小説初心者に一人称がおすすめな理由と罠(星の王子さま)
「小説を書き始めたい」という人がネットなどで調べると、三人称一元視点が支持されているいることが多い。確かに、便利な書き方だ。しかし、執筆初心者がいきなり扱うのは難しい。私は、一人称を推奨する。今回の参考図書は『星の王子さま』だ。
■一人称を推奨する理由
ネットで調べると三人称一元視点が支持されている。その他にも、神の視点など様々な視点について書いてある。これらは、小説をある程度の形、つまり、慣れてから扱うべき手法だ。三人称一元視点を否定はしないが、いきなり書くのはストレッチをせずに運動するようなものだ。一人称であれば、日記に近い形からスタートできる。最初から、名作を書く必要はないし、書けないというのが実情だ。一人称を推奨する理由は、『星の王子さま』にある。
ものごとはね、心で見なくてはよく見えない。いちばんたいせつなことは、目に見えない。
『星の王子さま』新潮文庫
この一節は有名なので、聞いたことがある人もいるかもしれない。これは、名言であるが、同時に執筆術にも当てはまる。つまり、他人の心の機敏を感じとるのは難しい。ましてや、小説で登場人物の心の内を書くのはなおさらだ。つまり、「僕」「私」などの一人称を推奨するのは、実体験や自身の思考を反映しやすいからだ。実際、『星の王子さま』は、一人称だ。名作にも一人称は多い。「一人称=カッコ悪い」という考えは過ちだ。
■一人称の罠
そんな訳で一人称を推奨するのだが、これにもデメリットがある。デメリットというより、罠に近い。『星の王子さま』に、こんなシーンがある。
王子さまがどこから来たのかわかるまで、僕には時間がかかった。王子さまはたくさん質問をするのに、こちらがたずねることには、まるでおかまいなしのようだったからだ。
『星の王子さま』新潮文庫
この文章には含蓄がある。このシーンを「王子さま=作者」、「僕=読者」として読み替えて欲しい。すると、「作者はたくさん質問するのに、読者にはおかまいなしだ」となる。つまり、執筆に置き換えるならば、「作者は設定や心情を事細かに書きたがるが、読者は置いてきぼりになる」ということだ。一人称の罠はここにある。執筆初心者が一人称を扱うと「私は~と感じた。なぜなら、~だからだ。そして、~と思った」となりがちだ。
小説を書くにあたり、登場人物のあれこれをまとめたメモを書く人がいる。これ自体は物語で矛盾を生まないために有効だ。しかし、それらの設定すべてを小説に書く必要はない。本筋に関わらないのなら誕生日や血液型などを決めるのは無駄だ、というのが持論だ。その間に、執筆する方が有意義だ。さらに言えば、あえて決めずに余白にすることで、あとから思いついたときに柔軟に変えることができる。
■まとめ
ここまで、執筆初心者に一人称を推奨する理由と罠を書いてきた。一人称に限らず、執筆の基本にはメリット・デメリットがある。そして、書きたい作品ごとに、どの手法がいいか検討する必要がある。書籍やネットで推奨されていることは、あくまでも参考にしつつ、自分なりに考えてから執筆すべきだろう。もちろん、この記事自体も私の持論だ。「これは間違っている」と思えば、三人称一元視点から書き始めても問題ない。重要なのは「自分で考えること」だ。多数派がすべてではないことを頭の隅に入れておいて欲しい。




