§129 危険なお誘い
「休日ですから。文化の多様さを満喫させて貰っています」
カゴには数多くの薄い本。
内容はあえて確認しない。
何かはだけている少年の絵が見えるけれど。
「そう言えば移動魔法を使えるようになったようですね。アンから聞きました。それでここに買い物に来た訳ですか」
「ええ。友人と一緒に」
「何ならこの後ちょっと休んでいきますか。御友達も一緒に」
おいちょっと待った。
レマノさんにはこの国に来て早々に食われた前科がある。
なので慌てて否定する。
「今日はクラスメイトの女の子と一緒ですから」
「相手が女の子でも私は構いませんよ」
そういう問題か!
「いえ、今日は大丈夫ですから」
からかわれているのかもしれない。
でも下手な返事はしない方がいい。
洒落にならない事態になる可能性があるからだ。
「それでは今日は失礼します」
俺一人ならともかくラインマインも一緒だとまず過ぎる。
「残念ですね、それではまた」
レマノさんは案外あっさりと引き下がった。
戦利品をいっぱい抱えているせいかもしれない。
取り敢えず助かった。
いや俺一人なら別にいいんだけれど。
レマノさんはやっぱり綺麗だし。
なんて考えていると。
「今の誰?」
いきなり出てきたラインマインにそんな事を聞かれる。
ドキッ!
寿命が数分縮まった。
「俺のこの国での保護者代わりでアン先輩の姉貴分みたいなもの」
とりあえず間違ってはいない説明をしておく。
「綺麗な人だね」
確かにレマノは綺麗だけれどさ。
ラインマインと一緒の時はちょっと遠慮したい。
色々と心臓に悪いから。
「ところで本は選び終わった?」
「うん、私の方はこれでいいかな」
カゴに四冊程薄い本が入っている」
「じゃあ俺もこれでいいや。会計しよう」
ちょっとこの図書館にこれ以上居続ける気力が無かった。
そんな訳で受付兼会計でお金を払って梱包して貰う。
本をそれぞれのディパックに入れて準備OKだ。
「さて、そろそろ帰ろうか」
「そうだね」
そんな訳で自転車にまたがる。
「このまま魔法で移動する?」
「ここだと方向がわからないから街道まで行って貰っていい?」
「わかった」
再び自転車は暴走を開始する。
慣れてみればそれなりに色々ラインマインが注意しているのがわかる。
本当に人の動きが読めなさそうな場所は速度を落とすし。
でもこの世界でこの速度で動くのに普通の人は慣れていない。
それに反射神経等に自信があるせいかかなりトリッキーな動きもするし。
寿命が縮まるような運転に少しばかり耐えたところで自転車が停まった。
「これで街道に出たよ。カウフォードはあっち」
ラインマインがそう言って指を指す。
今度はこの方向に四十九離で計ってみよう。
方向を少し微調整。
ちょうど街道がカウフォードに入る手前の処が見える。
『移動魔法!』
俺は魔法を起動。
無事カウフォードの入口付近に辿り着いた。




