第二十五話 同室者
2022年7月28日(木)
PM 2:30
大阪府和泉市伯太町
日本国防軍少年曹候補生学校・男子居住棟Ⅰ号棟301号室
side 水城和樹
白いペンキが塗られた真新しい廊下を進み、301号室と書かれた表札に辿り着いたのは、駐屯地に来てからおよそ1時間程度たった頃だった。
事務員の人に渡されたカードキーを扉の右にあるカードリーダーに通すと、モーターの作動音と共に開錠音が響いた。
永崎君がドアノブを捻り、外開きの金属製ドアを開いた。
中にはパイプベッドが4つと事務机が4つ、そしてロッカーも同じく4つ、洗面台とトイレがあると思わしき木製の扉があった。
部屋の広さは大体16畳程度だろうか。
それにベランダと洗面台、トイレを足して全体で20畳程度だろう。
パイプベッドには布団やマットレスが折りたたんだ状態で置かれている。
永崎君は早々と窓際の手前側にある机に荷物を置き、整理を始めていた。
それを目にして僕は慌てて窓際奥の机にボストンバッグを置いた。
鞄に入っているのは着替えやタオル、筆記用具などの必需品と所持許可品一覧に書かれていた携帯型音楽プレーヤーとデジタル式の腕時計のみだ。
足りなくなったときは向こうで買ってこいということで父さんから5万円程貰っているが、恐らくは必要ないと思う。
持ってきた物をあらかた整理したところで、横から扉が開く音がした。
恐らくは同室者だろう。
扉を開けた人物は数歩進み、言葉を発した。
「初めまして、今日から同じ部屋になる櫻井賢吾です。よろしくお願いします」
振り向くと、そこに居たのは僕より少し年下に見える少年だった。
その背後からもう一人少年が現れ、言った。
「俺は槇田伸一って言います! これからよろしくですっ!」
最初に入ってきた少年……櫻井君よりも日焼けしていて、声も大きい。
櫻井君が色白だと言い換える事も出来るが、見た感じでは櫻井君がインドア派で槇田君がアウトドア派なのだと感じた。
どちらもここに来ている以上、勉強や運動はそれなりに出来るのだろう。
「よろしく。僕の名前は水城和樹、今は16歳、かな?」
僕はとりあえず自己紹介を行う。
永崎君もそれに影響されたのか自己紹介をした。
「俺は永崎裕哉。水城と同じく16歳。これからよろしくな」
僕たちが年齢を告げた為、槇田君と櫻井君も自らの年齢を教えた。
「俺たちは二人とも14歳です。これからちょっと荷物の整理をするんで、ちょっと待って下さい」
14歳、ということは中学2年……いや、3年の可能性もあるのか。
槇田君と櫻井君はそれぞれ荷物を机の上に置き、整理を始めた。
まあ、二人とも悪い人間には見えないし、トラブルで悩まされることはなさそうだ。
僕は引き出しに入っていた今日のスケジュール表を見る。
18:00~18:30の夕食後に19:00まで入浴でその後、被服等の支給及び名前記入、21:30から今後の行動、訓練などについての簡単な説明、23:30に就寝、らしい。
明日の起床時刻などについては後々説明があるのだろう。
それと一緒に駐屯地の地図も入っていたようで、食堂や体育館などのおおまかな位置が示されていた。
地図を見て歩けば少なくとも迷うことは無い筈だろう。
とりあえず、夕食の時間までは永崎君たちと雑談でもして過ごすか。
僕は槇田君たちが荷物の整理を終えた後、しばらくの間雑談に耽るのだった。
誤字脱字や文法的におかしな表現の指摘、評価感想お待ちしております。




