表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
80/163

離せない袖

80


僕は、相田さんを元気づけようと必死だった。

「慎ちゃん背高いからうまく隠れそう。助かる~じゃ、出発進行~!!」


相田さんを後ろに隠して進むと、すぐに立ち止まる事になった。急に止まったせいで相田さんは、僕の背中にぶつかる。

「痛っ!慎ちゃん発進だよ!発進~!」

「待ってよ。掃除用具入れ避ける。」

目の前の掃除用具入れから、数歩右にずれて、また進み始める。


「じゃ、改めて、出発進行!」

僕はまた急に止まった。

「ぶっ!また何かあったの?」

相田さんはまた背中にぶつかった。

「ごめん。今のはわざと。」

「おい!」

少しの無理して冗談をやってみる。

「あははははは!」

「あはははは!ちょっと~!慎ちゃん頼むよ~!」

僕は笑った。相田さんに笑っていて欲しくて。


相田さんとギャーギャー言いながら部室へ向かう。途中、何人かの剣道部とすれ違う。

「あ、片岡だ。楽しそうだな~。」

「あんな顔して笑うんだな。笑ってる所初めて見た。」

そう言われているのが聞こえた。

「あ、ひらりちゃん?」

「…………。」


その声に、思わず僕と相田さんは立ち止まった。白石だ……。それは、相田さんもわかったはずだ。でも、相田さんは返事をしない。あんなに笑っていたのに、急に黙った。

「…………。」

僕の後ろで、相田さんは僕の浴衣の袖をぎゅっと掴んでいた。

「相田さん?」

「ひらりちゃん、後ろにいるよね?」

もう一度、白石が言った。相田さんはやっと返事をした。

「うん……。晴君?なの?今、お化粧落ちちゃって、とんでもないことになってるから、顔見せられなくて……」

「どうして?気にしないよ?」

「晴君は気にしなくても、私は気にするの。」


この状況に、どうしていいかわからなかった。でも、とにかく、ここから去った方がいい事だけは何故かわかった。

「あの……相田さんがいないと打ち上げ始まらないから、支度しに部室に早く行かないと……。」

そう言って行こうとすると、白石は止めた。

「待ってよ。片岡、少しひらりちゃん借りてもいいかな?」

「え…………?」

「あの、晴君、部室にメイク道具とか、着替えとかあるし……だから……行かないと……」

相田さんは何とか言い訳をして部室へ行こうとするが、白石は聞くつもりはないようだった。


「僕達付き合ってるんだから、そんな事気にしなくてもいいよね?」

「え…………。」

相田さんと白石が?その瞬間、須藤の妹を思い出した。


『お互いの気持ちに気づく前に、他の誰かにとられたら?』


「ひらりちゃん、ちょっと話があるんだ。行こう。」

白石は僕の後ろに隠れていた相田さんの腕を掴んで、連れて行こうとする。相田さんは僕の浴衣を離そうとしない。

「相田さん、……先に美術室行ってる。みんな、相田さんを待ってるから、早めに……。」

僕には、そう、言う事しかできなかった。相田さんに言った言葉に、白石が答えた。

「うん、わかった。少し借りたらひらりちゃん美術室に返すから。じゃ。」

相田さんは、無言で僕の袖を離した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