SSパッケージ 9
作間は、肉体の痛みという痛みに苦しみ喘ぐ倉田に肩を貸しながら、山中の県道を目的地へ向かって歩いていた。
出海夕夏が追ってくることはもうないだろう。大嶋曰く、彼女は既にあの空き地の中で魔力を行使したと言うから、それでは、もはや彼女は鍵たり得ないと推測出来る。もう追うことさえ出来ないのだ。急ぐ必要はない。
「相沢はどうだい」
背後の大嶋に訊ねる。
「大丈夫ですよ。もう歩けます。というか、無理矢理魔術で歩かせているだけで、本人の意識は回復していません。でも、到着する頃には、苦痛に耐えかねて起きるかと」
「うわ、マジやべえ」
大嶋の淡々とした口調から発せられる残酷な一コマに、本音と思しき言葉を容易く零したのは倉田だ。
彼女の不気味さは、本当に仲間で良かった、と思うほど恐ろしい。得体の知れない何かが彼女の中にあることは、作間も、恐らくは倉田も、皆が自覚していることだった。
「……あったぞ。入り口だ」
作間は声がややうわずった。
作間の目に、正確には作間が見ている世界に変化が起きた瞬間だった。
空間が歪んでいる。海に蜃気楼があるかのように、アスファルトの上で歪む陽炎のように、その一点は夜の山中で奇妙な色を作り出していた。
「ははっ、あと少しだ。これさえ果たすことが出来れば、俺たちの勝利なのだ。いや、『SSパッケージ』の勝利だ!」
明かりのない山道は視界のない暗闇も同然で、作間らはゆっくりと、己の居場所を踏みしめるように足を進めた。
四人の魔術師はひたすらに、鉄堂光泉の工房へと向かう。
一歩。また一歩。
そして。
作間の声は、四人の若き魔術師の拍動は、とくんと響いてその音を失わせる。
四人の魔術師は、カーテンの裏に隠れるように、夜の闇に吸い込まれて、消えた。
次回は幕間となります。
よろしくお願いします!




