晴の部屋
18
あいつに頼まれたDVDを渡す為、帰宅途中に晴喜の家へ寄った。
「おー壱。どうした?」
いつものように、二階の窓から晴が顔を出した。俺は玄関から入り二階へ行く。
「相田に頼まれた。DVD。」
「あ~!言ってたDVDもう持って来てくれたんだ。」
部屋に入ると、晴はゲームをしていた。俺は持っていたDVDを晴の机の上に置こうとした瞬間、晴が言った。
「じゃあ、それ、そのままひらりちゃんに返しといてよ。」
「は?これ、見ないのか?」
何言ってるんだこいつ…………?
「うん。」
「見ないのに、何で借りた?」
何考えてるんだ?晴……お前、そんなやつだったか?
「その方がひらりちゃんに気に入られるから。女子ってさ、興味あるって素振り見せると喜ぶでしょ?」
だからって……。
「壱だって興味ある素振り見せて、ありがとう。って言われてたじゃん?」
興味ある素振り?そうだな、晴のやってる事と大して変わらない。
「……わかった。このまま返しとく。」
「あ、やっぱり自分で返す。壱がこれ見てひらりちゃん好きになったら困るし。」
下手くそな舞台見て好きになるかよ。俺は置きそびれたDVDをそのまま机の上に置いた。
「好きになる訳ないだろ?…………困る?お前は別に困らないだろ。」
晴なら余裕で女の方が好きになるだろ。あ、あいつはそうじゃなかったんだっけ……。
「困るよ!壱と取り合ったらゲームじゃないし!僕負けたくないし。」
あーそうかよ。でも、
「負けたく無いって、あいつ、お前に恋愛感情はないって言ってたぞ?」
今回ばかりはお前の負けだろ?
「あははは。やっぱり手強いな~」
晴はコントローラーを置いてこっちを見た。
「壱、いつそんな事聞いたの?」
「え……今日たまたま……帰り一緒になって。」
晴は、今まで見たこともない顔をして、こっちを見た。晴は決して見せない、怖いほどの真顔だ。
「壱、ひらりちゃんだけはダメだよ?ひらりちゃんは、僕のだから。」
俺はその時、ふと中学の時の晴を思い出した。確か……ひらりの名字も相田…………俺は、やっと気づいた。何故、晴があいつにこだわるのかも、やっと理解出来た。




