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私と魔女 −再会−  作者: 彩花-saika-
古の魔女 〜紫の魔女編〜
141/144

■ 白の魔女 ※前書きに該当話を載せてます

この話は過去話に関してネタバレを含んだ回になってます。

知ってから読むのと、知らずに読むのとでクレアの行動の意味が違ってきます。


■クレア8歳の誕生日

33 幼少期⑤ 8歳 初めてのプレゼント

34 幼少期⑥ 8歳 おかあさん①

35 幼少期⑦ 8歳 おかあさん②  


■プルプラの元へ

136 プルプラ① 若い魔女と年老いた魔女

137 プルプラ② 運び屋オードン

138 プルプラ③ 加護を知る者

139 プルプラ④ 三人の魔女


■クレア14歳の誕生日(前日)

84 約束⑫ ワタシの森

85 約束⑬ クレア!

 愛する娘……


 愛する彼……


 私は二人に会うことが出来ない


 これはそんな私のわがまま




 愛する娘。彼女の名前はクレア

 娘の誕生日には決まって"彼女"が教えてくれる。

 彼女の重み。彼女の声。彼女の表情。

 年を重ねるごとに少しずつ"彼女"の膝に乗る彼女は重くなっていく。


 私は嬉しい


 でも、私は『それ』をただ知るだけ。

 "彼女"を通して、知るだけ……


 記憶にあるけど、そこにいるのは"私"であって、私ではない。


 これは近くて遠い愛の話




     ※



■クレア八歳の誕生日


 娘クレアの八歳の誕生日。私は彼に頼んでいたことがある。

 クレアの父ウィリアムに、『彼女が八歳に成ったら私のペンダントをプレゼントして』と。

 私は傍で二人を見ている。

 家にはいつも、椅子を一つ多く用意してくれている。

 ウィリアムの椅子、クレアの椅子、そして私の椅子。

 クレアも隣の家の友達もその真の理由は知らない。

 ここに、私がいることは彼も知らない。


 でも、彼は椅子を用意してくれている。


 ペンダントを貰ったクレアが言った。


「これはお母さんとお父さんの二人から貰った初めてのプレゼント。すごくうれしい」



 今、目の前にいる娘がそう言った。私は椅子から立ち上がり彼女の頭に手を添える。たとえ誰も気づかないとしても、私は『今』この瞬間の愛する娘に触りたい。そして、時は戻る。クレアが鏡の前で嬉しそうに身に着けたペンダントを見ている。


 ウィリアムがクレアを見つめている。ふと、鏡越しに私を見つめた気がする。もちろん、彼は私に気づいていないだろう。見ることは出来ない。でも、私をまっすぐと見つめている。


 愛してる


 ただの一言…彼にそう伝えたい。


 クレアがおばあさんの所へ向かう。私は少しの間、座った椅子から動かないようにしてウィリアムを観察していた。椅子に座った彼が両方の掌を上にしてテーブルに優しく置いた。私は彼の手に両手を添える。今日は約束の日。きっと、私がいることをわかっているんだろう。


 けれど、彼が私の温もりを知ることは無い


 私は『今』にしかいないのだから……

 私にとっての『今』は彼にとっての『過去』

 決して交わらない時間


 クレアがおばあさんの家で何をしているかは"彼女"が教えてくれる。「お父さんは抜きで女性だけの誕生日よ」って言ってる。ただ、一緒に過ごせないのは残念……。


 それに彼女が目覚めるのも時間の問題。

 私はクレアの夢に赴き、記憶に残らない会話をする。

 眠っている時。夢の世界では時間の概念を無視する時がある。

 上手く波長が合えば、母娘の時間を過ごせる。

 ただ、夢の中で直接会えるのは一瞬…


 人生って思い通りにいかない。いい意味でも、悪い意味でも。

 彼女に触れたおばあさんが倒れた。驚くことにほとんど持っていかれた。

 私は席を立ち、歩き始める。

 別に落ちた蝋燭は問題じゃない。転がり、ぶつかり、すぐに火が消えた。

 それに慌てる必要もない。だって…


 私が動いてる間、世界は動かない

 私が動かない間、世界は動き続ける


 私がいる世界は、そういう世界


 クレアの元へ辿り着くと案の定、彼女が目覚めている。


 長い間、寂しかっただろう…

 ようやく彼女は目覚めた

 彼女は今……

 クレアは今、この世界で一つになる


 彼女は"私達"の集大成


 常に発し続ける光

 常に欲し続ける闇


 ベッドから起き上がっているのは八歳になったばかりの女の子。全身は黒く、髪の毛は真っ白。目覚めたばかりの自分に戸惑いを隠せない女の子。私が優しく抱き上げると、彼女は私を見ながら嬉しい一言。


