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俺が笑うと草生える!  作者: おもちのかたまり
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神様は川上からどんぶらこって流れてこない!

むかしむかし、世界に神が居なかったころのお話です。大地は渇き割れ、海は全てを飲み込むほどに荒れていました。そんな世界を最高神様に治めるようにと言われたユフルト様は、誠心誠意世界と向き合いました。でも海を抑えると大地が割れ、大地を抑えると海が荒れてしまいます。


未熟な自分一人ではどうすることも出来ないのだと悩んだユフルト様は、世界の均衡を保つ柱を作ることにしました。まずは荒れた海を抑える一柱。そして大地を抑える一柱を作ります。そうしてユフルト様が大気を安定させると、次第に生き物が生まれました。


暫くすると、大地の一柱は海の一柱を大好きになってしまいました。大地の一柱が海の一柱を探し回るたび、地面がぶつかり合っては五つの山ができ、大地が裂けては海が七つに割れてしまいました。自分の身体ばかりか海の形まで変えてしまった大地の一柱に怒ったユフルト様は、大地の一柱を六つに分けて地底に埋めてしまいました。


そこで怒ったのは海の一柱です。持てるすべての力でもって、海の一柱は大地も地底もすべて飲み込んで消滅してしまいました。残ったのは柱の無くなった七つの海と、五つの山、空っぽの地底が六つです。


ユフルト様は、寂しくなって泣きました。たくさん泣いているうちに、せっかく生まれた命たちもみんな消えてなくなってしまって、ユフルト様は最高神様にお顔向け出来ない。と、もっと泣きました。それを見ていた最高神様は、哀れに思って神様を増やしてあげることにしました。しかしひとつの世界に神様は一人と決まっています。ですから、出来上がった山と海、そして地底に神様足りえる魂を呼んで、その魂たちを土地神として崇め治めてもらうことにしたのです。土地神様達が祈ると次第に花が咲き誇り、生き物が増えると生き物の信仰心は強い力になって土地神へ巡り、枯れ果てた地をあっという間に豊かな土地へ変えてゆきます。


次第にユフルト様も泣き止んで、新しい土地神様達と仲良くこの世界を治めましたとさ。


「と、いうのがこの世界で読まれている創成神話です。」


「へぇえ…ユフルトって、神の地の名前っていってたよね?」


ナラが魔法を用いて上空へ出した子供向けの神話を、アスカがユウキへ読み聞かせている。ヤヨイが小さい頃にせがまれて何度も読み聞かせをしていた成果だと笑って。


ユウキが了承したことにより俺達と神の地ユフルトを目指すことが決まったが、もちろん一朝一夕で辿り着く場所ではなく、まずはギアの地を横断し次の街へ向かわねばならない。それまでの道すがらユウキの疑問に答えるべく皆でできる限りわかり易い様に説明することになった。ユウキが正しく土地神であるならば、それは過去の土地神と交流の合った者達が残した伝説に記されている通り、常識すらも違うはずなのだ。


「そう、一番最初にユフルト様が降り立った場所。そこが『神の地』と呼ばれているの。」


「神の地でユフルト様はこの世界の均衡を保っている。土地神様方は、そこに生きる者の繁栄や土地の浄化をしてらっしゃるんだよ。」


「ハイせんせー!それでなんで俺が土地神様なんですか!」


「ふふ、それはだねぇ…、」


孤児院で子供へ教鞭をとっていたことがあるナラとアスカへ説明を任せ周囲の警戒を怠らずに進む。ユウキも意欲的に学んでくれていることで皆楽し気だ。ナラの魔法で形作られる人形などに、時折プロジェクションマッピングやらホログラムだと目を輝かせているユウキの言葉は聞きなれずわからないが…。


「土地神様はユフルト様と違って『魂』を元に作られているんだ。」


「魂は最高神様が異界からお喚びになって、各地で馴染むことが出来るようにユフルト様を支える力を授けられるそうよ。」


「あれ、じゃあなんでギアには神様が居ないって言ってたの?」


ユウキが首を傾げながら、いぎあり!と人差し指を勢いよく突き出しているが、なにかの真似なのだろうか。胸を張って満足そうにすると、すぐに手を降ろして若干誇らしげですらある。


