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第四話

ストックに余裕があるので連日更新。読んでくださってありがとうございます。

 ロヴィアさんのおかげでこの世界のことがいろいろと判明した。

 この世界は、天使っぽい人から聞かされていたとおりファンタジーの世界であっているようだ。


 幼いころ物語の中でしか知らなかった世界。


 あと、私がこの世界の人間でないことがバレた。

 バレたというよりか、気づかれたに近い。ロヴィアさんがこの世界のことについて誰でも知っているような、それこそ七歳まで一切他人とかかわらない生活をしていたイクサでも知っているようなことについてそれとなく私に聞いていたみたいだけどまったく気付かなかったし、分からないことも多かった。


 そもそも私が人里離れた森の中にいた時点でかなり怪しまれていたらしいけど、ある一定のラインまでばれてしまえば後は自分自身のことも説明しやすいわけで。

 前世のことから天使っぽい人のことから何もかも全部しゃべっちゃった。

 大体説明し終わったところでロヴィアさんに「まずヤシロは人を疑うことを覚えよう」と説教されてしまった。


 反省。


 現在、私はベッドの上に座って膝の上にイクサを乗せたロヴィアさんと向かい合っている。

 イクサは私と視線を合わせようとはせずに、私の頭の上に載ったひよこにずっと目を向けている。当のひよこは人の頭の上でコックリコックリとお気楽そうだ。このひよこ、意外と大物なのかもしれない。


「ところで、これからどうするんだい?」


 ロヴィアさんが私に質問を投げかける。


「当面のことは特に決まってないですけど・・・・・・」


「じゃあ家に住むといい。私は違う世界の話をもっと聞きたいんだ」


 願ってもいない申し出だった。このままこの世界のことを知らずに、おまけに幼女の体で一人この世界を生きていけるかというとまず無理だろう。


「それに、イクサの友達になって欲しいんだ。これまでも同い年の友達・・・・・・こんな僻地故にどころか他人とであったことすらないからね」


 さっきも声をかけただけで泣かれたしなぁ・・・・・・。


 イクサは、急に自分の名前が出たことにきょとんとした表情で母親の顔を見上げる。

 ほんと、何でこんなところに研究所を立てたんだろう。

 その疑問は私が尋ねる前にロヴィアさんによってすぐに解消された。


「イクサが生まれる前にね、人とのしがらみに嫌気がさしてしまってここに移り住んだんだ。ここから人里までは一ヶ月はかかるし、おまけに外は危険度の高い魔物が闊歩する大森林だから、すごくいい場所だと思ったんだ」


「魔物? 魔物がいるんですか?」


「危険度の高いのが結構な数ね」


 本当によく私生きてたなぁ・・・・・・見つけてくれたイクサに感謝しなきゃ。


「まあ、これからよろしくね」


「こちらこそ、よろしくお願いします」


「ほら、イクサも挨拶しなよ」


「・・・・・・・・・・・・えっと・・・・・・・・・・・・イクサ・・・・・・」


 なにこの生き物、めちゃくちゃ可愛い。

 そんなに目に涙をためて上目遣いで言われたら、私のハートがキュンキュンしちゃうじゃないか。


「八代っていうんだ。よろしくね」


「・・・・・・ぐず・・・・・・・・・・・・ヤシロ?」


「うん。八代だよ」


 そういって私は自分のちっちゃなおててを差し出す。

 イクサは一瞬びくぅっとしたけど、恐る恐る私の手をこれまたちっちゃなおててで掴んでくれた。握手はこの世界も共通みたい。


 私が顔を向けると、イクサは満面の笑顔を私に返してくれた。




 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆




「・・・・・・それ、だめ。こっちのは、いい」


 イクサが私のとったキノコらしき物体を選別する。

 私たちは二人で森の中へ食料を取りに来ていた。


 居候が故の手伝いと、イクサとの親密を深めるためだ。

 始めこそイクサは私から距離をとっていたものの、採集に入り始めると私なんて足元にも及ばないくらいのすごいスピードでキノコらしき物体やら木の実をとり始めた。


 ちなみにキノコらしき物体というのは、見た目はキノコなんだけれどやけに凶暴そうな顔がついていて、下手な取り方をすると噛み付こうとしてくるわけの分からない見た目と生態をしていたから私はそう呼んでいる。私にはアレをキノコと認められない。


「ヤシロ・・・・・・とり方上手・・・・・・毒の無いのを覚えればすぐ取れるようになる」


 採集を始めてからイクサの口数が少しずつ増えてきた。私との会話にも慣れ始めてくれた様でうれしい。


「ぴぃ!」


 なぜかついてきたひよこも、イクサの頭の上に陣取っている。

 居心地がいいのかな? 確かにイクサのふわふわの髪は柔らかそうだ。


「ヤシロ・・・・・・この子名前なに?」


「名前? つけてないよ」


 そういうとイクサの目がちょっとだけ輝いた。


「つけていい? 可愛いやつ」


「いいよ。もともと私に勝手についてきたような子だから」


「じゃあ、ヒヨがいい」


「いい名前だね、ヒヨに決定!」


 私が言うと、イクサも嬉しそうに頬を綻ばせる。ひよこ・・・・・・改めヒヨもイクサの頭の上で嬉しそうにぴぃと鳴いた。


 その様子に私とイクサは目を合わせて、エヘへと笑いあう。


 ふと、近くの茂みで音がした。

 気配を消したような音だ。


「ねえ、イクサ・・・・・・」


 イクサも気づいていたらしく、音のしたほうをじっと見つめている。


 茂みが割れた。


 そこからは、見たことのある巨大なシルエット。

 熊だ。

 私がこの世界に来てすぐのときに遭遇したのとおんなじ種類の熊だ。


 緊張に私の体が硬直する。


「お肉・・・・・・」


 隣で呟きが聞こえた・・・・・・・・・・・・ってお肉?

 私が横を見るよりも早くイクサは動き出していた。


「ロックショット」


 一歩前に踏み出たイクサは、すかさず手のひらを熊に向けた。

 その手から、私の目に追えない速度で何かが射出される。


「ぎゃぅ」


 次の瞬間には小さな悲鳴とともに、大きな音を立てて熊が倒れた。その頭はすでに無く、ちょっとしたグロ画像だ。


「ちょ、今の何!」


「え・・・・・・・・・・・・ロックショット?」」


「そう! たぶんそれ!」


「・・・・・・石?」


「そうじゃなくて、魔法なの?」


「うん・・・・・・・・・・・・便利」


 魔法がある! まさにファンタジーの世界。

 私のテンションはすでに熊のグロ画像が脳内から吹き飛ぶくらいに最高潮へと達していた。


 戻ったらロヴィアさんに教えてもらおう。

 そう思った。




 学園に行くまであともう少し。もうしばらくお待ちください。

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