呼び捨て
19
初めて、男の子の友達が出来た。小学生の時も中学生の時も、別に喋れないという訳ではないけど、気がつくといつの間にか男子と話すのが苦手になってた。踏み込むって決めたからには、朝の挨拶は絶対自分からしよう!
あ、春壱が来た。
「おはよう春壱!」
私は教室中に聞こえるように大きな声で挨拶した。
「お前!声でかい!」
あはは!春壱のやつ慌ててる。
「相田さんおはよ~!」
「おはよ~!」
最近クラスで仲良くなった、佐藤さんが話かけてきてくれた。
「相田さんと壱って付き合ってるの?」
「は?」
思わず、二人同時にキョト顔してしまう。
「だって、剣道部の子が言ってたよ?演劇部の子が壱に告白しに来たって。それって相田さんだよね?」
「あははは!それ、告白じゃなくて、謝りに行ったんだよ?」
あれ、剣道部の人に見られてたんだ……。
「あ、そうなの?だって今日壱の事呼び捨てで呼んでたし。」
私は胸を張って答えた。
「ちゃんと謝って、名前で呼ぶ事を許されたの。」
「許してねーわ!」
ちっ!バレたか!
「あれ?そうだっけ?ダメって言われた記憶がないからてっきりOKなのかと思ってた。」
「都合良く記憶を変えるな。」
嫌がったって、今後も春壱って呼ぶよ。そのうち、クラス中が壱じゃなくて、春壱って呼ぶように。
「おはよう。ひらりちゃん。」
「晴君、おはよう。」
「あ、そうだ、これ、ありがとう。」
晴君は昨日春壱に貸したDVDを私に手渡した。
「もう見たの?」
「あ……うん。面白かったよ。ありがとうね。」
手渡されたDVDを見て、何となく……晴君は見てないんだろうなと思った。何となくで、確証はない。でも、内容が面白いはずかないし、晴君は面白いとしか言わない。意地悪く、どこが?と、聞いてみたい気もするけど、教室でまた雰囲気が悪くなるのは避けたい。
「…………うん。こちらこそ。見てくれてありがとう。」
私はすぐにDVDを鞄にしまう。その時、たまたま春壱と目があった。
「春壱、剣道部の部長さんにも謝っといて。昨日はお騒がせしてすみませんでしたって。」
「…………。」
春壱は返事をしない。聞こえているのに……。きっと呼び捨てが気に入らないんだろうな。
「相田さん、先生が職員室来るようにって言ってたよ~。」
「職員室?うん、わかった。」
突然の職員室呼び出し……?何だろう……?




