恐怖の足音
「ーーおどろいたか?リュア。」
「・・・」
「リュア?」
「えっ?」
声をかけられて正気に戻り、義父を見た。
「大丈夫か?驚きすぎて無反応だったぞ?」
「え・・、そうだった?」
義父に心配されてようやく思考回路が回復して来た。
どうやら自分は一瞬意識でもふっとんでいたようだった。
義父の不安そうな顔に覗き込まれて、やっと首をかしげ反応を返す。
「ああ、動けなかったようだ。
シオン君がそんなに格好良かったか?」
「え」
その言葉に一瞬固まる。
かっこいいよりかは、私には恐かった。
あの人が私を見た瞬間、体を剣で貫かれたような感覚になる。
恐怖に裂かれる居心地だ。
それをどうやって勘違いしたのか
「そうかそうか。端正な顔立ちしているし
御曹司だものなぁー、よかったよかった。
なかよくしてやってくれよ?
援助を申し出てくれたのは彼なのだから」
私が固まったのは、かっこいいからだと思われたらしい。
だが、それよりも衝撃的なのは、
「!!」
援助をすること事態をやるといったのは
彼だということだった。
「あの人がー・・?」
彼 から・・?
私を、脅した・・のに。なんでーー?
「そうだが、なんだ?不思議か?」
「うん・・」
腑に落ちない。
しかし、感じた恐怖はいまだに芯を持ち体にこびりついている。
「そうか・・お前には分からないか。
シオン君は、リュア狙いだと言っていたぞ?」
「え??」
わた、し!?なんでーーーっっ
恐怖が再びせりあがってきた。
思わず、なんで、どうして と問いかけたくなって息が苦しくなる。
「どう、して・・」
「リュアは頼りがいがあるからじゃないか?。
それに有能だと聞いているといったじゃないか」
「え、あ・・それはそうだね・・」
とりあえずそう言葉を返したが、完全に納得したわけじゃなかった。
だって私は有能じゃない。
いつも成功出来るか不安で
でも表には不安なんてだせなくて・・なんとか成功しても安心感しかなくて
達成感なんてものはなかった。
私は有能じゃない。てきぱきできるわけじゃない。
もっとはやくできるひとだっている。
私は、まだまだ。
でも、不思議。
そんな私になにをさせたいんだろう・・彼は。
「ここで立ち止って考えても仕方ないんじゃないか、リュア」
「え、あ、・・うん」
「今日は受験結果みにきたんだ、いくぞ」
「う、うん」
うなずいて、義父と共に受験結果を見に行った。
受験番号は、13。
果たしてあるだろうか。
ないといい。
さっきまでは思えないことだった。
けれどそれ以上に、
彼に対しての不安が心にうずまいている。
受験への緊張感はこのときどこかへいってしまっていた。
むしろ、--ーーー
合格者一覧
1 2 3 4 5・・10 11 13 14 15・・
「あ」
「あったじゃないか。
リュアなら合格できると思っていたんだ!よかったなリュア」
「---」
本当に良かったのだろうか。
むしろ嫌な予感は大きく心に重くのしかかる。
不合格 のほうがよかったかも、もしかしたら・・そんな気さえした。
合格にちっとも喜べない。
「ほら、あそこにクラス組み分けあるぞ。
どうやら席順のようだな」
「・・私のクラスはーー」
そうして視線を惑わせた。
組と名前の一覧に目を通していく。
「おや、4組みたいだな」
「じゃあ・・席はーーー」
受験番号でそれはしるされていた。
教卓
18 20 38 50 21 74
・ ・
・ ・
・ ・
13 1
「私の隣は一番の人?」
表を見て首をかしげた。
クラスの席の一番後ろの真ん中の列だった。
「一番?だったらーーーあ、偶然かな?
聞いて驚け、リュア。
なんと、シオン君だぞ」
「え!?」
私はその言葉に驚いた。
恐怖の嫌な予感はこれだったのかもしれない。
思わずクラスの名前の一覧を確認する。
すると、やはりあった。
“受験番号1番 シオン レネード ”
と。
ーーーー恐怖の足音が聞こえた。