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晴の謝罪

104


晴君は机から降りると、私に向かって言った。

「ひらりちゃん、今日は一緒に帰ろうよ!」

「下書き終わってないから無理。」


私が即答して、下書きをしていたパネルの方へ行くと、晴君が後からついてきた。

「え~!最近全然相手してくれないじゃん!」

「台本捨てたからだろーが!」

「だって、あんなやりたそうな顔するから……。」

「してない!!」


私は晴君の方へ振り返ると、意外にも晴君はしおらしくなっていた。

「してたよ……。だから僕、ムカついて……あんな事………ごめんね。」

…………え?今なんて?

「……今、謝った?」

晴君が謝った?

「え?何?意外?」

「うん……晴君は悪いと思ってないから、絶対謝らないと思ってた。」

「やだな~僕は春壱より早く謝るよ?」

「あ……!なるほど。」

そうやって羽多ちゃんに焚き付けられて来たんだね……。さすがだな羽多ちゃん……。


「また、演劇やりたい?」

「…………うんん。もういいよ。」

晴君はため息をついて言った。

「ひらりちゃんは嘘つきだね。片岡に鉛筆拾ってもらった~とか嘘、演劇やりたくないのも嘘だよね?いいよ。演劇部、戻りなよ。」

「え…………?」

「その代わり、またお昼休み、非常階段前に来てよ。ひらりちゃんがいないと寂しいよ……。」

晴君……。寂しくないように羽多ちゃんを行かせたんだけどなぁ……。


「あと、嘘ついて片岡といい感じになってるのは絶対に許せない。」

「待って、晴君、慎ちゃんはそうゆんじゃないから。本当に誤解しないで。ダメだからね?絶対、何かしちゃダメだからね?」

私は晴君に火がつく前に、慌てて晴君に念を押した。

「じゃあ、僕の所に戻って来てくれる?」

「うん……。わかった。」


それを聞いていた慎ちゃんは言った。

「相田さん……相田さんはそれでいいの?」

「大丈夫だよ、片岡君。私は演劇部にもいられるし、美術部で絵も描ける。誰にどんなふうに思われたとしても……。」

「羽多?羽多なんか関係ないよ。僕達の問題だよね?」

羽多ちゃんは関係ない?それなら、春壱の事も関係ないのと同じだよね?本当に関係ないの?

「関係なくないよね?幼なじみだよね?小さい頃からずっと一緒だったんでしょ?」

「あっちが勝手について来たんだよ。」

晴君は少し嫌な顔をした。


「晴君は女の子に優しいのに、どうして羽多ちゃんには優しくないの?」

「ムカつくから。羽多が僕に優しくない。」

「私からみたら優しいんだけど……ちゃんと気づいた方がいいよ?本当に想ってくれる人が誰なのか。」

羽多ちゃんは晴君の事を大事に想ってる。だから私にあんな態度取ったんだと思う。私が羽多ちゃんの立場なら……晴君と関わらないで欲しいなんて言えないよ。そんな勇気、全然出せないよ……。

「それってひらりちゃんじゃないの?」

「私が自分の事そんな風に言ってたらかなり痛いわ!」

よくそんな都合のいい解釈するね。


「晴君、明日は非常階段前行くから。今日は先に帰って。まだ私下書き終わってないから。」

「じゃ、ここで待ってる。片岡いい?」

何故か晴君は慎ちゃんに許可を得ようとした。

「別に構わないけど?」

慎ちゃんもめんどくさくなった感じだ。

「遅くなっても知らないよ?」

私はそう言うと、下書きを再開し始める。


「相田さん、とりあえず棚に立て掛けて下押さえて描いたら?」

「僕押さえてようか?」

晴君がパネルの端を持って言った。

「いいよ。大変だよ。こっちを机か何かで押さえておくよ。」

私は左手でパネルを抑えながら、下書きを描く。でも、すぐにバランスを崩してぐらついて、上手くいかない。

「やっぱり押さえてるよ。」

晴君はしっかり押さえてくれた。

「腕疲れるでしょ?大丈夫だよ?」

「いいよ。早く描いて。」

「じゃあ、少しだけ。」


少しだけと言いつつ、大まかな大きさ決めをしていると、バランスを見るために後ろに下がる。そうすると、晴君にぶつかる。

「あ、ごめん!」

「おっと、ラッキー。」

晴君は私を包みながら、両手でパネルを支えた。

「なるほど……これが目的か。策士め。」

「誉めてるの?」

「誉めてるよ。」

「ありがとう。」

そう言いながら、私は描き進めた。


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