奴隷から部下へ
皇帝との面談を終えた私は屋敷に戻り、散々保留にしていた屋敷に来た十二人の奴隷たちとの面談を行うことにした。色々疲れて酒に委ねるつもりだったのだが、落ち着いてきたのと、何でもかんでも後回しにしてしまう悪癖を思い出し、今日すべてを執り行うことにした。
皇帝から依頼された仕事である反乱軍との戦争に関しては彼らを参戦させるのはあまり乗り気ではないが、もし何かあった時や、それ以降の戦力として見てみたら今のうちに実力やどのような性格なのかを見定めておくのは良いことだろう。
それにいつまでも奴隷としての意識を持ち続けて欲しくはない。今は私の利己的な考えにはなってしまうのだろう。しかし、彼らの言う祖先も今のあり方にならないように帝国と争っていたはずだ。いつか納得して、差別をなくすためにも今頑張らなければ。
屋敷に戻ってすぐに心配そうな表情を浮かべるマリーが話しかけてきたが、大丈夫ということと、獅子獣人以外の人達を順番に読んでくるように伝えておいた。
なので私は今、テーブルを挟んで一対一で対話のできる客室で待っているところだ。客間といてもでかさなどにも色々種類があるわけで、今回は個人の面談向けに小さい個室を選んでみた。きっと圧迫感も少ないことだろう。
そんなことを考えていたら客間のドアがノックされたので、入室を許可した。
「失礼する」
低く、武人のような落ち着き払った男性の声が聞こえてきたと同時にドアが開かれた。リザードマンだ。以前見た時は上裸だったのだが、帝国式の黒で統一された軍服を身に纏っている。しかし、頑丈な鱗と筋肉のせいで、かなりピッチピチだ。もう少しサイズが小さいものを着ていたらとっくのとうにはち切れていただろう。
「拙者はリザードマン。特に名はありませぬ。頭を使うようなことは苦手ではありますが、武には自信がある。これから先の危険や戦闘の際にはぜひお使いくだされ。我が主よ」
口調なども含めてかなり武人肌な男なのは理解できた。しかし疑問なのはかなり好意的に私に接してきてくれていそうに感じるところだ。自意識過剰であれば悲しいことだが、普通に考えてみれば、まだ一度しかしっかりと顔合わせしたこともなく、なおかつ対話などしていない。でもわずかながらに信頼しているような声色を感じた。
「色々聞きたいこともあるのだが、もし今後君の家族友人や君が気に入らない戦闘が起きてしまった場合君はどうする?私からは指示は出すが、君の意見を尊重しよう」
彼は食い気味に返答した。
「殺します。戦闘に善悪の呵責もございません。戦闘に発展してしまった場合はそれもまた定めというモノ。せいぜい負けてしまった方が悪いと言った者でしょう」
その後は彼に当たり障りのない質問を複数投げかけた。忠誠心の塊のような人物ということは理解できた。しかし、軍服をビリビリに破いてしまうのはやめて欲しい。聞いたら五着目の支給だそうだ。彼にはそのうち特別な軍服かなんかを渡そう。
次は件のヒトガタだ。他の奴隷たちに比べても年齢が幼い少年らしい。なぜ彼が選ばれて来たのかも気になるところだ。
「あ、あの僕はヒトガタです。特にすごい何かが出来るというのもないんですけど、勉強とか出来るので読み書きにはほんのちょっとだけ自信があります。よ、よろしくお願いしみゃす!」
黒い服を着て眼帯を付けた少年が緊張した声色で自己紹介をしてくれた。噛んでいたりしたことも含めて可愛い少年だ。
ヒトガタは生まれた時、人間に似たような姿で生まれる。ただし生まれた時は目が発達していないので、その時に眼帯を着けて、発達しても何も見えないようにしておくそうだ。
「少し気になっていたんだが、君は何故長老たちに選ばれてここに来ることになったんだ?まだ幼い君を帝国の貴族である私に預けれるのは危険なことであるとは思うのだが」
ノーマンが尋ねるとヒトガタの少年は少し悲しい雰囲気を纏いながら語る。
「僕の一族は僕を残して全滅しました。帝国の貴族の策略によってです。もうこの世に残っているヒトガタは僕と長老さんしかいません。長く生きている長老さんが言っていたので間違えはないと思います。なので、少しでも帝国で生き残って最後まで足掻けるだけ足掻こうと長老さんと約束したんです。あっち側かこっち側かではなくどちらにも誰かしらいれば生き残る道はあるって」
この少年はなんて強い思いでこの場に居るのだろうか。正直見誤っていた。長く続く亜人差別の歴史の中にこういった人間もいるだろうと思ってはいたが、いざ目の当たりにすると心に来る。それに今自分はその少年とヒトガタの命運を握っている人物の一人であるということを自覚しなければならない。