 「お母さん」


 「クレア。誕生日おめでとう」


 初めての温もりに私は心から涙を流した。彼女は私と同じ時を過ごせる。でも、それはまだクレアの全てじゃない。すぐにクレアの手足から黒い色が抜け始めると、私の時間の中でも止まることのない炎が一気に燃え広がる。家を焼いているが、おばあさんもクレアも決して燃えない。これはそういう炎。私はクレアをベッドに戻し、彼女をゆっくりと見守った。座って、動かない。そして、周りの時間は動き出す。やがて、ウィリアムがやってくる。


 愛しい人

 私の最愛の人

 クレアの父親


 彼は燃え盛る炎の中へ迷わず駆け込んだ。そしてそれは起こった。彼はあの日以来、使うことのない加護を使った。知ってか、知らずか、私の目の前で……


 彼は戸惑っていた。


 それは当然よね。だって、私がいるんですもの。昔だったら気の利いた一言でも言って笑かしてくれたのかしら? でも、彼はとにかくまずはクレアを抱き上げた。加護で時を止めたはずなのに、動く炎に驚き苦戦はしていたけどあっという間に、そしてクレアを抱いたまま私に話しかけようとしていた。何を言うか考えているのね。


 彼が止められている時間は残り数秒。今は鼻血を出してまで頑張っている。久しぶりに使っているのに駄目ね…。私が彼に近づこうすると、彼が叫ぶ。


「だめだ! 動くな! 来る…な。あいし――」


 気を失いそうになりながら彼は加護をすぐに解く。クレアを抱えたまま膝をつくウィリアム。倒れる柱が止まるのを見てすぐにまた時が止まっていることに気づいた彼はハッとした顔で私を見つめる。当然よね…加護を解いたのに時間が止まってるんですもの。


「『愛してる』。私、最後まで聞きたいな。わがまましら?」


「ああ。愛してる。だから、だから……もう少し待っててくれ」


「うん。私、待ってるから。クレアをお願いね。私も愛してる。ウィル…」


 時が戻ると彼は急いで家を出る。そしてダンが彼を介抱する。



 ウィリアムの一言は決して私を拒絶しているわけではない

 むしろ、私を愛しているから

 私が、私の世界で、私一人で動く分には構わない

 でも、彼と共有した世界では…私は少しずつ崩れていく

 さっきのでも少し、ほんの少しだけど体が剥がれていく

 

 愛する彼に

 愛する私に


 会うほどに、私は死へと向かうこととなる


 今は耐えるしかない

 数十年? そんなの私達にとっては大した時間じゃない

 だって、今までどれだけの時間を待っていたか……


 今日はもう大丈夫。私は帰ろう。ウィリアムが無視して会いに来ても、クレアがそのことを知って力を使っても、私そこで動けば死へと向かう。今はまだ、その時ではないのだから……


 クレア、お誕生日おめでとう……愛してる





■プルプラの元へ


 クレアが目覚めた日。遠く離れた場所で悲劇が起きた。

 いち早くそれに気づいたのは紫の魔女プルプラ。


 どうやらアレクサンドラの娘アルマにある魔女の欠片が、クレアの目覚めに反応したようだ。アルマは人間で血統の魔女でありながら、同時に森の魔女でもある特別な存在になった。厄介なことに、それは魔女プルプラの興味を惹いた。


 プルプラはアレクサンドラに残る姉妹の欠片を通じて、目の前にいるアルマという特別な存在を探ろうとした。同時に、アレクサンドラは娘アルマの暴走する力にも対抗している。そして……母は子を守るために自分を殺すことを選んだ。


 アレクサンドラは、ウィリアム達が救い出してくれる。

 それにちょうどいいもの。彼にはいずれ彼女の元に行ってもらうつもりだったから。

 ただ、ウィリアムの存在に気づいたら彼女…プルプラはきっと止まらなくなると思う。

 そこで"私"から彼に贈り物。プルプラを追い出す役目を担ってもらう。

 

 プルプラは今回、目覚めることなく眠ってもらっていた。

 そのせいか"体を形成すること"に執着したのかもしれない

 彼女もまた三位一体

 疑似的なモノとはいえ、アレクサンドラを使って必死に目覚めようとしていた

 

 老婆の姿。そして若い姿…ちょっとウィルに迫りすぎじゃないかしら?


