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第三話

 悩んだ末にもう一話。一話目のあとがき読んだ人ごめんなさい。

 薬のつんとした匂いで目が覚めた。

 そこは何故か柔らかいベッドの上で、私は身体を起こし、首をかしげる。


(ここはどこだろう?)


 辺りを見渡すと、研究室っぽい部屋の中。


「ああ、起きたのかい?」


 誰かの声がして、そちらを向くとそこにはボサボサの髪をした白衣の女性が立っていた。目の下に隈も出来ているけれど、豊満な胸の所為かそれを補って余りあるエロスなオーラを身にまとっている。


「薬が効いているからおきてからもまだしばらくは眠気が続くと思うけど心配しないでね」


「あ、はい。あの・・・・・・ここは?」


「ここ? ああ、私の研究所だよ。君が森の中で寝ていたのを娘が見つけてね、どうしてあんなところに居たんだい?」


 おそらくコーヒーのようなものをすすりながら尋ねる女性。

 途中でハッと気がついたようにコップから顔を上げる。


「ああ、言い忘れてた。自己紹介がまだだったね。私の名前はロヴィアだよ。よろしく」


「私は秋宮八代って言います。よろしくお願いします」


 自分の名前を名乗って初めて、ああ、助かったんだなと安心した。

 森の中で寝ていたということは、たぶんあのまま寝てしまったんだろう。熊とかじゃなくて人に見つけてもらってよかった。


 そこでふと、小さな違和感を覚える。原因はすぐに分かった。

 ロヴィアと名乗る女性が会話の最中やけにメモを取るのだ。


「えーっと・・・・・・何をしているんでしょう?」


「見てのとおり、メモを取っているのさ、アキミヤヤシロ。しかし、聞いたことのない名前だね」


 メモを取っている? 何故?

 今のところは彼女の目的が読めない。助けてもらった恩もあるのでとりあえず正直に答えておく。


「秋宮が家名で、八代が名前です」


「カメイ? 偽の名前のことかい?」


 家名を知らない? この世界には家名がないのだろうか? 急に不安になってくる。つまり、家名を名乗った私は今かなりの不審人物だと思われているであろうことは予想できた。

 ロヴィアさんは興味のあるように聞いてくれていて、疑っているようには見えないが、いかんせん私の少ない人生経験ではたとえ疑われていたとしても見破れる気がしない。


「家の名前のことです。その人がどこの家の人か分かるようにする記号のようなものです」


「へー、そんなものがあるんだ」


「大体の人は家名を持つと思います。私の場合は秋宮が家名で八代が私自身の名前です」


 ふーん。と納得する様子を見せるロヴィアさん。


「じゃあヤシロと呼べばいいのかな? ふむ、興味深い」


 うんうんと満足そうに頷くロヴィアさん。

 私も言葉が伝わったこと、人に会えたことで安心した。

 ぐ~。


「おなか、すいてるのかい? そうだ、娘に何か持ってこさせよう」


「お世話になります。ロヴィアさん」


「なに、ヤシロにはもっと聞きたいことがいっぱい出来たからね。それまではうちに居てもらいたいんだよ」


 うん。そこはかとなく不安を感じさせる回答をありがとうございます。

 まあでも、騙されている雰囲気もないし、行く当ても無いのでしばらくお世話になってしまおうかと考えていたりもする。

 もう森の中に一人でほっぽり出されるのは御免だ。


「おーい。イクサー!」


 ロヴィアさんが呼ぶと、今の私と同じくらいの年齢に見える人形のような少女がどこからか駆け寄ってきた。

 肩まで伸ばしたふわふわカールがかっているブロンドの癖毛が可愛らしい。フリルのついた服がお人形さんっぽさを増幅させている。


「・・・・・・・・・・・・?」


「ぴぃ!」


 あ! あの鳥!

 ひよこは女の子の頭の上に乗って興味深々にいろんなところを見ている。ついてきたのか。


「この小鳥は君のかい? うちの娘が気に入っちゃったらしくてね。どうせならヤシロも歳の近いもの同士イクサと仲良くして欲しい」


「ぴぃ!」


 ひよこは少女の頭の上から飛び降りて、私のほうへと向かってくると、私の寝ているベッドの上にぴょんと飛び乗った。


「・・・・・・・・・・・・ママ?」


「ほら、自己紹介しなよ」


「(ふるふる)」


 人見知りなのかな?

 ロヴィアさんの後ろに隠れる少女。今にも泣きそうだ。こういうときは、私から声をかけるべきなのだろうか?

 まよっていてもしょうがない。


「私は秋宮八代っていうんだ。よろしくね」


「・・・・・・・・・・・・う」


「う?」


「うわぁぁぁぁぁぁん!」


「ええぇぇぇぇ?」


 ロヴィアさんが少女を慰めながら、私に困ったような顔を向ける。


「ごめんね。この子、他人と会うのヤシロが初めてだから、緊張してるみたいでね。名前はイクサっていうんだ。六歳で、君と同じくらいの年齢だ。仲良くしてあげて欲しい」


 コミュ力ゼロの私には人見知りの子はハードル高いのですが・・・・・・。


 そんなことを言えるはずもなく、私はイクサが泣き止むのをただ見守るだけだった。


 ところで、私はご飯をいつ食べられるのでしょうか?

 人の家にいて言うのもアレなので言わないけど、おなかすいた・・・・・・。




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