次の面談相手はエルフだ。エルフと言ってもこの間はちょっとした言い合いをしてしまったからなあ。少しばかり気まずいのだが。おっと、ノックの音が聞こえたからどうやら来たようだな。
「失礼する」
エルフの女性の声が聞こえて入室して来たかと思っていたら、他のハイエルフとダークエルフの二人も同時に入室して来た。
「ん?何故二人も入ってきたんだ?次はエルフとはマリーに話はしておいたが個々でやるつもりだったのだが」
そう聞くとダークエルフの女性が口を開いた。
「この子が一緒に来てくれって言うのよ。この前あんな口を利いたものだから、一対一は気まずいって言ってきて」
「ちょっと言わないないでよ!」
説明をしているダークエルフに赤面のエルフが羽交い絞めにしようとしている。それを見かねたハイエルフが止めに入りながら。
「まあまあ、落ち着いてよ。もう。実際ノーマン様もお疲れのところ一人一人と面談するよりかはある程度の種族でまとまってご挨拶をした方が良いって話にまとまったじゃない。貴方の発言のおかげでね。もう既に何をメインの仕事に出来るかって話も獣人の彼女がほぼほぼ言ってくれたみたいだしね」
なんか構図として凄いことになっているところではあったが、マリーの配慮のおかげで面談する時間が少し短くなりそうだ。後で礼を言っておこう。
少し落ち着いたところでソファーに座ってもらい面談を始めることにした。
「まずはワタクシからご挨拶をしましょう。ハイエルフです。名前はありませんが13番と呼ばれていました。戦闘とかに関しては攻撃よりかは回復魔法とかの方が得意です」
とてもお淑やかな雰囲気を放つハイエルフが先に名乗りをあげてくれた。回復魔法が得意なのは嬉しい誤算だ。人間族にとって回復魔法は中々習得が難しい魔法とされている。他の亜人種の中でも特定の一族とかでないとまともに回復魔法を習得しているものは少ないという。貴重な人材なのは間違えないだろう。
「次は俺だな。見ての通りダークエルフだ!近接戦闘も出来るし魔法を使った中距離戦闘も可能だ!読み書きや計算とかには全く自信はないが戦闘面なら任せてくれ!」
女性なのだが、一人称が俺なのか。種族的や一族での通例?のようなものもあるのかもしれないな。近距離と中距離戦闘が可能というのは中々の者だと思う。どのように平均的に鍛えようにもそのうち得て不得手を理解して何かしらに偏ってしまうことも多いながら、このダークエルフはそんなものはないという。
「私最が最後なのか!ま、まあいい。私はエルフの長老の娘。アンドレイアだ。回復魔法は使いこなせていないが他のことならば大抵できる。特に遠距離戦闘が得意だ。そ、それでそのだな。あの、えーと」
普通に凄いな。それに今までの子たちと違って名前がある上で長老の娘なのか!だとしたら父親はだれなのだろうか。にしても急に挙動不審になり始めたがいったいどうしたのだろうか。
「その、すまなかった!以前は何も知らない偽善者などと言ってしまって。奥さんの話もマリー様から伺った。死に方を聞いたと言っていたが、あれは自身の妻の心が折れていく様のことを言っていたんだな。だが、だからと言ってやろうとしていることはかなり難しいことだ。だけど前に言った通り我々は祖先を想う。これまでとこれからを。だからどうかよろしくお願いしたい。主人」
どうやら彼女は以前私と軽い言い合いのような形になったものを気にしていたようだ。知らなかったこともあるだろうし、仕方がないだろう。私も彼女たちのことを知らな過ぎて下手な地雷などいくらでも踏んでしまいそうだし。それに彼女の言うように難しいことではあるだろうしな。
「いや、なにも間違ったことは言ってないとも。私は本来であれば、奴隷たちの運命を背負うとか貴族の義務を果たすとかは考えていなかったのだが、復讐を果たすためだけに進んできたが気づいたらこのありさまさ。しかし一度背負うと決めた以上は背負うだけの話だ。これからもよろしくな」
打ち解けた私たちはその後軽い雑談を行った後解散した。思った以上にエルフたちとの川が楽しく長引いてしまったため他の奴隷たちはまた後日となってしまった。やり切るべきことは最後までやり切らないと気が済まないタイプだが、さすがに疲れては来たなあ。
お久しぶりです。いやー一か月くらい投稿していなくてすみませんでした。
大学生なので夏休みを満喫しながら酒と煙草とパチンコと最近始めたミラティブの配信に追われてまして……。いや本当にすみません。ここから怠惰な私は再起動して投稿再開です。
それではまた次の拷問で。