 地中に眠る本体が出てくるまではあと少し。まるで大樹が本体みたいな流れになってるけど、それも彼女の遊びね。やられたふりをして楽しんでるんだと思う。そう思ってたらやっぱり。今度はウィリアムに残る私の存在に気づいて遊んでる。


 最後は全部の魂を同時に木人にいれた。ウィリアムは必死に守ろうとするでしょう。もう潮時かしら? 私の頼もしい仲間に手伝ってもらいましょう。彼は私、白の魔女の加護を受けているのだから私の世界で誰よりも速く動くことが出来る。


 プルプラがついにウィリアムの中に入っていった。見てて、イライラする。こんな気持ちは久しぶり…嫉妬しちゃう。けど、我慢。彼女は今、彼の魂の時間を遡っている。きっと驚いてるでしょうね。人生一人分ならあっという間でしょうけど、ウィリアムのは……


 プルプラが出てきた。


 つまり、ウィリアムは今、本当の自分とつながった魂を持った肉体になった。


 ようやく始まる…準備は整ってきた

 

 さぁ、プルプラとお話しなくちゃね。お別れでもある。そのかわり、彼女には新しい体を与えようと思う。それはあの子にとってもいいこと。だと、思う……。とりあえず、腕の中で眠っててね、プルプラ。






■クレア十四歳の誕生日前日(海の羊号にて)


 クレアが光の魔女を助けようとしている。それに明日は十四歳の誕生日。私の心は踊っている。夢の中で彼女と会話はたくさんしている。今日は近くに光の魔女が居る。それにこの船には彼もいる。何か思いがけないことが起こるかもしれない。


 魔女の塊とクレアの戦いをしばらく見ていたけど、彼女なら大丈夫。それにお兄さんとの連携がすごい。私には武器を扱う才能がなかったから羨ましい。やっぱりウィリアムのおかげね。槍も弓も扱いが上手。それにエレノア。彼女もちょっと私に似ている? ウィリアムかしら? きっと生まれた時に私がちょっかい出したせいね。でも、おかげで二人は強い。


 そういえば、彼と一緒にいた"私"もノラとあんな風に一生懸命がんばってたわね。まるでノラを見てるみたい。クレアの夢で混同してないといいけど……。


 あ、クレアがまた無意識に力を使ったわ。森で闇の魔女と戦った時にも使ったのを感じた。今回は目の前で見れた。上出来! まだ無意識だし、クレア自身気づいていないけどいい感じだわ。あはは。自分で投げた槍を通り越したわね。自分で驚いてる。それにエレノア。ちょっと混乱してるわ。お兄さんの目もすごい丸い。あははは。


 まぁ大変。魔女の塊が破裂したわ。こうなるのね……。飛び散った破片がたくさんの人たちにくっついちゃったみたい。それに船が真っ二つ。クレア、どうするのかな? 手を貸した方がいいのかな?


 ううん。クレアならきっとどうにかしてくれるわ。見守りましょう、私!


 すごい。魔女の力をちゃんと使ってる。ちょっと…弱いけど……。あ、お兄さんのおかげで少し強くなった。でも、これじゃ足りないわね。それに魔女の塊が飛び散って影響された人たちがクレアとエレノアに怒りをぶつけてる。可哀そうに……。


 がんばって!


 まぁ、すごい。クレアが周囲から魔女の欠片を一気に集めだした。これであの人達もきっと落ち着くわね。それにしても、ちょっと吸い過ぎじゃない? 集め過ぎじゃないかしら? 大丈夫かな?


 お兄さんが近づいていくわね。よかった。彼女にアドバイスしてくれるのね。彼ならきっと彼女の力に気づいているはずだもの。そうそう、その一言よ。やった、クレアが持ち直したわ。すごい、すごい。がんばれ! がんばれ!!


 黙って見ていた私は思わず叫んでしまった。


「クレア、がんばって!!」


 彼女に声が届いているだろうか? すぐに周りから応援の声が響いた。そして彼女は無事に船の修復に成功した。


 自慢の娘。最愛の娘。クレア! よくがんばったわね。



 次の日、クレアの誕生日。


 私は自分のわがままでここへ来た。おかげで彼女の成し遂げたことをこの目で見ることが出来た。とても幸せな一日。皆に祝福してもらって嬉しそうなクレア。私も娘に言葉をかけたい。抱いてあげたい。彼女の話を聞いてあげたい。でも、それはまだ…


