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秘密の恋人ごっこ

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次の日の朝、下駄箱のどこからか女子二人の話し声が聞こえた。

「ねぇ聞いた?晴の新しい彼女できたって」

「それ本当?やだな……晴が誰かのものになるなんて……そんなの信じられない。晴はみんなの晴なのに。」

ま、マジですか……?昨日の今日でもう噂になってるの?怖~これは晴君に口止めが必要かな?


昼休みになると、私はチャイムが鳴るとすぐに一人で非常階段前に向かった。良かった……。誰にもバレてない。私は窓を開けて外の非常階段まで出た。梅雨の晴れ間が気持ちいい。

「ひらりちゃん、またこんな所にいた。」

!!一番バレたくない人にバレてた!!お昼ご飯くらいゆっくり食べたいのになぁ……。明日からまた教室で食べようかな。


「この前一緒に食べようって言ったのに、いつもこっそり教室出て行っちゃうなんて酷いな~」

「あの、晴君、今回のこの恋愛ごっこの事は、みんなには秘密にして欲しいんだけど……」

先にちゃんと言っておかないと。

「どうして?」

「晴君の事、本当に好きな人にとっては、迷惑だと思うから。」


そう、私は晴君の事好きな訳じゃない。だから、他の誰かに晴君の事諦めさせる事はしたくない。

「わかった。この事は二人の秘密だね。」

「あの、ありがとう。恋人役なんて、そんな無茶なお願い聞いてくれて。」


すると、突然、晴君は抱きついてきた。

「晴君!?」

「恋する気持ちを知りたいんだよね?じゃあ、こんなのとかは?」


晴君はもっと強く抱き締める。

「ちょ……ちょっと……」

少し体を離して、晴君はこう聞いた。

「ドキドキした?」

「う、うん……。」


今度は、その手を私の頬にそっと置いた。

「ドキドキして、胸がキュンってした?」

私はそっと一歩後ろに下がって、その手から離れる。


「ドキドキはしたけどキュン?はわかんない。」

「…………まぁいいや。あ、そうだ。ひらりちゃん眼鏡取ってよ。」

そう、言うと晴君は私の眼鏡を取って行く。

「とったらよく見えないよ~!」

「大丈夫だよ。僕が目になるから……ってその目つき怖いよやめて~!」

そりゃ、見えなきゃこんな目つきにもなるでしょ?メンチも切るでしょ?


「ご、ごめん。つい見えないクセが。うわぁっ段差見えない。」

とりあえず、非常階段から中へ入ろうとすると、段差につまづく。ちょうどその時、晴君は私の前に腕を差し出して、転びそうになった私を受け止めてくれた。

「ありがとう……。」

そして、そっと晴君の顔が近づくと…………


「おい、ここは学校だぞ?」

春壱の声が聞こえた。

「その声は春壱!」

私は声のする方へ顔を向けた。

「イチャつくなら他でやれ。」

「イチャついてないよ!うわっ!」

なんとか非常階段から抜け出そうと、晴君の腕を離して、ぼやけた段差を何度も踏んで確認しながら廊下に入った。


「危ない!」

廊下に入って安心したら、置いてあった鞄に足を取られて転びそうになった。今度は、春壱が受け止めてくれた。

「春壱……ありがとう。」

「お前、眼鏡は?」

「…………。」

私が黙ってうつ向くと、春壱は晴君の方を向いて言った。

「晴、こいつの眼鏡返せ。」

春壱は私の腕を離して、晴君から眼鏡を奪う。

「危ないからちゃんとかけてろよ。」

晴君から取り返して眼鏡を渡してくれた。

「うん……ありがとう。」


私が眼鏡をかけた後、晴君も非常階段から中へ入って来る。

「春壱、ひらりちゃんに何か用?」

春壱はすぐに答えなかった。しばらく考えて、

「昨日、忘れてたDVD。あと、見たがってた映画のDVDも。見るなら……」

「見たい!ありがと~春壱!」


そう、喜んだけど、春壱はどこにもDVDを持ってなかった。きっと、私の事様子見に来てくれたんだ。

「ひらりちゃんも映画好きなの?」

「うん、映画とか漫画とかも好きだよ~」

足に引っかけた鞄から出た荷物をしまいながらそう答えた。

「そっか。じゃあ、今度の日曜、映画見に行かない?」

「え?そ、それって……」

デート!?


「そ、デート。僕と一緒に行ってくれる?」

「うん、行く!」

それって、恋人たちのイベント的な?

「じゃ、めいいっぱい可愛くしてきてね。楽しみにしてるから。」

めいいっぱい可愛くって!?ど、どうすればいいの?


その日の放課後、今思えば……私は言ってはいけない人に相談してしまったのかもしれない。

「部長……。」

「ひらり、何かつかめた?つかめるまで練習に出なくていいから。ひらりのシーンは後まわしにしとく。」


デートの事が心配で、全然部長の言葉が入って来ない。

「あの、部長…………。」

「何?どうした?」

「デートって何着ていけばいいんですか?」

そう言った瞬間、

「えぇえ!!デート!?」

練習教室に響き渡るほどの声で部長は絶叫した。

「実季、デート?」

それを聞いた先輩達が集まってくる。

「いや、ひらりがデート!」

「ひらりがデート!?」


先輩達が聞いたが最後。ここからもう止まらなかった。

「ここはやっぱりデートの定番、清楚系ワンピース?」

「いや、逆に媚びないさっぱりボーイッシュ系?」

「やっぱりインパクトが重要!可愛さ全面的にロリータ系は?」

「いやいや、私服はドキッと大人っぽさが必要でしょOL系だよ。」

「誰か雑誌持ってない?」

「メイクは?どうする?」

「靴と鞄も重要だよね?」

「あーもう決まらない!!」


全然口出しできないけど………何とか先輩達をなだめようと試みた。

「あ、あの先輩達…………?」

「デートはいつなの?」

「日曜です。」

止まる気配はなく……


「あと三日か……。よし、みんな、日曜まで稽古は休み!ひらりデートプランに全力を注ぎます!」

「はーい!」

「え!ちょっ!稽古しないの!?えぇえええーーー!!」

練習しないでこんな事になるなんて!!


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