「ふふ…土地神様方は、土地神になられる際に最高神様に一つ、願い事をするそうよ。」


「おねがい…、」


「願いを叶えてもらう為に、魂は土地神様になる契約をするんだそうだ。契約が終われば、魂はこの世界から解き放たれる。土地神様がいなくなった地は信仰心を加護に変えられなくなるから、加護がなくなると~?」


「んと、神話みたいに土地が荒れちゃう?」


「大正解~!」


ナラとアスカが互いに補いつつ話し、タイカが大げさに拍手をすると嬉しそうに笑うユウキ。…歴代土地神の中には人と接することを好み、その際側仕えの者と交わした会話の記録が残されている。多くは神殿に祀られているそれらの中には、一般にも眉唾なモノから真実みを帯び信じられているものまでさまざまだ。神話からくみ取る解釈はそれこそ研究者により真逆なこともざらで、神聖学者達が研究を重ねているという。


「ギアの土地神様が大昔に役目を終えられてから、新たな土地神様が現れることはなかったんだ。」


「それがなぜかは私達にはわからないわ。けれど、土地神様の選定は最高神様がお決めになられることだから…。」


「人間からすれば長い間土地神様の居ない地だから、きっと最高神様に見放されてしまったんだと考えた。それで、ギアは枯れ果てた地。神に見放された地って呼ばれるようになったんだよ。」


ギアについては例に漏れず、人間が最高神様から怒りを買ったのだ。という者もいれば、ユフルト様からの試練と考えている者もいる。異教徒の中には、世界の破滅が始まるのだと喚く者もいたな…。


「でも、そこにユウキが現れた。」


「あっ」


「枯れ果てた地に緑が芽吹き、獣達を呼ぶ。ジンが神鹿に成ったのは、ユウキが名付けをしたからだな。」


はじめは神鹿が子供を保護しているのかと思ったが、ユウキの言う通りならばこの地に緑をもたらすことが出来るのはただ一人だ。


「いまこうしてる間も、ギアの森は広がってる。」


「…でも俺、最高神様のこと、覚えてないよ?」


瞳を揺らすユウキと目が合う。艶のある黒檀のような瞳は不安に揺れていて、迷子の子供のそれと同じだった。不安だろう、当たり前だ。もし神話や伝説の通りであるならば、ユウキは元の世界ではもう…


「ああ、だからこそユフルトへ向かうんだ。」


「そうよ。過去にもね、なにも覚えていない土地神様がいらっしゃったの。その方も、自分は神じゃないってずっと言っていたそうよ。」


「それでユフルト様へ確認しに行くことにしたんだ。自分が何者なのか。それが冒険者の始まりだって言われてる。」


「えっ、最初の冒険者って土地神様なの?!」


「正確には、『最初に全ての土地神様に会いに行った』だね。」


神の地ユフルトへ行くためには、七つの海を越え、五つの山を登り、六つの地底へ潜らなくてはならない。そもそもなぜ、神の地へ向かうのか。


「ユフルト様に会いたいから?」


「あって何をするの?」


「ん~…、俺はお正月とかに神社でお願い事する時に会いに行くかも。だから、お願い事しにいくのかなぁ?」


「ふふ、そうね。土地神様と一緒に神の地へたどり着いた者達は、土地神様を導いたお礼にユフルト様から褒美を賜ったそうよ。」


「ごほうび!」


「永遠の命とか莫大な富とか、色んな事が書かれているけれどそれが何なのかは昔過ぎて定かじゃない。でも、夢があるしご褒美の正体…気になるだろ?」


「うん!」


先ほどまでの陰りはなりを潜め、キラキラと輝く笑顔のユウキに息をつく。…ユウキがこの世界で生きるのならば、楽しく幸せであって欲しい。たとえ神であっても、今ここで感じ取れるユウキは小さな10歳の子供なのだから。ありったけの夢をかき集めてワンピースを探す!と突然謎の宣言をしているユウキに笑えば、先行し索敵を行っていたヤヨイが戻って来た。どうやら森の端に到着したらしい。


「ユウキ、細かい所は少しずつ覚えて行けばいい。まずは俺達について知ってもらいたい。それから、話せるならばユウキについて教えてくれると嬉しい。」


薄暗くも緑あふれた視界が一気に開ければ、目の前に草原が広がり知らず詰めていた息も深く吐き出される。全滅を予感したギアの地を、子供特有の高い感嘆の声に包まれながら後にする。振り返れば皆、笑っていた。

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