晴の謝罪
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晴君は机から降りると、私に向かって言った。
「ひらりちゃん、今日は一緒に帰ろうよ!」
「下書き終わってないから無理。」
私が即答して、下書きをしていたパネルの方へ行くと、晴君が後からついてきた。
「え~!最近全然相手してくれないじゃん!」
「台本捨てたからだろーが!」
「だって、あんなやりたそうな顔するから……。」
「してない!!」
私は晴君の方へ振り返ると、意外にも晴君はしおらしくなっていた。
「してたよ……。だから僕、ムカついて……あんな事………ごめんね。」
…………え?今なんて?
「……今、謝った?」
晴君が謝った?
「え?何?意外?」
「うん……晴君は悪いと思ってないから、絶対謝らないと思ってた。」
「やだな~僕は春壱より早く謝るよ?」
「あ……!なるほど。」
そうやって羽多ちゃんに焚き付けられて来たんだね……。さすがだな羽多ちゃん……。
「また、演劇やりたい?」
「…………うんん。もういいよ。」
晴君はため息をついて言った。
「ひらりちゃんは嘘つきだね。片岡に鉛筆拾ってもらった~とか嘘、演劇やりたくないのも嘘だよね?いいよ。演劇部、戻りなよ。」
「え…………?」
「その代わり、またお昼休み、非常階段前に来てよ。ひらりちゃんがいないと寂しいよ……。」
晴君……。寂しくないように羽多ちゃんを行かせたんだけどなぁ……。
「あと、嘘ついて片岡といい感じになってるのは絶対に許せない。」
「待って、晴君、慎ちゃんはそうゆんじゃないから。本当に誤解しないで。ダメだからね?絶対、何かしちゃダメだからね?」
私は晴君に火がつく前に、慌てて晴君に念を押した。
「じゃあ、僕の所に戻って来てくれる?」
「うん……。わかった。」
それを聞いていた慎ちゃんは言った。
「相田さん……相田さんはそれでいいの?」
「大丈夫だよ、片岡君。私は演劇部にもいられるし、美術部で絵も描ける。誰にどんなふうに思われたとしても……。」
「羽多?羽多なんか関係ないよ。僕達の問題だよね?」
羽多ちゃんは関係ない?それなら、春壱の事も関係ないのと同じだよね?本当に関係ないの?
「関係なくないよね?幼なじみだよね?小さい頃からずっと一緒だったんでしょ?」
「あっちが勝手について来たんだよ。」
晴君は少し嫌な顔をした。
「晴君は女の子に優しいのに、どうして羽多ちゃんには優しくないの?」
「ムカつくから。羽多が僕に優しくない。」
「私からみたら優しいんだけど……ちゃんと気づいた方がいいよ?本当に想ってくれる人が誰なのか。」
羽多ちゃんは晴君の事を大事に想ってる。だから私にあんな態度取ったんだと思う。私が羽多ちゃんの立場なら……晴君と関わらないで欲しいなんて言えないよ。そんな勇気、全然出せないよ……。
「それってひらりちゃんじゃないの?」
「私が自分の事そんな風に言ってたらかなり痛いわ!」
よくそんな都合のいい解釈するね。
「晴君、明日は非常階段前行くから。今日は先に帰って。まだ私下書き終わってないから。」
「じゃ、ここで待ってる。片岡いい?」
何故か晴君は慎ちゃんに許可を得ようとした。
「別に構わないけど?」
慎ちゃんもめんどくさくなった感じだ。
「遅くなっても知らないよ?」
私はそう言うと、下書きを再開し始める。
「相田さん、とりあえず棚に立て掛けて下押さえて描いたら?」
「僕押さえてようか?」
晴君がパネルの端を持って言った。
「いいよ。大変だよ。こっちを机か何かで押さえておくよ。」
私は左手でパネルを抑えながら、下書きを描く。でも、すぐにバランスを崩してぐらついて、上手くいかない。
「やっぱり押さえてるよ。」
晴君はしっかり押さえてくれた。
「腕疲れるでしょ?大丈夫だよ?」
「いいよ。早く描いて。」
「じゃあ、少しだけ。」
少しだけと言いつつ、大まかな大きさ決めをしていると、バランスを見るために後ろに下がる。そうすると、晴君にぶつかる。
「あ、ごめん!」
「おっと、ラッキー。」
晴君は私を包みながら、両手でパネルを支えた。
「なるほど……これが目的か。策士め。」
「誉めてるの?」
「誉めてるよ。」
「ありがとう。」
そう言いながら、私は描き進めた。




