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第三十六話 オペレーション・スレッジハンマー Ⅳ

2022年8月10日(水)

14:00(ヒトヨンマルマル)

愛知県名古屋市中村区・JR名古屋駅

国連統合陸軍・日本国防陸軍合同前線司令部・作戦会議室

side 日本国防陸軍西部方面軍司令・鷲崎淳治陸軍中将



 セルトアレイアが撤退を開始した、という情報が入ったのは作戦開始から5日目の昼過ぎだった。

 新潟南部と富山を失ったものの、一応作戦目的は達成された事になる。

 しかし、受けた損害は甚大なものだった。

 歩兵師団三個壊滅、一個航空団壊滅、戦車連隊二個壊滅、機動歩兵師団一個壊滅と総計4万人以上の死傷者を出すことになったのだ。


挿絵(By みてみん)


「一時は失敗するかとも思いましたが、本当に兵士達はよく頑張ってくれましたよ」


 エドワーズ中将が言う。

 作戦中に突如現れたコウモリ……航空戦闘種(略称・空戦種)によって航空部隊による近接支援が不可能になり、さらには宇和島に落ちたものとほぼ同一の円錐、地上支援種によって全軍が大混乱に陥った。

 それにもかかわらず必死に戦い、勝利を掴み取った彼らは、私たちにとっても賞賛すべき者たちだった。


「ええ。あのタイミングで航空部隊が無力化されるなどとは誰も考えていませんでした。本当に、兵士たちには頭が下がりますね」


 私もそれに同調し、兵士を賞賛する。


「……しかし、大量の犠牲者を出した事は真実です。せめてこの戦いで散った者達が天界にてその勇気と信念を讃えられ、報われることを祈って……」


 エドワーズ中将はおもむろに椅子から立ち上がる。

 その行動でエドワーズ中将の考えを察した私たちも次々と立ち上がる。


「……黙祷」


 私はゆっくりと目を閉じ、この作戦で……いや、この戦争で散った人々の冥福を祈った。

 そして、兵士達に思いを馳せる。


 ……すまない。

 私がもっとしっかり注意していれば、こんな大損害は出さずに済んだのだ。

 宇和島の例から敵が航空兵力を持っている可能性など、簡単に予想できた。

 私は、都合の悪い例を忘れ、『最初から崩壊していた前提』を元にして作戦を作らせたのだ。

 この戦いで果てた兵たちよ、私を責めてくれ。

 未来を踏みにじり、ぶち壊しにした私を……(さげず)んでくれ。

 お前は愚かで、間抜けだと、(けな)してくれ。


 ……無理なことは分かっている。


 私は、ただ前に進むしかない。

 まだ私を必要としている人たちがいる。

 だから、前に進まなければならない。

 これからどんなことがあったとしても、誰かが必要だと言ってくれる限り、進まなければならないのだ。

 その人物が誰も居なくなったとき、私は君たちと同じ所に行く。

 だから、せめて待っていて欲しい。


「……黙祷、終わり」


 エドワーズ中将の言葉と共に私は目を開き、椅子に腰掛ける。


「……では、とりあえず反省会と……」


 いきましょうか、とエドワーズ中将が言おうとしたその時、会議室の扉が開き、通信士官が駆け込んできた。


「中将! 緊急事態ですッ!」


 英語での呼びかけだったから、恐らくはエドワーズ中将の事だろう。


「どうした?」


 訝しげな声でエドワーズ中将が士官に尋ねる。


「て、敵から……敵から通信ですッ!」


 その言葉は、この会議室を凍り付かせるのに十分だった。

 敵から、通信?

 それは、奴らが知的生命体であることの証明に他ならないのではないか?

 会議室に居る全ての人間が沈黙していた。


 ありえない。

 あり得るはずがない。

 奴らが、知的生命……だと?

 そんなことは、あり得てはならない。

 それでは、人類に勝ち目など、もう残っていないということではないか……



オペレーション・スレッジハンマー

交戦部隊 国連統合軍・日本国防軍合同作戦部隊 VS セルトアレイア


双方の死傷者

国連・日本合同軍 123000名中約24000名死亡 18000名以上重軽傷 被害大規模

セルトアレイア 300000体以上中90000体以上死亡 被害大規模


国連・日本合同軍の作戦目的達成・勝利

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