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第十三話 静かなる激戦

この回に出てくる登場人物は全員英語を喋っていると解釈して下さい。

また、よく分からない英語名が出てきますが、それはTACネーム(いわゆる愛称)です。

2022年7月15日(金)

AM 8:30

近畿地方中部・上空15600ft(約4700m)

F-35AJ ライトニングⅡコクピット内

side 航空自衛隊中部方面航空隊第6航空団第303航空隊隊長・『メイガス1』・緒方雅樹一等空尉



『こちらはAWACS(早期警戒管制機)。標的は電磁放射を吸収するためこちらのレーダーで捕捉することは不可能だが、貴隊の航空管制を行う。今回の任務には非常な困難が伴うが、何としても成功させなければならない。我々も最大限のサポートを行う。頼んだぞ』


 間もなく目標を目視確認出来るところで、AWACSからの無線連絡が入った。


「こちらメイガス1。こちらも最大限努力する。失敗すれば国民に犠牲が出ることは確実だからな。間もなく目標を目視で確認出来る。射点の指示などは任せる」


『了解した』


 一度AWACSとの交信を切り僚機へと通信を行う。


「ホークより全機、今回の任務は絶対に失敗することは許されない事は分かっているはずだ。しかし、余りに緊張しすぎるのも失敗の元だ。力を抜け。いつも通りに落ち着いてやれば大丈夫だ。誘導装置がまともに動作しなくても、俺たちならやれる。絶対だ。だから力を抜け。冷静になるんだ。いいな?」


『分かっていますよ、隊長。ここで焦っても精度を落とすだけなんて事は、分かっています。ですから、隊長こそ落ち着いて下さい』


『そうです。そんなことをわざわざ直前になって言うなんて、いつもの隊長ではありません。深く息を吸って、心を落ち着かせて下さい』


 2番機と3番機にそう言われ、冷静さを欠いていたのは自分であったと知る。

 そうだ。緊張は今のうちにほぐしておかなければ。接敵しても緊張しているのはまずい。

 俺は一度大きく息を吸う。酸素ボンベから送り込まれる空気を吸い、吐き出す。

 よし、もういつもの俺だ。


 そして、前方に小さな黄色の三角形が見えることに気づく。

 俺はAWACSに無線を繋ぐ。


「こちらメイガス1、目標を目視確認した」


『AWACS了解、兵装ロックの解除を許可する。機首カメラのスイッチを入れてくれ。こちらでも確認しつつ指示を行う』


 今回の任務ではAWACSがレーダーで標的を捕捉出来ないため、F-35の機首部分にカメラが設置されていた。

 このカメラは超音速航行さえしなければ外れることは無い(超音速航行を行った場合音速突破時の衝撃により外れる)ようになっている。ちなみに、このカメラの設置自体は2週間前に行われている。

