第二十三・五話 着隊前検査
今回は閑話です。
2022年7月28日(木)
PM 1:45
大阪府和泉市伯太町
日本国防軍少年曹候補生学校(旧陸上自衛隊信太山駐屯地)・正門前
side 永崎裕哉
既に敵の侵攻を想定しているのか、駐屯地の外周はコンクリートの防壁で囲まれており、見張り台のようなものも建設されていた。
……もしかすると脱走防止のためなのだろうか?
一瞬その可能性を考えたが、恐らくは違うだろう。
説明会を聞く限り、『脱走したい者は脱走しろ』と言っているようなものだ。
少なくとも教育期間中に脱走防止の措置が取られるとは思えない。
俺たちはとりあえず門前へと向かい、歩哨に立っている兵士に話しかけた。
兵士はかなり若く、少なくとも20台前半であろうことは間違い無いだろう。
「あの、少年曹候補生学校はここで合っていますか?」
「確かにここです。貴方達は入校者ですか? 入校者なら合格証明書を出してください」
俺たちは鞄から各々合格証明書を取り出し、兵士に渡す。
「……はい、少し待って下さい。確認します」
兵士は詰所に入り、無線か何かでどこかと交信を始めた。
しばらくすると兵士はこちらに戻ってきて、事務棟で本人確認を行った後に陸軍病院分院にて着隊前検査を受け、事務棟に戻って着隊の手続きを行うようにと告げ、合格証明書を返却した。
俺たちは荷物検査を済ませ、駐屯地の門をくぐった。
最近改装が行われたという話は嘘ではなかったようで、建物は殆どが新しいようだった。
古そうな建物は修史館と呼ばれている第二次大戦前の建物くらいで、他は壁や内装を少し見ただけで分かるほどの綺麗さだった。
俺たちは円形のロータリーのような場所を通り抜け、『事務棟』と表札が掲げられている建物へと足を踏み入れた。
クーラーの冷風とカモミールの爽やかな香りが俺たちを迎え入れる。
「すみません、入校者なのですが……」
俺が言葉を続けようとすると、事務員が歩み寄ってきてこう言った。
「合格証明書はありますか? 一人ずつ本人確認をさせて頂きますので提出してください」
俺たちは一人ずつ順番で合格証明書を渡し、事務員から生年月日や血液型などの確認が行なわれた。
それらが終わった後、事務員は窓の外にある建物を指さし、そこで身体検査を行なってくるようにと告げた。
指示された建物には『日本国防陸軍第7病院信太山分院』と書かれていて、陸軍病院の系列であることが分かる。
女子と男子で検査を受ける階が違うようなので俺たちは一度別れ、俺と水城は1階の検査室に向かった。
今回は薬物、視力、聴力、ウ歯(虫歯)などの単純な検査であり、二人とも合格判定となった。
女性陣は俺たちより多少遅れたが、一応全員合格しているようだ。
事務棟に戻り、必要書類を提出すると、身分証明書とカードキー、ロッカーキーが渡された。
どうやら俺たちが一番乗りらしく、居室は先着順で部屋を割り当てているので1号棟の3階山側の一番奥にある部屋に荷物を置くように説明された。
先に部屋割りを決めておいて入校者が来ないという事態になった場合の混乱を避けるためだという。
事務員に居住棟まで案内を行なって貰い、女子用の居住棟は別の場所にあるらしいので女性陣とは一旦別れる。
俺たちは居住棟に入り、午後6時まで休憩することになったのだった。
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