわよね、アン先輩とホクトは」

 ヘラがにやりと笑ってそんな事を言った。

 えっ!


「何の話なのだ?」

 アン先輩が知らないふりをしつつそう尋ねる。


「アン先輩、私の昔のあだ名を憶えていらっしゃいますか」

「由緒正しい銭ゲバ、必殺商売人、帳簿マニア、歩く出納帳、価格判定機……多すぎて憶えきれないのだ」


 おいおい。

 アル、メル、ラインマインがうんうんと納得してしまっているぞ。

 ヘラ本人は若干顔をしかめているけれど。


「……確かにどれも憶えがありますわ。ではその中に地獄耳というのがあったのを憶えていらっしゃいませんか」

「そう言えばあったのだ。十離(10km)先で銅貨が落ちた音も聞き漏らさない地獄耳、そんなのもあったのだ」


 全てが商売や金銭絡みという処が何というかヘラらしい。

 いやそういう問題では無かった。


「アン先輩、ここの後に行こうとしているクバーツとはどういう処かしら。この場で説明していただけると嬉しいですわ」


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