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異世界で家庭菜園やってみた  作者: 藤原ゆう
家庭菜園事始め
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1.会えました

どのくらい走ったのか分からない。


息が切れ、足ももう動かない。そんな頃になって、ようやく悠里は走るのをやめた。


そこは王宮の中の小高い丘のような所で、低木ばかりの藪に覆われていた。


悠里はその藪に身を潜めるようにして座った。


低木は悠里を隠すように枝を伸ばしていた。


「迷子になっちゃったなあ」


そのことに多少の不安はあったけれど、それでも久しぶりに一人になれたことに、ほっとしている自分もいた。


この国の季節は冬。


けれど、低木は常緑なのか、葉が生い茂っている。


比較的暖かいのも、この国の冬の特徴か。


アシュラムに聞いたことを思い出して、悠里は溜め息をついた。


あんなふうにアシュラムを責めるつもりは全くなかったのに。


つい口をついて出た言葉は、彼を攻撃する物だった。


「 ああ、もう。何やってるんだろう。わたし」


悠里はそう言うと、髪の毛をぐちゃぐちゃ掻き回して、最後には頭を抱えてしまった。


「いろいろ溜まってたんだよ。きっと……」


元の世界にいた時から溜まっていた鬱憤ごと、アシュラムにぶつけてしまったのだ。


「情けないのは、わたしの方だ……」


きっと悠里は、アシュラムの孤独に自分のそれを重ねてしまい、居たたまれなくなってしまったのだ。


けれど、悠里とアシュラムでは立場が違う。


少なくとも悠里は両親と一つ屋根の下で暮らして来た。


彼らの目が自分に向いていないと思い込んでいるのも、恐らく彼女の我が儘なのだ。


けれど、アシュラムは親許を離れ、身分まで変えて、神殿という薄暗い場所で育った。


そこで、彼が親の愛を求めても無理からぬ事だ。


二人の立場は、決定的に違う。


(それなのに、わたしは彼の人生を否定してしまったんだ)


はあと長い溜め息をついて、悠里はこれからどうするべきか考え始めた。


アシュラムにはもうちょっと、きちんと謝ろう。


それから?


それから、彼の思いを冷静に聞いてあげよう。


そして?


そして、自分の思いも、ちゃんと彼に伝えよう。


本当なら、さっきの四阿で出来たことを、自分で台無しにしてしまったのだ。


悠里はもう二度と、ちゃんと考えていることを伝えないまま、誰かと疎遠になるのは嫌だった。


悠里はしばらく、藪の下から空を眺めていた。


日本のものとは違う、どこかくすんだような色の青空。それでも、太陽の光は暖かく降り注いでいた。


「あの太陽は、わたしの知ってる太陽と同じなのかな」


そんな事はないだろうと思いながら、そう呟いた。


「遠いんだろうなあ。地球から……」


今頃日本では、悠里がいなくなって大騒ぎしているだろうか。


それとも、時間の流れが違っていて、あの、鍬を畑に突き刺した場面から、大して時間は経っていないのかもしれない。


いずれにせよ、家族はそのうち悠里の捜索願いを出すだろう。


「はあ。どうなっちゃうんだろうなあ」


とにかく、アシュラムともう一度話そう。立ち上がると、丘を下り始めた。


いくら一人になれたと喜んでも、こんなに心が千々に乱れている時に一人で居るのは逆効果だ。


完全に思考が後ろ向きになってしまうからだ。


だから悠里は丘を下る。


きちんと謝って、もっと建設的に話を進めてみよう。


(大人な対応、大人な対応…‥)


頭の中で、呪文ように唱えながら歩いていると、向こうからやって来る人があった。


あの人に聞けば、どうやって四阿に戻ったらいいのか分かりそうだ


だんだん近付いて来るにつれ、その人が侍女服を着ているのが見えた。


もしや、侍女頭ヨハンナに言われ、悠理を探しに来たのかと思ったが、どうやらそうではないらしい事が程なくして分かった。


「あなたは日本の方ね」


突然声を掛けられ慌てて振り向くと、丘の麓にある大きな木の下に机と椅子が並べてあって、その一脚に老婆は座っていた。


彼女も明らかに日本人だった。


「ああ!もしかして、コウメさま!?」


この世界で、悠里の他に日本人がいるとしたら、コウメさまだけだ。


彼女に会う事は、とてもハードルが高いことのように思っていたため、こんなにあっさり会えるなんて驚きだった。


コウメさまが悠里を手招きしている。


それに釣られるように、悠里は一歩一歩コウメさまに近付いて行った。


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