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38・王様と私(達)

長くなってすいません


姉 弟 ボッシュです


今日は王様に会いに行く。午後のお茶の時間に和やかに会談、という予定なのに朝から着せ替え人形。


そう、異世界でお着替え第二段弟も一緒!



「あ〜やっぱりこっちの方がいいかしら〜」


「青色だと寒々しいねぇ」


すいませんね、胸がない上に顔色も悪いもんで。

ルシンダさんとアガサさんと侍女さんがあれこれ持って来ては私にあてて悩んでいる。

結局、真っ白な薄いドレスの上にワインレッドのドレスを重ねたのに決まった。下のはハイネックで首元はレースがついて、胸元にプリーツをたくさん寄せて、ふわっと膨らませている。上のドレスはそのプリーツを生かすような大胆なカッティングで、さらに胸下の切り替えで強調。所々に真珠みたいな石が縫い付けられていて、控えめに光を反射していた。

やっぱり袖は長めでひらひらしていた。腕を真上に上げたら肘までへにゃっと垂れてくる。


一応70のBなんですけど?お着替え中すごく可哀相なものを見る目をされた。


着替えが終わったら今度は髪の毛とメイク。侍女さんに鼻息荒く鏡の前に座らされて待ってると、弟が引きずり込まれて来た。



「僕は、普通でいいです」



散乱する衣服を見て、恐れ慄くように弟は言う。

でもお姉様方は聞いちゃいなかった。



「色を揃えると可愛いんじゃないかい?」


「逆に黒なんかよろしいと思いますの。何とも言えない少年の初々しい色気がでますでしょう?」


「アンタ…やるわね」


顔色の悪くなっていく弟そっちのけで、ルシンダさん達は熱くなっていく。なんか、怖い。王様相手に色気出してどうするんだ?

結局少年の色気になった。見てて思ったんだけど、ルシンダさんは日本に行ったら腐女子になるだろう。逞しい旦那様と可愛い少年について語っていて、鏡越しに見た弟は半泣きだった。



「トモ!どうかしら?」



ルシンダさんの声に振り向くと、疲れ果てた弟と目が合った。恨めしそう。


白い和服というか、甚兵衛みたいなのを襟元ぴしりと着て、上に暖かそうな黒のチュニック。腰にバックル無しのベルトを巻いて、緩く結んで垂らしている。丸い襟首と袖口にはなんかの毛皮がついていた。強いて言えば、ホワイトタイガーかな。白地に灰色の微妙な模様。あ、裾に真珠的なものが付いてる。これをお揃いにしたのかな。

パンツは細身の黒で、膝上のブーツも黒。南瓜パンツと白タイツじゃなくて良かったね。

私もこんな服のほうが良かったな。ロングスカートは慣れないし、寒い。

それに細いミュールみたいな靴を履かされた。


髪は編んでレイア姫みたいなお団子になっていた。団子にはひらひらの白いリボン。化粧は薄いけど、唇はピンク。


髪を上げるのは好きじゃないんだけどな。寒いし、首が無防備になっちゃう。

弱点を知ってる弟とボッシュさんに狙われないように気を付けよ・・・。

お昼は軽く、パンと野菜のポタージュ。

王様のお茶会はお菓子がたくさん用意されるらしい。楽しみ〜。砦ではほとんど甘味がなかったからなぁ!


それにしても。



「うわぁ〜!トモ、とっても綺麗ですっ」



マーシャル君はお目々をアメシストみたいにキラッキラさせて誉め讃えてくれたのに、肝心の人は何も言ってくれなかった。



「あぁ、着替えたのか」



って、それだけか?!

見たまんまじゃん。


場を盛り上げてくれそうなマイヤーさんはまだ帰ってきてなかった。仕事が片付くまで合流しないらしい。

あ〜あ。






○ ○ ○ ○





僕はもう朝から疲れてしまいました。

国王に謁見するから普段着じゃいけないのは解りますけど!女性2人にアレ着てコレ着てとおもちゃのように翻弄されました。

女子は着せ替え人形で遊んでいたけど、こっちの世界の女性もそういうのが好きなんですかね。



「あ〜もう可愛いわ。リョータ、旦那様の従者にならないかしら?並ぶときっとお似合いよ〜」


「うーん、ロデリック様だと親子みたいにならない」


「よろしいのよ、逞しい騎士と、か弱き少年…なにやら…あぁ」



アガサさんとルシンダさんは僕そっちのけで話していて、何かよく解らないけど寒気がしました!



