§174 刺身を釣りに?
あまりに豪華な貝いろいろは取り敢えず袋に入れて海に浸けておく。
流石荒らされていない無人島。
日本ならいい値段しそうなあんな貝が採り放題なのか。
恐ろしい世界だ。
「あれだけでも豪華ですが、ついでだから魚も釣りましょう。でもその前に餌を確保しようかと」
「さっきの貝では駄目なのか」
「餌にするには勿体ないです!」
そんな訳で餌に良さそうな小さい貝とかカニなどを探す。
岩場をじっと見ると動いている貝がいた。
ちょうどいい大きさのヤドカリだ。
有り難く捕まえる。
更に小さめの貝をいくつか剥がして確保。
そう言えばこの島にはアサリとかハマグリなんてのはいないのかな。
干潟があればアナジャコとか探すのも楽しいのだけれど。
後で砂浜を探ってみようかな。
「そう言えば砂浜で遊んでいた時、何か足下に平たい貝がいたけれど、あれって食べられるのかな」
おい、ラインマイン!
「それも美味しい貝だ。何処にいた?」
「こっちの砂浜」
ラインマインに案内されて岩場から砂浜へ。
ヘラやアル、メルはこっちで海水浴をしていた模様。
乗ってきた舟もここの砂浜に引っ張り上げてある。
「あ、ホクト、気がついたようだな」
「魔力切れでさ、テントの設営とか色々済まなかった」
「ここまで移動魔法で連れてきてくれただけで充分ですわ。ただ移動した直後はホクトが気絶するし舟は動かないしで色々大変でしたけれども」
「アルの魔力では舟が動かなかった。私の魔力も弱まっている」
なるほど、色々大変だったようだ。
「それで何か平たい貝がいたって聞いたんだけれどさ」
「海の中だからホクトの格好では無理だな」
「膝くらいの深さの処ですわ。今ラインマインが行っているあたり」
ラインマインが海に入って何やら足をもぞもぞさせている。
「いた!この貝」
ラインマインは水中に手を突っ込んで何かを拾う。
そこそこ大きめの二枚貝だった。
アサリかハマグリかヒラガイかビノスかは俺には判断出来ない。
でもいずれにせよ美味しい貝だ。
「それも文句無く美味しい貝だ。特に焼くか汁物にすると最高」
「結構いっぱいいるよ。本気になれば幾らでも獲れそう」
なんと贅沢な!
「取り敢えず後で獲りましょう。色々使い道が多いですから」
「それよりホクトが起きたので、そろそろ舟で釣りに行こうなのだ!」
アン先輩が声をかける。
「あ、釣りに行くならラインマイン、その貝をあと十個くらい獲れるかな。いい餌になるんだ、それは」
「ちょっと待ってね、簡単だから」
「僕も協力しよう」
「私も」
そんな訳で餌用の二枚貝を一気に三十個近く獲ることに成功。
何か本当に幾らでも獲れそうな感じだ。
これはいい場所に来た。
「さて、それでは舟を出すのだ」
アン先輩とラインマインで舟を引っ張って海上へ。
「それでは刺身を釣りに行くのだ!」
釣りに行くのは魚であって刺身じゃ無い!
まあ結果的にはそうなるかもしれないのだけれども。




