2:親友
「さぁ、出発するよ!」
「えー、まだ準備できてなーい」
僕の部屋は如月班員共同の部屋の隣なのだが、任務に出発する時間の直前に如月班の部屋を訪れてみたら、晋平が何も準備できてないらしく少々面食らった。
「晋平くん、何度も言うようだけど……」
「にっちゃん、もう聞き飽きたってば」
つくづく思うのだが、僕らは人の命を背負っているということを晋平は自覚しているのだろうか。
晋平の準備を手伝っていると、遼が部屋から出ようとしていた。
「ちょっと遼くん、どこいくの?」
「任務です」
「ちょっと、単独行動は駄目だって」
すると遼は振り返り、
「いつまでも団体で動いていては、もしも班がバラバラになった時何もできませんよ」
と言った。
「でも」
「個人の力を養うのが重要だと思いますが」
遼は僕の言葉を遮って言い、部屋を出て行った。
「にっちゃん、準備できたぜ」
空気を読んでいるのか読んでいないのか、武子に準備を手伝ってもらった晋平が肩に手を置いて言った。
「それじゃあ、急いで遼くんを追いかけよう」
僕らは急いで洋館をでて遼を捜しに行った。
まだそう遠くへは行っていないはずだ。
僕らが所属しているグループ『JUCG』は、ほんの2年前にできた組織だ。
ゾンビによって壊滅させられた自衛隊が、人員募集を呼びかけたところ、大切な人をゾンビに奪われた者や、正義感のある者が意外と多く集まった。
そして班をつくり、経験豊富な者や実力者がリーダーとなり班ごとに行動する。
今では全国各地や、世界にも拠点がある。
短期間でこれだけの組織を創り上げたJUCGトップは天才と言っても過言ではない。
東京拠点での隊員の平均年齢はおおよそ25~30歳とかなり若手が多い。金銭の価値も失われたこの世界では任務に報酬も無いというのに、正義感のある若者が多く集まっている。確かに、思考力や身体能力、成長性は大きなアドバンテージだ。実際、如月班は僕を除いて全員が10代という異例。
若手隊員の大多数は、ゾンビやアンデッドどもの犠牲になった身内の復讐を誓っている。
僕らは全国や海外から武器・兵器を取り寄せ、アンデッド殲滅と人命救助に尽くしているが、その一方で事の発端も調べている。
というのも、ゾンビからは謎のウイルスが検出されているのだ。
問題なのはこのウイルスの出所が全く分からない事だ。
僕らは身近に迫る恐怖と戦いながら、か弱い人々も守らなくてはいけない。
視界に渋谷のスクランブル交差点が映った。
だが僕が見たのはそれではない。そこに転がるゾンビの死体だ。
遼が既に倒したのだろう。
「速いな、遼くん………」
「急ぎましょう、如月サン!」
僕は頷き、再び走りだそうとしたが、僕の腕を誰かが掴んだので、振り返った。
「ちょい待ち………」
どうやら晋平が体力の限界だったようだ。
僕が溜め息を吐くと、晋平は荒い呼吸をしながら、「もう無理…」と言った。
「仕方ない、武子くん、おぶってあげて」
「分かりました!」
「さあ、行くよ」
やっと目的地の廃ビルが見えてきた。
外から中の様子を伺おうとするが、窓に血がベッタリついていて見えない。
しかたなく、僕らは勢いよくビルのなかに突入した。
一つ一つ部屋を調べていくが、物音すらしない。
僕らの仕事は『見回り』だが、大抵どんなところにもゾンビはいる。
窓の血がゾンビのものならば、いるはずだが……。
1階には何もなかったので、2階に行こうと螺旋階段を昇っていると、大きな物音がした。
それだけではない。ゾンビの唸り声や、奇声も聞こえてくる。
「……行こう」
体力が回復した晋平を降ろした武子が「如月さん!」と呼んだ。
「何?」
「危ない!」
突如、上からゾンビが階段を転がり落ちてきた。
僕は刀を抜いて転がってきたゾンビを貫いた。
「ひええええ……」
晋平が情けない声を出した。しかしそれも無理はない。
そのゾンビは既に頭部が吹き飛んでいたからだ。
間違いない。もう既に遼はここでゾンビと戦っている。
2階に着くと、ゾンビはもういなかった。
というより、もう死んでいた。2体ほど床に転がっていた。
そしてその中央に遼が立っていた。
「遼くん!」
すぐさま駆け寄ると、遼が振り返った。
怪我はないようだ。
「無事だったのか」
武子も遼が無事だということを確認して安心したようだ。
だがそこで晋平が言った。
「ちょっと待て、遼が全部ここのゾンビ倒したのか?」
遼が「ああ」と頷くと、晋平が床に膝をついて言った。
「ということは、もう終わり?俺の見せ場なし!?」
……ということで僕ら如月班の今日の任務は、遼一人の活躍で終わった。
無事全員帰還したとはいえ、僕は班長として複雑な心境だった。
如月班は疲れをとるために部屋で休んでいる。
僕は洋館の外にある鉄塔の上。
今は夕暮れ。ここから夕焼けを見るのが好きなのだ。
こんな街を優しく包み込む、夕焼け空。
誰かが鉄塔を昇ってくる音がする。
「よう、透」
幼い頃からの親友の今河 修也だ。
修也もJUCGに所属していて、人々の命を守っている。
修也は両親を亡くしていて、弟と2人だ。
「どうした、暗い顔して」
修也は僕の隣に腰かけた。修也は僕の悩みも見透かしているかのようだ。
僕は修也に班のことを話した。
修也は「またか」と笑った。
「ま、しょうがないんじゃねえの」
修也は夕日を見ながら言った。
「誰だってそんなもんだ。俺だって班員を引っ張っていくのには結構苦労してんだよ」
「……修也も?」
「ああ。それにな、お前が班員を引っ張っていくなら、班員がついていきたがるような奴にお前がならないといけないぞ」
「………そうだね」
「お前は結構すごいやつだよ。それを見せればいいんだよ」
修也は僕の悩みにあっさりと返しているが、修也の言葉だからこそ身に染みる。
「ありがとう、修也」
「困ってたら助けてやるのが友ってもんだ」
そう言って、修也はまた笑った。
僕らはしばらく2人で夕日を眺めていた。
修也は僕のことを認めてくれる。
僕もまだ頑張れる。
僕は、たくさんの人に支えられているんだな、と思った。
登場人物プロフィール
武子 和義
アンデッド殲滅部隊所属 如月班副班長
19歳 B型
身長:180cm 体重:81kg
誕生日:4月6日
好きなもの:スポーツ、誰かの役に立つこと
永洞 遼
アンデッド殲滅部隊所属 如月班
18歳 AB型
身長:175cm 体重:62kg
誕生日:9月23日
好きなもの:音楽[ジャンル問わず]、チューインガム
嫌いなもの:面倒なこと、頭の悪い奴
田浦 晋平
アンデッド殲滅部隊所属 如月班
18歳 B型
身長:159cm 体重:61kg
誕生日:6月3日
好きなもの:ゲーム、漫画、アニメ、菓子、女の子
JUCGに入ろうと思ったきっかけ:女の子にかっこつけたかったから
最近思うこと:何故班に女の子がいないのか




