嵐の中の鳥の群れ
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七夕からの2週間はあっという間だった。
「今日から期末テスト期間で部活時間短縮だから、みんな帰ってちゃんと勉強するように!特にひらり!!追試あって部活出られないなんて事になったら、どうなるかわかってるでしょうね?」
「ひぃ~部長鞭が……鞭が怖い!!」
確か去年は、赤点あった人は校庭50周のペナルティがあったって先輩達が言ってた……。
「春壱君、責任持ってひらりに勉強させて。」
「大丈夫ですよ部長!テスト前くらい春壱に監視されなくてもちゃんと勉強しますよ!」
「そうしてくれ。勉強の面倒まで見られるかっつーの。」
春壱の態度にちょっとムカついた。
「何それ!他に迷惑かかってるみたいな言い方じゃな~い?」
「かかってないのか?え?」
真顔で冷静に言われると、言い返せない。ちくしょー。
「か……かかってます……すみません。」
「じゃ、解散!」
部長の解散を聞くと、その場で急いで着替える。
「だからここで着替えるなって!」
春壱のお小言も聞いてる暇はない!
「ちょっと急いでるから!」
「どこ行くつもりだよ?」
「今日は春壱先に帰ってて!じゃ、お疲れ様でした~!」
急いで荷物とスケッチブックを持って剣道場へ向かう。私は道場のドアの小窓からこっそり覗くと、剣道部の部長に見つかる。
「演劇部が覗きか?何だ?井上の差し金か?」
「違いますよ!今回は井上部長は関係ないです。個人的にちょっと……見学させてもらえませんか?」
「見学?なんで?」
やっぱり急に行ったらダメかな……?
「さすが斎藤部長警戒心高いっすね。」
「はぁ?」
斎藤部長は更に不審がる。
「あの、私美術部の幽霊部員になったんですよ。」
私は、持っていたスケッチブックの絵を見せた。その絵を見ると、斎藤部長は納得してくれた。
「ああ、そうゆう事か。なら、端の方でなら中で見てもいいぞ。」
「本当ですか?ありがとうございます!」
私は深く頭を下げる。
「あの、晴君は調子どうですか?」
「白石?ブランクはあっても経験者だから上達が早いよ。」
「良かった~!あ、じゃあ邪魔にならないように…失礼しま~す。」
斎藤部長に続いて、一礼をして中に入り、スケッチブックを出す。すると、晴君が気がついてこっちに来た。
「本当に来てくれたんだ。でも、もう終わりだよ?」
「あ、そっか剣道部も時間短縮か!間に合わなかったか~」
「じゃ、ちょっと待ってて。先輩、最後に一本手合わせお願いします!」
晴君は私のために、まだ防具をつけている先輩に試合を申し込んでくれた。
「いいよ。やろう。」
先輩は快く承諾してくれた。
「すみません部長、軽く審判お願いします。」
部長も快諾してくれた。先輩と晴君は、コートの端と端に向かい合って立つ。そして、近づいて一度しゃがむと、竹刀を出す。この前春壱に聞いたけど、しゃがむのは、ソンキョって言うらしい。そして、同時に立つと、
「初め!」
という部長の声で、二人の気合いの叫び声が、聞こえた。初めて、春壱の剣道の練習を見た時の事を思い出した。まるで、嵐の中を飛ぶ、鳥の群れみたいだった。袴が擦れる音は羽の音。竹刀が当たる音は雷。気合いの声は、鳥達の鳴き声。すごい……速い……。晴君はまるで羽が生えているかのように速く、強く打つ。私は描くことを忘れ、見入ってしまった。
「お互いに礼!」
「ありがとうございました!」
晴君は面を取って、息を切らして私の所に来た。
「はぁ……はぁ……ひらりちゃん、どうだった?」
「なんか……なんか……晴君、凄いよ!!羽が生えてるみたいだった!」
「はぁ……あははは……それ、猛禽類?」
「あははは!そう。猛禽類みたい。凄く……カッコ良かった!!」
「はははは!!ありがとう。」
「猛禽類?」
「あ、斎藤部長はね、ドムですね。」
「ドム?」
私は携帯で画像検索して見せる。
「ぶーっ!確かにフォルムが似てる!!」
晴君は爆笑した。部長は晴君の頭を軽く叩いて、
「そんな事より、片付けしろ!ほらほら、演劇部のチビも早く帰れ。」
「はーい。今日はありがとうございました!晴君、お疲れ様。また明日ね。」
私は手を振った後、一礼して剣道場を出る。
「うん、ひらりちゃん、また明日。」
スケッチブックを抱えて、その後私は美術室に向かった。描きたい!あんなに凄い所、描きたい!




