§15 落ちてきた機械と必要なもの
そこにあったのは様々な機械類だった。
大きさはみかん箱大からライターサイズまで。
何となく見覚えがあるものも、そうでないものもある。
「ここは摂理実験室、代々の技術研究会の根城なのだ。ここに私を始め先代までの会員が集めたこれら『落ちてきた機械』が眠っているのだ。残念ながら私達では生きているのか死んでいるのか、使えるのか使えないのか、使えるとしたらどうやって使うのか、何一つわからなかったのだ。
そんな訳でここ数年、我が技術研究会は何も実績がないままなのだ。しかも今はフルタイム会員は私だけ。名簿にはあと五人載せているがいずれも幽霊会員という状況。
だから頼む、ちょっとでいいから力を貸して欲しいのだ」
俺は苦笑する。
まあ必死さは伝わったかな。
かなり無茶な方法でだったけれど。
「ならこの機械類、さわっていいですか」
「触っても多少分解しても構わないのだ。ある程度は私の魔法で修復できるのだ」
便利だなそれ。
そんな訳で俺は機械類を中央の大きな机の上に運びながら色々観察する。
「すみませんホクトさん、先輩がこんなんで」
ヘラがそう俺に弁解。
「こんなんとは何なのだ。無理矢理連れてきただけなのだ」
「それで充分です。だいたいアン先輩もレマノ補佐もあそこの家の人は強引なんですよ。私もこの学校を受験する予定ではありませんでしたのに、地区で一人もここに進学しないのは不名誉だって言って、三ヶ月つきっきりで勉強させられたんですから」
何だそれ。
「三ヶ月もつきっきりでいられるなんて、そっちの補佐官は暇なんだね」
ラインマインが当然の感想を口にする。
「レマノ補佐は魔法の達人で、三人までは分身出来るのですわ」
「げっ」
なるほど、確かに知識の中に分身魔法が入っているな。
俺には使えないけれど。
そんなこんなで色々な機械類のうち半分位を引っ張り出した。
そして見覚えのあるもの、何となく見当がつくものとそれ以外に分けていく。
更に俺が何とか出来そうなものというと……
お、プラモ等でよく使う130モーターそっくりさんが出てきたぞ。
軸を指で回してみるとちゃんと動く。
これなら電気さえあれば動くなきっと。
しかしこの世界に電気という概念は無い。
電池になりそうな物はというと……
俺は周りを見てみる。
ここは摂理実験室、つまり物理と化学両方の実験室だ。
薬品類も試薬類も揃っている感じ。
これなら何とかなるかな。
「アン先輩、これなら壊れていなければ動くかもしれません。若干の材料が必要だけれどいいですか」
「この国に存在する大抵の物質はこの部屋にあるぞ、大丈夫なのだ」
よしよし。
「なら
○ 針金、金属製で自由に折り曲げたり出来るもの、細い方がいいです。
○ 亜鉛、出来れば板状がいいです、二つ必要です。
○ 酢、酢酸というほど濃くなくてもいいです。
○ 黒鉛の塊か、無ければ銅板。二つ必要です。
○ コップを二つ。
これで壊れていなければこれを動かすことが出来ます」
要はレモン電池のようなものを作ってモーターを動かそうという訳だ。
コップ二つというのは一つではモーターを動かす電圧まで達するか不安だから。
レモンを探すのは面倒なので酢酸を指定した。
でも成分的にはクエン酸の方が良かっただろうか。
この辺は小学校では厳密に教わっていないのでよくわからない。
まあいい。
動かなければその辺を色々試してみよう。
「よし、用意するのだ」
アン先輩が動き出した。