 その時点で空自上層部は敵の航空戦力の可能性を想定していたのだろう。

 俺はカメラのスイッチを指示通り入れた。


『映像を受信した。しかし、解像度が低いためまだこちらで物体を確認することは出来ない。更に近づいてくれ』


「了解。……メイガス1より全機、兵装ロックを解除せよ」


 俺は僚機に指示を出した後、自機の兵装ロックを解除する。

 僚機からもロック解除の報告が入り、その時点で三角形はかなり大きくなっていた。

 距離にしておよそ45kmといったところだろうか。

 戦闘機であれば数分で到達する距離だ。


『こちらAWACS、標的を確認した。一度3時方向に旋回し、目標の背後を取れ。その場所だと第一標的の方向舵を狙うことが不可能だ』


「メイガス1了解、全機3時方向に旋回せよ」


『『『了解』』』


 俺は操縦桿を右に倒し、その後手前に引く。

 下方向へのGが加わり、耐Gスーツの脚部が収縮する。


 全機が旋回を終えたのを見て、俺は再度旋回の命令を出した。


「全機9時方向に旋回、標的の背後を取れ」


 僚機から了解の通信を受けた後、俺は操縦桿を引いた。




『AWACSだ。標的の後部側面にヒレのような物体があるだろう? それは方向舵だ。航空機関銃で破壊してくれ』


「メイガス1、了解。……レイス、バッシュ、あのヒレを攻撃して破壊せよ」


『レイス、了解』『バッシュ、了解』


 僚機の内の2機が突出し、標的との微調整を開始する。

 最初に射撃を行ったのはレイスだった。


『メイガス3、FOX3!』


 その無線と同時に右側にいたF-35の航空機関砲が火を噴いた。

 機関砲の砲弾はヒレの根本に直撃し、折れ飛んだ。

 まずい、このままではレイスとその後ろにいるケイトにヒレが当たってしまう。

 俺は咄嗟に言葉を発していた。


「メイガス3、5、ブレイク!」


 それとほぼ同時に2機共が上に舵を切り、ヒレが直撃することは無かった。


『メイガス2、FOX3!』


 直後、左側のF-35の航空機関砲も射撃を開始する。

 ヒレを貫通したものの、完全に破壊するまでに至ってはいない。

 もう一度機関砲が発射され、今度こそヒレを破壊した。


『AWACSだ。方向舵の破壊を確認した。次は標的の左側面に回り、出来る限り先端部にミサイルを撃ち込んでくれ。標的の角度が現在位置より15度右に曲がれば任務は成功だ。山口県北部沖合に落下するだろう』


「メイガス1了解。……ノックス、ケイト、11時方向に旋回し標的左側面前部にAAM(空対空ミサイル)をありったけ撃ち込め。その前に自機に破片が当たらない距離まで離れろ。他の全機は後方に一時退避、ミサイルの発射まで待機せよ」


『ノックス、了解』『ケイト、了解』


 その返答と同時に俺はエンジン出力を落とし、エアブレーキを掛けた。

 機体が減速を開始する。



『メイガス5、FOX2!』


 数分後、その無線と共にAAMが発射された。

 AAMは円錐の先端部へと直撃し、明らかに標的は方向を変えつつあった。


『メイガス4、FOX2!』


 更にAAMが発射される。

 今回は先端より少し後ろだが、着実に標的は右へと進行方向を変えつつある。


 何度かこの無線が反復された後、AWACSから通信が入った。


『AWACSから303飛行隊全機へ。良くやってくれた。標的は日本直撃軌道を離脱、山口県沖合へと進路を変更した。君たちの任務はこれで完了だ。お疲れ様。基地への帰還を許可する』




 本当ならば、これで全て終わりだった。他の飛行隊からも次々と軌道離脱の報告が入っていたし、今回は民間人の被害は出ない筈だったのだ。

 しかし、その無線連絡は俺たちが小松基地へと帰還している途中に突然入った。


『こちら西部航空方面隊司令部。近畿、中国、四国地方を飛行中の全航空隊へ告ぐ。緊急事態が発生した。飛翔体の内一つが初期加速で超低高度の匍匐飛行軌道を辿り、捕捉されていなかった事が判明した。当該飛翔体は現在四国東部上空にてなおも西進中。予測では愛媛県ないし高知県の西部に着弾する。本通信が受信できている飛行隊は至急四国へと向かい、飛翔体の軌道変更作業を行え』


 その連絡に俺は驚愕しながらも、無線の発信源にこう伝えなければならなかった。


「こちら第6航空団所属第303飛行隊、現在滋賀県上空だが、燃料の関係で四国まで到達することは不可能。指示を求む」


 既に俺たちの機体の燃料は殆ど残っていない。とてもでは無いが四国に行ける状態では無い。


『西部方面航空方面隊司令部より第303飛行隊、了解した。一度基地に帰投した後基地司令の指示を仰げ』


「303飛行隊了解、一度基地へと帰投する」


 俺は四国に飛翔体が直撃しないか恐れながら、小松基地への航路を辿った。

誤字脱字や文法的におかしな表現の指摘や評価感想お待ちしております。

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