表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/163

ウサギの正体


「壱ぃ~!朝からあちこちまわって聞いてるけど、持ち主見つからないよ~…………本当にうちの学校かな?」

次の日、晴のシンデレラ探しは意外にも難航していた。さすがの晴も、全校の女子生徒を把握していなかった。

「今日休みの奴もいるだろ。」

「あ、そうか!昨日雨だったからその可能性もあるか!よし、明日も探すぞ~!」

そうやって晴は、傘の持ち主を探しつつ、好みの女子に声をかけまくっている事も知っている。


「よくやるな~。あ……資料集忘れた。晴、持ってるか?」

一限目の授業は日本史だった。今年の先生の授業は教科書通りだ。資料集を眺めている方がよっぽど有意義だと思う。

「資料集?持ってないよ。今日必要だっけ?」

俺は必要。


隣の席の女子が、小耳に挟んだのか、資料集を差し出してきた。

「資料集ならあるよ?使う?」

「使わないなら……。」

俺は隣の女子から資料集を借りた。後ろの名前を見ると…相田 ひらり。変な名前……。いわゆるDQNネームってやつだ。こいつ、相田って名前だっけ?

「まぁ、私のじゃないけど。」

女子は自分の日本史のセットを持って見せた。

「私全部家に忘れてきちゃって、相田さんにお願いしてロッカーから借りたの。」


「相田さん……?相田さんって隣のクラスだっけ?」

晴はその女子に資料集の持ち主の事を詳しく訊いた。俺はふと、名前の横には変なウサギが描かれている事に気がついた。これ…………どこかで見たような?

「違うよ?」

「同じだ。」

俺と女子は同じタイミングで別の事を言ってしまう。

「そう。同じクラスだよ。」

そう。あの傘のウサギと同じだ。あの、妙に癪に触るウサギ。まさか、同じクラスだったとは……。ある意味運命的。これは晴が大喜びだろうな。


「壱、傘の持ち主って、相田さんだよね?眼鏡を取ったら意外と美人の相田さんだよね?」

「取った所見た事あるのか?」

「ない!」

漫画の見すぎだ。実際には眼鏡は関係ない。

「あの地味さだぞ?眼鏡を取ったら意外とブスって事もありえるだろ。」

今時そんな設定流行らないだろ。


「お前さ、男のロマンはないの?」

「そこに求めるロマンはない。」

晴は窓を背に、その長い脚をこちらに向けた。

「ひらりちゃんか~可愛い名前だな~。」

「可愛いか?」

晴にとっては名前が可愛いかなんて重要じゃない。結局は顔だ。

「俺のシンデレラが同じクラスにいたなんて、なんて運命的なんだろ~」

このウサギを見ても運命感じるか?運命感じるより嫌な予感しか感じない。


「え、お前まさか相田と付き合おうとか思ってる?」

「あわよくば?地味な子には地味な子の良さがあるよね。」

呆れた。

「止めとけ。頭おかしい奴だったらどうすんだよ。お前いつか刺されて死ぬぞ。」

「骨は拾ってくれ。」

「遠慮する。」


そんな話をしていると、やっと先生が教室へやって来る。

「白石、脚が長いのはわかったから、ちゃんと椅子に座りなさい。」

だらけた晴を注意して、授業を始めた。

「授業始めるぞ~号令~!」


俺はいつものように、資料集を開いた。すると、1枚の紙がひらりと隣の椅子の下に落ちた。俺はその紙を拾うと、資料集の一番前のページに乗せてその紙を読んでみた。


宇宙ウサギ怪獣バニラ……?なんだこれ。どうやら、あの変なウサギの詳細が描かれているようだ。変なウサギだと思ってたのは怪獣なのか……。こいつのオリジナルキャラクター?好きな物バニラビーンズと生クリーム、好きな物を食べるとウンコがソフトクリームになる…………。こいつ……くだらねぇ。最低だ。俺はもう一度背表紙の名前を見た。相田ひらり…………。ひらりって……ヒラリー夫人か?名前が変なだけあって、変な奴……。


よく見ると、背表紙の方にも何か挟まっている事に気がついた。プロフィールシート?誰のプロフィールだ?俺はプロフィールシートにざっと目を通し、元通りに背表紙にしまった。月のお姫様……?国が滅亡し、一族の生き残り。何の事だかさっぱりだ。漫研?文芸部?どれにしても…………俺が関わる必要はない。晴の運命の相手とやらだ。


この時は、これ以上こいつと関わる事はないと思っていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