結局、決まった服はフリフリもレースもなくて、姉とお揃いの色でもなくてホッとしました。あんな濃い赤は着たことないですし。


服の飾りについていた毛皮が気になります。柔らかでふかふかで・・・ホワイトタイガーみたいな。



「これはね、昔に旦那様が仕留めたのですよ。雪山で演習中に出会ったなんとかという野獣で、狩人や騎士が何人も犠牲になって。退治したご褒美に陛下から賜ったのですって。強い獣だったから、丈夫で長持ちするのよ」



そう言って、大きさはこれくらい、と示されたサイズはやっぱり虎かヒグマか、というサイズでした。

そうですか。

仕留めたんですか。

見たまんま、すごく強い人なんですね。

ま、まぁ、それは置いといて。


昼食の時に皆にお披露目になったのですが。

ボッシュさんは明らかに姉に見惚れてたんですが、反応が薄いので姉には伝わらなかったようです。明らかに不機嫌になりました。

なんだかすごく大人の女の人みたいに、大変身してたんですよね〜。

言葉を失うのは解りますけど、お姫様のご機嫌を損なうのは止めてほしいです。とばっちりは僕に来るのですから!

マルキンさんとマーシャル君は物凄く解りやすくデレてたのに。

マイヤーさんとロデリックさんは仕事でした。反応見たかったな。







お城までは馬車で行くようで、新しい深緑色のコートを着せてもらって、乗り込みます。

歩きにくそうな姉の様子を見て、アガサさんに突かれたボッシュさんがようやく我に返り、手を取って馬車に導きました。

見送りに出てきたマルキンさん達3人に手を振り、遂に出発です。

城に近付くにつれて、その迫力に圧倒されます。

見る角度が変わるとまるで違う雰囲気で、クレムリンの玉ねぎっぽい塔?のような部分が見えます。

都の端には大きな川が通って堀の役割をしていて、ほぼお城を中心にして楕円系に街が広がり、その外側に城壁が広がっています。

そして川とハの字になるような位置には崖があり、延長線上は滝になっているということでした。

この街はとんでもないところにあるのですね。

丸い内陸の都市なんて攻められたら守りが大変と思ったけど、実際はハの下側に注意してればよく、そもそも攻めたことはあっても攻められたことはないとか。

飛行機無くって良かったですね。



馬車が止まり、いよいよお城へ!

非公式ということで、よく解らないけど端っこにある小さな出入り口に停まったようでした。そして長くて真っ白い石で出来たアーチの綺麗な回廊を進んで行くと、灰色の制服――中年の文官が待っていました。

特に何も言わずに、その人は先導していき、ずんずん奥へと進みます。響くのは皆の靴の音だけ。進むにつれて、所々に騎士の姿が見られ、高そうな服を着た人が歩いてたりします。

うーん。場違い。

思わず緊張して何度も唾を飲み込みました。

隣の姉も、いつもより無表情なのでお人形のように見えます。


何度か廊下を曲がったり階段を上ったのに、ある扉を開けた先は中庭でした。

それもかなり広いです。

ド派手な近衛騎士達が、直立不動で中庭の周りに立っています、ある人は槍を持って、ある人は体の前に立てた長剣に両手を重ねて。少しでも変なことをしたら斬られそうです。しませんけどね!


冬なのに外で会うのかと思ったら、木々で隠れた場所にガラス張りのサンルームのような小屋が建っていました。中には可愛い机や椅子が幾つか並んでいて、もう既に誰かが座っていました。

その人の後ろには3人の近衛騎士がいて、近付くとロデリックさんがいることが解りました。

あとはもうちょっと若い人ともっと若い人。



入り口前で案内の人が立ち止まって、ボッシュさんに言いました。



「陛下におかれましては、本日のご休憩に、そちらのお子様方をお招きになるということです。偶々、お声が掛かったわけですので心してお相手をなさいますように」



あくまで、『たまたま』僕達を招いたという設定なんですね。

ボッシュさん達はお互い挨拶をして、更に進みます。中から1番若い近衛騎士が扉を開いてくれました。



「そんなに緊張するな。優しい方だ」



入る直前に、ボッシュさんが小さな声で言いました。もっと早く言ってくれませんかね。

騎士同士の挨拶をかわし、奥へと入ります。僕と姉は立ち止まって日本式の軽いお辞儀をしました。

騎士に握手は有り得ないし最敬礼は砦でドン引きされましたからね・・・。

近くで見ると20歳前後じゃない?というくらい若い人で、きっとすごい強いんだろうな、という隙の無さ。僕達を見て、安心させるように笑ってくれので、きっと性格もいいんでしょう。きっとモテモテ。




「よく、来たね。お座りなさい」



落ち着いた優しい声で、王様は言いました。

イメージ全然違う!