 しばらくするとクレアが大きな木に登り、休んでいた。私は彼女の隣に座り、肩を並べる。誕生日だもの。このぐらいは……。クレアの体が自分に寄りかかっているように感じた。気のせいかもしれない。でも、それでもいい。今は幸せ。


 次に会う時、クレアは自分の事を知ってどう思うだろうか? 色々なことをミシエールの街で学んでくれるだろう。街の魔女ローレンス。孫のアルマもきっとクレアとエレノアの助けになる。それにお兄さん。エルフの郷でクレアと一緒に私の念願の夢をかなえてくれると嬉しい。


 それと愛するウィリアム


 私は彼を殺さねばならない

 そうなるように願っている


 ……


 さぁ、クレア


 私と魔女の元へ


 待っているわ。愛しい娘



 クレアの隣に座っていた白い髪の女性が立ち上がる。途端に世界が動きを止める。

 止まった世界の中で、彼女は娘のクレアを希望と期待、それに嬉しさで満ちた表情で見つめる。鳥も、風も、波も、帆も葉も動かないその世界で、彼女から剥がれた小さな破片が空中へと舞い消える。


 彼女は白の魔女


 白銀の魔女とも、灰銀の魔女とも呼ばれている。


 エルフからも、魔女からも追われる存在


 けれどその居場所は誰も知らない

 

わかりづらいかもなので解説を加えておきます(*'ω'*)

今のところ、プロット通りなので後付けの設定などはないです。長いのよ…判明するまでが。


■クレア8歳の誕生日

・ベッドでクレアが見ていた夢、本人は覚えていませんが母親と会ってます。この時は"彼女"が目覚めた時で、母親と同じ世界にいます。

・父ウィリアムが燃え盛る家から出てきたときに出していた鼻血は加護を使ったせいだったんですね。決して、柱にぶつかったからとかではないです。気づいた人いたらすごいなって思う。1章の鼻血➡あ、これ加護か? 的な(>_<) 

・パパさんが人生でいちばんくらい時ですね。どうしてこうなったかは追い追い


■プルプラの元へ

・移動中に偶然オードンの娘レアを助けるように指示したのは彼女(白の魔女)で、短刀が彼の元に届いたのは偶然➡オードンさんは運がいいマン。そのまま案内役へ

・そろそろ、二人の関係がただの一目ぼれではないと…1章の名前を名乗るシーンでも少しだけだしてますが。花言葉って大事。

・新しい体➡腕? さぁ、どういうことでしょう。プルプラの流れと主人公たちの流れから、予想は出来るけど…(*'ω'*)てへ


■クレア14歳の誕生日(前日)

・森の魔女(3章)でもクレアは能力を無意識に使ってます。突然現れるクレアに闇の魔女は驚いてました。3章はクレアの行動に意味がありました。情緒不安定だな、とか、すぐ泣くな、とか、なんで怒るの?とか思ったのなら正しいです。それは5章でわかることなので。1章のある部分でも表現してますが、そこで悟ったのならマジですごいと思う。さりげなーく、さりげなぁーく。

・白の魔女が言っている「ノラとのことが夢で混同してないか」という懸念はまさにありました。『56 闇の魔女③ お前はダレダ』の冒頭でのシーンがそれです。いやぁ、ここまで長かった。これはウィルとアゼリアがノラやシエナと一緒にいるころの思い出です。

・海の羊号、闇の魔女の塊との戦い。クレアの投げた槍を追い越したのは彼女の能力が発動していたせい。まだ、本人は気づいていない。

・85話の題名「クレア!」は母の一言。最初に聞こえた「クレア、がんばれ」も白の魔女の声援です。本当はその一言だけにしたかったのですが、後付けだと思われたくないのと、気づく人いるかなって思って…(わかるわけにゃいわ!)その後の文を足しました。アニメ化しれくれないかな。めっちゃいい音楽でここのシーン再現したいわ(*'ω'*)

・87 儀式② 温もりでの最後の方に、母の存在に気づくクレアがあります。まぁ、風か何かだと思ってますけど。あぁ、ママそこにおんねんで!って伝えたい。85話とのコンボで気づいた人マジで神様。


と、いうことで随所にちりばめた要素の解説でした。

例えば「遠くで珍しく遠吠えが聞こえた」→「白狼リードレ」だったりと、本当にさりげなく入れてます。あとで「あ、そういうことか」と楽しんでもらえればなと思います。クレアは決して情緒不安定で涙もろい子ではないですよ。体の悲鳴が多いだけです…


これからも、こんなわかりづらい近くて遠い愛と笑いの物語をお楽しみください★

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