§117 怪しい手紙
ゆっくり会食をして、その後風呂と洗濯をした後。
部屋にもどったら机の上に封書があった。
封筒はカウフォード総合学園共通の茶封筒だが、俺が置いた物では無い。
誰かが俺の部屋に入って置いていったのだろうか。
『透視』
取り敢えず魔法で中身を確認。
カミソリとか爆発物とか、怪しい白い粉等は入っていない模様。
普通の手紙のようだ。
開封して中を読んでみる。
カウフォード総合学園共通の罫線入り用紙に文章は一行だけ。
『魔眼の使命に従え。この国の欺瞞を暴き真の姿を明らかにせよ』
他には差出人も何も書いていない。
これを書いた相手は俺が魔眼を得たことを既に知っているようだ。
ただその事実で範囲を絞ることは困難。
知識の魔法というものもあるから。
この手紙を送りつけるのも転送魔法持ちなら出入りの必要が無い。
つまり誰が出したか解明は困難。
気味が悪い。
何の目的があってこんな物を俺に送ってきたのだろう。
魔眼の使命とか国の欺瞞とか真の姿とか。
だいたい欺瞞とか真の○○とか言っている奴にろくなのはいない。
俺はそう思っている。
他の言葉で差別化できないからこそ真の○○で他は欺瞞だと言っているのだ。
でも俺に何を言いたくて何をさせたいのだろう。
まあこういう事をする奴らと御友達になる気は無いけれど。
取り敢えず机の引き出しにしまっておく。
取り敢えずどうこうする必要は無いだろう。
そんな訳で放っておくことにする。
◇◇◇
八月二日は周空でお休み。
だから幾分ゆっくり目に起きる。
まあ朝食は結局いつもの時間なのだけれど。
起きて着替えた後、ふと違和感を憶えた。
片付けた筈の机の上に封筒がある。
見覚えのある封筒だが昨日読んだ物では無い。
封が切られていないから。
ちょっと考えてから封を切って中身を読んでみる。
『この国の歴史は虚構。その事に気づき始めている筈だ』
相変わらず短い。
でも昨日の手紙より少しだけ興味が持てる内容だ。
確かにこの国の歴史には何処かに虚構がある。
遺跡の存在がそれを裏付けている。
この手紙の主は何処までを知っているのだろうか。
ただ、近づかない方がいいとも俺は思っている。
訪問販売系の物は信用しない方が無難だ。
押し売りも宗教も碌な物では無い。。
それに片方が間違っているからもう片方が正しいという論理も無い。
どっちも間違っているという可能性も高いからだ。
取り敢えずもうしばらくこの手紙の件は放っておこう。
俺に何かさせる気ならどうせ続報が来るだろうし。
そんな訳で俺はこの手紙も昨夜のと同じ引き出しに放り込む。
まずは朝食を食べてから考えよう。
それからでも決して遅くはない。