若いし!40そこそこの、痩せててちょっと顔色の悪い――どこかの研究員とか教師とか、そんな感じで。


唐代の皇帝のようなゆったりした深紅の服に、宝石のついたベルトをしめて、裾の長い陣羽織みたいな毛皮を羽織っています。例の野獣の。もっと灰色が濃くて鮮やかでとても綺麗です。

王様は薄い幅広の金の輪っかを頭にはめていて、真ん中にでっかい赤い宝石、両隣に緑と青の宝石が輝いていました。黒い髪を後ろに撫で付けていて、配色的によくお似合いです。

優しい顔の優しい眼差しはモスグリーン。


僕らの世界なら、素敵な王様として人気がでそうですけど、マッチョがもてるこの国では物足りないんでしょうかね。


ボッシュさんが懐から手紙を出して王様近くの机に置いて少し会話して、僕達の後ろに立ちました。アガサさんは初めから後ろ。


あれ?


ダイレクトにお相手?



「ラーソンの籍に入ったのだったな。彼の様子はどうかね」


「…元気で毎日一生懸命働いてらっしゃいます。たまに若い騎士と訓練したり」


姉が恐る恐る返事をしました。王様はにっこりして頷いて、それからちょっと右手を挙げました。


どこから出てきたのか、お菓子やティーセットを載せたトレーを持った人達が湧いて来て、ほとんど音を立てずに机の上にセッティングしてすぐに消えました。

すご。プロの仕事ですね。



○ ○ ○ ○




久しぶりに会った国王陛下は、相変わらず気弱そうでどこか遠慮がちに座っていた。

ラーソン隊長とその他諸々の報告書を提出して下がると、興味深そうに子供達を観察しているのがわかる。

居心地が悪そうに、姉弟は肩に力が入っていた。

後ろからはトモの細い首と項がよく見える。すぐに髪を解いて隠してやりたい。他の男の目に触れているかと思うと心配でたまらなくなる。

只でさえ可愛らしいと評判なのに、化粧をして美しく着飾った姿は存在を主張し過ぎだ。

物事に同じない訓練を受けている近衛騎士の若造の目は釘づけだったし、兄でさえ一瞬目を見張った。

くそ。



「ああほら、これもお食べなさい。中に煮詰めた果汁を塗ってあるのだよ」



陛下と姉弟のお茶会は至って平和に進み、緊張が解れてきた2人は勧められるままに小さな菓子を口に運んでいた。

物を食べさせたくなる気持ちはよく解る。2人はこの国の人間に比べてあまりに儚い様子をしている。

来た時に比べるとリョータはやや成長したが、それでも知らない者は女に間違うことがある。本人には知られていないが、ルシンダもそうだった。



しばらくぽつぽつと会話をしつつ食べたり飲んだりしていたが、陛下の執務時間になり、文官が現われた。



「さて。私は仕事に戻らねば。君達はゆっくりして行くといい。全部食べても構わないよ」



立ち上がって見送る俺達にそう言って、もう一方の扉から出て行った。威厳もなにもないが、子供達は気に入ったようだった。

こちらを見た兄達近衛騎士に手を振って、何かを囁きあって小さく笑っていた。



「2人とも、楽にして、お言葉に甘えて休んでいこうね」



2人と同じくほぼ初対面のアガサが大きく息を吐いて伸びをした。こんな所でのんびりする機会はもう来ないだろうからな。

息抜きするのもいいか?




まだ 次もお城の中です



この国の国旗は縦縞で、左から緑赤青。その上に×に重ねた剣と杖


緑は森 赤は王家 青は川を表しています。

剣は武力 杖は知恵の象徴


こんなどうでもいい設定はあるのに国名はつけてないんですけどね!

あと王様も王様のままですヨー 彼個人に用はないのでね。


長いうえにこんな所まで読んで下さってありがとうございました!

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