第二十六話 最後の晩餐?
2022年7月28日(木)
PM 17:45
大阪府和泉市伯太町
日本国防軍少年曹候補生学校・女子居住棟Ⅰ号棟301号室
side 秋津瑠衣
16時頃に突然入ったクーラーの効いた部屋で美春たちと話をしているうちに、いつの間にか夕食の時間が間近に迫っていた。
私たちは居住棟から歩いて数分のところにある食堂に行くために靴を履いて外へと出た。
強い西日に晒され、思わず目を瞑ってしまう。
一応は都会に分類される場所にあるせいか、この駐屯地はかなり暑い。
今は7月だからいいものの、教育期間は4ヶ月前後。
酷暑と予想されている8月は確実に入ってしまう。
『地獄を見せる』と言った広報官の言葉が真実なら、真夏の朝から夜まで外で延々と走り続ける事になるのかもしれない。
……いや、曹候補生学校と名前が付いている以上、座学にも力を入れるだろう。
私はそんなことを考えながら食堂への道を歩いた。
食堂は体育館の高さが半分程度になったような建物で、中には洗面所などの設備もあるようだ。
靴のままで上がるようにと指示がされていたので私たちは靴を脱がずに奥へと進んだ。
構造としては高校などにある学食と変わらないだろうか。
食券販売機などが無く、統一されたメニューではあるが、カウンターやテーブルを見ていると第八高校時代を思い出してしまう。
そういえば、国の方針なのかは知らないが少年志願兵は軍属のまま18歳を迎えた場合自動で高校卒業資格が授与されるらしい。
まあ、既に核でぐしゃぐしゃになってしまったこの国で高校卒業資格に意味があるのかは分からないが、これまでの学歴社会を考慮した結果なのだろう。
私は裕哉と水城君の姿を探す。
夕食を一緒に食べる約束をしたためだ。
……どうやら、まだ来ていないらしい。
合格者は380名程度だと書いてあったが、それにしては人がまばらな気がする。
もしかして私たちが早く来すぎたのだろうか?
とりあえず私たちはカウンターで今日の夕食であるらしいハンバーグとポテトサラダ、コーンポタージュを受け取って椅子に座った。
裕哉達が来たのはそれから5分ほど後の事だった。
同室者の少年……槇田君と櫻井君と話し込んでいたらいつの間にか夕食の時間になっていて慌てて来たとか。
その時間帯になると食堂もかなり混んできており、いかにも学食、といった感じだった。
「にしても、今日は本当に疲れたよ」
ポタージュを啜りながら裕哉が愚痴る。
「まあ、飛行機だっただけマシじゃない? 海の方は大荒れで、船で行ってたら大変だったかもしれないわよ?」
それに、西の方では天気が不安定だったせいで飛行機が無茶苦茶揺れたと優華や梨夏が言っていたし。
「それはそうだけどさ……朝日さんは疲れた?」
「は、はい。さすがに今日は早めに寝たいかな、なんて思ってます。就寝時間が決まっているから無理なんでしょうけど……」
美春も多少憔悴した様子でため息を吐く。
実際、私もかなり疲れてはいた。
昨日は緊張のせいかあまり眠れなかったので、何度か猛烈な眠気が襲ってきたのだ。
何故休憩中に寝なかったかって?
多分起こされたとしても起きられないと感じたからだ。
今日の就寝時刻は23:00だと聞いたが、それまで持つかは分からない。
私はポテトサラダを咀嚼しながらこの眠気をどうやって退けるかを考え続けていた……
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