第四十八話 オペレーション・トーチ Ⅰ
……お久しぶりです。
最近スランプが酷いです。
少々文章が劣化していますが、出来れば目を瞑っていただけるとありがたいです。
次回更新も恐らく来週までかかるかと思います。
2022年9月3日(土)
05:00
愛知県田原市南部沖10海里(約20km)・遠州灘
国連統合海軍極東方面特別混成強襲揚陸艦隊第1揚陸支援戦隊・揚陸指揮艦LCC-19『ブルーリッジ』
side 特別混成強襲揚陸艦隊司令・アンドリュー・ブラックウッド大将
この日の海は穏やかだった。
これから始まることを全く知らないかのように平穏だった。
私が乗る艦、揚陸指揮艦ブルーリッジの後方800mには270mの戦艦たちがその主砲を再び咆哮させる時を待ちわびている。
そう、名古屋陥落から二週間、我々はこの戦争で初となる、揚陸作戦を行う事となったのだ。
3ヶ月前からモスボールの解除と戦列復帰処置が行われていたアイオワ級の戦艦4隻がこの海域に集結している。
搭載した16インチ砲でAILSを粉砕するためだけに。
「第2戦隊ウィスコンシン及びミズーリ、指定位置に配置完了。我が戦隊のアイオワ、ニュージャージーからも射撃準備完了の報告が入っております。また、第1航空艦隊のジェラルド・R・フォード、エンタープライズ以下3隻の航空母艦も航空機の発艦準備を完了しました。第1から第3揚陸戦隊の|LCAC《エアクッション型揚陸艇》、輸送ヘリ、ティルトローター機、全機の発進準備を完了」
「司令、作戦開始準備は全てのプロセスを完了致しました。指示を願います」
今回の上陸作戦の規模はスレッジハンマーに勝るとも劣らない。
上陸兵員数6万人、作戦参加人数14万人の大規模作戦なのだ。
しかし、この渥美半島上陸作戦はあくまでも囮だ。
本命は静岡浜名湖付近に上陸する部隊だ。
あちらには砲撃支援が無い代わりに世界中から集められた空母17隻とその作戦機1200機が大規模な航空支援を行うのだ。
もう既に我々はこの日本を2ヶ月以上守り続けることなど不可能だという結論に達した。
ならば、方法は一つしか無い。
それまでに戦争を終わらせる。
それまでにAILSを叩き潰す。
これしか方法は残っていない。
今回の目的は名古屋奪還や濃尾平野の奪還ではない。
目的はたった一つ。
AILS旗艦『ナディナ・クルーシカ』の完全破壊。
バンカーバスターや燃料気化爆弾、外部からの核攻撃での破壊は困難だと確認されたが、内部からの『核爆発』に耐えるほどの装甲は存在しない。
AILS相手に核は効かないが、旗艦には十分効力を発揮するし、研究の結果『ナディナ・クルーシカ』はAILSの生命そのものであることも判明したのだ。
個々の生命は確かにそれぞれのAILSにあるが、脳……というよりも思考は全てが『ナディナ・クルーシカ』によって行われているのだ。
思考は『ナディナ・クルーシカ』の元で統一されている。
それは『ナディナ・クルーシカ』を破壊すれば全てのAILSは脳死状態に陥るのではないか、という一つの仮説を導き出した。
『ナディナ・クルーシカ』の破壊は人類の勝利条件の中で最も簡単なものだ。
AILSの殲滅はまず不可能だし、人類をこの地球から別の星へと逃がすほどの技術力はまだ無い。
ある意味、『ナディナ・クルーシカ』破壊は唯一無二の勝利条件であるとも言えるのだ。
今回の2つの上陸作戦が成功すれば、人類史上最大規模の作戦、『オペレーション・ラグナロク』が発動される。
この作戦は真の反撃の狼煙を上げる戦いなのだ。
だから、司令部はこれに『オペレーション・トーチ』などと名付けた。
この作戦はあくまでも『ラグナロク』の前哨戦だ。
渥美半島と浜松に上陸し、ラグナロク本隊の上陸地点を確保するための戦いでしかない。
だが、これが成功しなければ『ラグナロク』には繋がらない。
司令部が大量の支援部隊を付けた理由はここにある。
全ては『ラグナロク』を成功させるためにあるのだ。
「司令?」
いつの間にか思考の渦に飲み込まれていたようで、オペレーターに疑惑の眼差しで見つめられていた。
「……すまない。少し考え事に耽ってしまっていた。マイクを回してくれ」
「了解しました。……、どうぞ。全部隊へ繋ぎました」
私はオペレーターの言葉に頷き、ヘッドセットのマイク位置を調節した。
一度深呼吸した後、私は口を開く。
「……私は本作戦の指揮を務めるアンドリュー・ブラックウッドだ。諸君らも知っての通り、この作戦は人類史上最大規模の作戦の布石となる非常に重要なものだ。失敗は絶対に許されない。失敗した、はイコールで人類……いや、地球生命の滅亡と言っても過言ではない。だが、これほどまでに重大な作戦だ。空母5隻と戦艦4隻、そして数十隻のミサイル駆逐艦及び巡洋艦が歩兵部隊の支援に当たる。これで勝てない筈が無い。最悪の場合は後詰めの航空部隊も用意してある。後々の影響を考えれば燃料気化爆弾はあまり使用したくはないが、出し惜しみをして負けるのは最悪だ。それと歩兵部隊の諸君。少しでも危ないと思ったならばすぐに航空支援か砲撃支援を要請したまえ。君たちの後ろには300機を越える航空部隊が控えている。ほんの数秒で君たちの脅威を粉砕するだろう。……さて、間もなく作戦開始時刻だ。装備の点検は怠るな。航空部隊の諸君もシステムチェックはしっかりと済ませておくように。以上だ」
私は手信号でオペレーターに通信回線の遮断を命じる。
「砲撃支援部隊へ繋いでくれ」
オペレーターは首肯し、数秒後に接続完了の合図を出した。
「砲撃支援部隊全艦に命ずる。砲撃を開始せよ」
『……了解。砲撃を開始します。……、……射撃開始!』
その言葉と同時、海が、揺れた。
艦内にいるにも関わらずその砲撃音は耳に響くほど大きい。
その音はまさに龍の咆哮。
数十年ぶりに牙を剥いた、戦艦という名の龍の雄叫びだった。
砲撃とほぼ同時に戦闘指揮所は慌ただしくなる。
「強襲揚陸隊第2戦隊は半島先端部への上陸を開始せよ。……問題ない。現在空戦種の出現は報告されていない。大丈夫だ。出てきたとしても航空支援部隊が何とかする。今は揚陸の事だけを考えろ」
「第21空母戦闘団はアルファ支隊の上陸支援を行え。……空戦種を確認した場合は優先撃破だ。ブリーフィングで聞いていなかったのか?」
戦闘が始まってからは司令官のやることなど殆ど無い。
大体のトラブルにはオペレーターが対応するし、あまり細かい事に司令官が指示を飛ばしても戦場を混乱させるだけだ。
砲撃支援部隊への命令や航空部隊の配置転換命令がせいぜいだろう。
私は戦艦主砲発射の轟音をBGMに、戦況図を眺め続けるのだった。
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