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相談事はお姉ちゃんに?

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剣道場前の廊下で、春壱の練習終わりを待つ間、ドアの小窓から練習風景を覗いてみた。初めてちゃんと練習を見た。それはまるで、雨雲の中を飛ぶ鳥達に見えた。袴の擦れる音は羽の羽ばたきみたい。竹刀が当たる音は雷のよう。鳴き声はけたたましくて、鳥達の振り絞る力がこっちまで伝わって来る。そのうち、全員並んで礼をする。あ、そろそろ練習終わりだ。


「は~る~い~ち~!」

「だから、俺はド◯えもんじゃない!」

片付けの間、掃除を手伝うと言って道場の中に入れてもらった。私はモップを持ちながら、春壱の片付けを待つ。


「剣道の練習、初めて見た。あんなに強く打たれて痛くないの?怖くないの?」

「痛いけど?怖いけど?」

「え……やってる人達みんな、マゾなの?」

「マゾじゃない。全世界の剣道選手に謝れ。」

そう言うと、春壱は更衣室へ入って行った。


春壱が着替えている間、私は道場の掃除を手伝う。更衣室から出てきた春壱は、道場の片隅で座り込んで道着を畳んでいた。私はモップを持って春壱の所へ急いだ。


「で、さっきのが目的じゃないだろ?」

「そうなの!春壱、どうしよう!日曜日!!」

「ああ、デート?いいんじゃね?勝手に行けば?」

「違うよ!劇部の先輩達に相談したら………」


春壱は手が止まってこっちを見て、呆れて言った。

「何?怒られた?そりゃそうだろ。デートなんてしてる場合じゃないだろ。」

「日曜日まで稽古しないって!」

「は?」

思わず、春壱の手が止まった。


「日曜の私のデートに向けて私改造計画に尽力するんだって………」

「あーそーなのー。」

全然興味のない返事で、また道着を畳むのに戻る。

「先輩達多分私で遊びたいんだと思う。」

「確かに。お前完全にカモだな。」

春壱はそう言うと鞄に胴着をしまう。


「まぁ、今回が初めてじゃないんだけどね。イベントがあるとよく脱線するの。去年のハロウィンもクリスマスも稽古しないで準備してたし。何でもイベント化するの好きみたい。」

「それなら日曜まで何しても無駄だろ。好きにやらせとけば?」

私はモップの柄を揺らしながら、悩む。

「そうだけど、私が変わればいいんだよね?変わったら先輩達は稽古に戻るんだよね……。どうしたらいいかな?」


「そうゆうのはさ、クラスの女子とか、母親とかに相談すればいいんじゃない?」

母親…………?ってお母さんって事だよね

「お母さんは……ちょっと無理かな?お姉ちゃんなら……」

「じゃ、姉貴に相談してみればいいじゃん。」

お姉ちゃんにも相談しずらいかな……。

「それは……ちょっと無理かな……。」

「何?仲良くないの?」

「お姉ちゃんにはもう家庭があるし……迷惑かけちゃいけないのかな?って思って……」


そう、お姉ちゃんは家を出て、誰にも言わず結婚した。

「ふーん。結婚したんだ。」

「うん……え?」

何だか今の、お姉ちゃんの事知ってる様な感じ。

「別にいいんじゃね?三日間ぐらい練習しなくても……」

「役者はアスリートと同じなんだよ?1日体動かさなきゃ取り戻すのに3日かかるんだよ?」

3日も私のせいで…………


「何かしら運動はやるんだろ?そこまで気にする事ないだろ。部長が決めた事だし。部員がやりたくてやってるならかまわないだろ。」

「そうなんだけど……」

春壱はため息をつくと私の前に手を出す。

「携帯。携帯出せ。」

「携帯?」

春壱は私の携帯で勝手にアドレスから番号を探し始めた。

「相田、相田きらり。相田きらり。」

「何でお姉ちゃんの名前知ってるの?」

やっぱり…………春壱はお姉ちゃんの事知ってるんだ。


「お前の姉ちゃんうちの中学に教育実習に来てた。」

「そうなんだ………卒業した中学は廃校になったから、そっちら辺の中学にしたって言ってたかも。そうなんだ………春壱達の中学だったんだ……。」

持っていた携帯を、春壱は私に返してきた。

「あ~!本当にかけた!もうつながってる!!」


「もしもし?ひらり?」

久しぶりの……お姉ちゃんの声だ…………!

「…………お姉ちゃん?久しぶり……。」

「キャー!ひらり~!元気!?学校はどう?楽しい?今日遊びに来る?来るよね?」

相変わらず、強引だなぁ…………


「お、お姉ちゃん落ち着いて」

「今から学校に迎えに行くから!支度しといて!じゃ!」

そう言うと、電話が切れる。

「え!ちょっ!お姉ちゃん?もう切れてる……ちょっと!春壱!」


気がついた時には、春壱は先に帰っていた。また……逃げられた!


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