§150 朝の一コマ
それでもいつの間にか本当に眠ってしまったらしい。
鐘の音に気づいて目が覚める。
今のは一の鐘かな。
取り敢えずゆっくり身を起こす。
ラインマインはまだ寝ている模様。
ついでに言うとやっぱり寝相が酷い。
布団を蹴飛ばし浴衣もはだけて色々見えそうになっている。
じっくり見るとまずいのでささっと布団だけ掛けておく。
風邪をひいたら可哀想だし。
音を立てないようにゆっくりと扉を開けて廊下へ。
リビングへ行ってみると既にアン先輩が起きていた。
「あ、ホクトおはようなのだ。ちょうどいいのでお願いがあるのだ」
「何ですか?」
「いつものお腹が楽になる魔法を頼むのだ」
見ると六個あったおにぎりが無くなっている。
「先輩、食べ過ぎです」
「中に牛肉が入っていて美味しかったのだ。食べないままだと勿体ないのだ」
まあしょうが無いので魔法は起動する。
『消化促進プラス糖分脂肪吸収抑制排出!』
「楽になったのだ。これで心置きなく朝食が食べられるのだ」
おいおい、食べる事ばかりかよ。
「それでは朝食まで風呂に入ってくるのだ」
やりたい放題だな、全く。
「あ、その前に業務連絡なのだ。今日図書館に行ったらにちょっと探検するので心の準備をしておくのだ。図書館の裏に遺跡と思われる痕跡があるのだ。移動魔法のため上空からエバシを見た時に確認したのだ」
おいおい、そういう事は先に教えてくれ。
まあ心の準備をするだけだけれども。
「それでは一泳ぎしてくるのだ」
風呂はプールじゃ無い!
まあそう言っても始まらないのでアン先輩は無視。
さてどうしようかな。
宿のパンフレットについているエバシの地図を見てみる。
図書館は大体南東二.五離というところか。
移動魔法で目的地を探す要領で図書館を調べてみる。
この距離だから高度は五十腕位でいいだろ。
見てみると確かにカウフォードにもある大きい穴状の場所があった。
ただ穴の中は土で、建造物は見えない。
その周囲は林で、南側に大きい建物がある。
あれが図書館だな。
もしこの大穴が遺跡なら、何処かに入る場所があるはずだ。
うちの学校みたいに何処かに入口があるとすると、怪しいのは図書館。
他に近くにそれらしい建物は無い。
まず図書館を調べてみて、駄目なら移動魔法で乗り込んでみるか。
どうせアン先輩も同じ事を考えているだろうけれども。
「あ、ホクト。おはよう。早いね」
ラインマインが起きてきた模様だ。
「おはよう。今日はゆっくり寝ていても大丈夫だけどな。朝食も遅めだし」
いつもは二の鐘で朝食だけれど今日は三半の鐘で朝食だ。
しかもこの部屋に運ばれてくる予定だから直前に起きても大丈夫。
「折角温泉に来たんだから朝も入らないとね。ホクトも一緒に行こう。どうせ時間はいっぱいあるし」
確かに時間はいっぱいあるけれどさ。
「ほら、行こう!」
俺はラインマインにひっぱられ、ずるずると脱衣場へ……
何で朝からこうなるんだ!
口に出して言えないけれど。




