§146 露天風呂付きコテージ着
アン先輩が移動魔法を起動する。
景色がふっと変わった。
大きなログハウスの目の前に到着だ。
「それではチェックインをしてきますわ」
ヘラが受付の方へ歩いて行った。
俺は一つ疑問に思った事を聞いてみる。
「アン先輩、こういう一度も来たことがない場所へはどうやって移動魔法をかけるんですか」
「まずは地図を見て、大体の方向と距離を合わせ、上空三百腕位の処から見て場所を確認するのだ。それで見た状態で微調整をかければ五回くらいで大体目的地の距離と方向がわかるのだ。
ただ今回は事前にこれをやって、絶対座標を確認しておいたのだ」
なるほどなあ。
上空から見て確認するのか。
今度試してみよう。
「紅葉がきれいだよね。カウフォードはまだだったのに」
「こっちの方が寒いんだろう」
そう言われてみればちょっと気温が低いような。
「水の音が聞こえる」
せせらぎというか沢レベルの音だ。
「何か自然が多いところに来たような気がするね」
「カウフォードだってけっこう緑は残っているけれどな」
「そういう雰囲気のない事は言わないの」
まあそうだな。
ちょい反省。
「受付終わりましたわ。これからコテージの方へ案内してくれるそうです」
そんな訳で俺達は宿の方に案内して貰って、
「うわ、吊り橋だ」
「細いね。揺れるし」
「何か卵のような匂いがする」
「温泉の匂いですわ」
なんて感じでちょっと歩いて結構立派なログハウスへ。
「こちらのログハウスが専用になっております。お食事は十二の鐘が鳴った後、こちらへ持って参ります。お風呂は建物内の他、建物内のお風呂から専用の露天風呂にでていただく事も出来ます。それではごゆるりとお過ごし下さいませ」
宿の人が去ってから早速ログハウス内外を探検というか確認。
部屋はテーブル付きの大きいリビング、三つベッドがある寝室が三部屋、カーペット敷きの十畳くらいの部屋が一つの四部屋に、トイレ洗面所風呂が付いている感じ。
風呂は洗い場と湯滝は普通の宿と変わらないが、湯船がある処が他と違う。
「広いし結構立派だな」
「十人くらいで使っても大丈夫そう」
「温泉の匂いが結構するね」
そして浴室にある扉を開けると河原だった。
川の水面から少しだけ高いところを竹垣で囲ってある感じ。
目の前は川のせせらぎで回りは紅葉の山の谷間。
そして大きい石造りの浴槽が川を見下ろす感じで設置されている。
「こういうお風呂もあるんだね」
「お湯に浸かるというのは初めてなのだ。でも気持ちが良さそうなのだ」
確かに気持ちは良さそうだが、不穏な気配もする。
いやこの国の文化としては混浴は普通なのだ。
わかっているけれどこれはちょっとあまりに……
「これはちょっと試したくなるなあ」
「同意なのだ」
こらそこの二人、脱ぎ始めるな!
「湯船に浸かるのは身体を洗ってから、がマナーだそうですわ」
「そうなんだ」
取り敢えず二人とも脱ぐのを止めた。
ほっと一息。
でも根本的な問題解決にはなっていない。




