↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界で家庭菜園やってみた  作者: 藤原ゆう
家庭菜園事始め
PR
27/91

13.彼女の思い

話がひと段落した所で、悠里は庭に出た。


コウメさまにお茶の時間には戻っていらっしゃいと言われたが、半刻くらいなら土をいじれる時間がある。


ウリエルも少し仕事をするよと自室に戻って行ったから、悠里は一人だった。


木の棒で必死に耕した土は、黒い色を見せている。


そこから小さな虫が這い出して来たりして、春が近いことを窺わせた。


日本ではそろそろ夏野菜の準備だ。


この世界に夏野菜なんてあるんだろうかと思いながら、僅かに生えた雑草を抜き始めた。


「雑草とか生えるんだもん。土をちゃんと作ってあげたら、この国も野菜でいっぱいになるよ。絶対」


この国が実り豊かな国になって、皆が平等に野菜を食べられるようになったら。


この世界に来て良かったと思えるだろう。


コウメさまやウリエルさんみたいに力を貸してくれる人の為にも頑張るんだ。


そして、日本に戻る方法が見つかったら……。


見つかったら?


そう考えた時、悠里はふと草を抜く手を止めた。


(見つかったら、わたしは……)


日本に帰るのだ。


帰る?


本当に?


じっと土で汚れた手を見つめた。


爪の間に入り込んだ土は日本のものと何ら変わりなく、ここが異世界であることが不思議になるくらいだった。


文化や習慣が違うだけで、人の優しさも温もりも、そっくりなこの世界。


しかし悠里は異世界の人間。


方法さえ分かれば、いつかはここを離れる日が来るのだ。


土をひと掬い手に取った。そしてさらさらと零す。


痩せていて、乾いている土。


砂埃が舞って、悠里は少し咳き込んだ。


でも、きっと生まれ変われる。


美味しい野菜が育つ土にきっとなる。


(今は日本に帰ることを考えないで、目の前のやらなければならないことだけを考えよう)


自分の中に、日本に帰りたくないと思う気持ちを見つけてしまって、悠里は戸惑っていた。


だから、とりあえず精一杯のことをやろうと決めた。


人付き合いも、恋も、勉強も。


中途半端で終わらせてばかりの自分だから。


これは最後までやり遂げたい。


自分に出来る精一杯。


この国にたくさんの野菜が実るようになった時、自分自身も変わっていたいから……。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。