皇帝からの呼び出し
side???
「僕様が最強だー!!」
目の前の大男を下した少年ことアーロンは勝利の雄たけびを上げる。周りからは歓声が贈られていた。
神が消えてからというものの、人間は自分たちの領域の中での支配権を主張しあい闘争を繰り返してきた。私とアーロンが住んでいた集落にも自らを王と主張する人間とそれに追従する集団が何団体かやってきていた。
最初こそ話し合いで済まそうと集落でまとめ役をやっていた者が対応していたのだが、決闘の末に殺されてしまった。狩りしかしてこなかった人間が殺し合いを始めるようになってしまった最初の出来事だ。範囲を決めてその周りに人を配置する。その中で執り行われる殺し合いだ。そののちに帝国の正式な血統方法に進化していったわけではあるのだが。
「よく、も!よくもおじいさんを殺したな!次は僕様の番だ!」
私が止めていた故に我慢をしていたアーロンが知り合いが殺されたことをみて、決闘に参加してしまった。普段は纏っていない鎧を出現させた状態でだ。私はアーロンの強さを狩りで認識していたが、人間相手でどこまで通用するのか分からなかったため、殺されないようにと止めていたのだったが、最初から止めてなければおじいさんは生きていたのだろう。
結果としては圧勝だった。
アーロンは一撃で相手を場外に突き出した。ものすごい勢いで、取り囲んでいた相手の集団の人間ごとだ。
吹き飛ばされた彼らは諸共に近くの森の木々に叩きつけられ、肉体の様子が一切分からなくなるほどにぐちゃぐちゃになってしまった。生き残った人間たちはアーロンに服従していった。
その夜アーロンは私に泣きついてきた。
「ごめんな。おじいさんも守れなかったし、同じ人間を殺してしまった。お前も僕様が怖いだろ?」
「いいや、違うよアーロン。僕はアーロンみたいに強くないから、感謝と同時に悔しくなっちゃっだけあんだ。僕も強かったら君を一人にさせないのに」
「そうか。ありがとう。僕様はお前が居てくれるだけで嬉しい!今なら何でも出来る気がするぞ!どうだ!」
元気になったアーロンは鎧を着てポーズを取り、私を励ましてくれた。全く持ってどっちが励まされに来て励まされたのか分からなかった。
そこからは何度も、何人も来る王を自称し、戦闘行為を行ってくる者達をアーロンが倒し、服従させていった。私も彼の役に立ちたいと思い、集団の中で、制度などを作っていくようになった。幼いながらにそんなことが出来たのだから、きっと私は政治に対する才能があったのだろう。そうしている中でも、いつかアーロンに追いつけるようになるためにずっと体を鍛えていた。
そんなことを繰り返していき、ついに我々に対して敵対する者が居なくなった。神が消えてからも消えない虹色の輝きを放ち続ける領域の壁の中で、我々は頂点に立ったのだ。
「シデーロス。ついに僕様は皆を守れるようになったんだな。これでもう敵は居ないみたいだし!」
「全く。この前成人したからティモーロスって呼ぶようにって言っただろう?アーロン。だが、まあそうだな。確かにもう脅威はいない。今度こそみんなで楽しく暮らしていこうじゃないか。なにせ一生一緒だもんな」
「そうだな!僕様たちは一生一緒だ!にしてもなんでティモーロスは成長しているのに僕様は全然変わらないんだ?」
私は身長も伸び、声変わりもして順調に育っていたものの、アーロンの肉体も声も何もかも、昔と何の変化もなかったのだ。
「さあな。まあいいじゃないか。それよりも今日は建国式だぞ?緊張しないのか?」
「ふ、ふん!僕様がき、緊張なんかす、するわけないだろぉ!?」
ものすごい上擦った声で彼はそう答えた。私は面白くなって爆笑した。
「ものすごく緊張しているじゃないか!その様子だと口上も上手くはいかなそうだな。仕方ない!私も建国宣言一緒にするか!宰相としての最初の仕事だな。今まで通り二人で楽しんでこようじゃないか!」
そうして私たちは二人で建国宣言を行った。私と彼は笑いあってちょっとした緊張の中でも笑いに包まれた幸せな瞬間を楽しんだ。
そうしてヴァンデッタ帝国は建国された。あの時に話が終わっていればどれだけよかったのだろうか。
sideノーマン
空になった見世物小屋にて宰相の部下が起きるまで待った。どうやら催眠薬か何かで眠らされていたらしく、特に外傷や命に別条のなく、後遺症も見当たらない様子でひとまずは安心した。
その場にて脱走した奴隷たちを確認してみたところ、亜人は全員逃げ出していたが、それ以外の人間や魔物も含むた種族も何体か逃げ出していた様子だった。起きてから状況を把握した宰相の部下にお礼と謝罪をされたが、彼らではなく私の責任にはなるため気にするなとだけ言っておいた。
とりあえずは屋敷に戻ってパルダリアが残してくれた帝国の手記を読むことにしよう。彼女が言っていた歴史の矛盾も気になるが、皇帝の弱点を見つけるための大きなヒントになってくるのかもしれない。
そう考えた私は屋敷まで戻り書類仕事を任せているマリーが居る書斎まで戻った。するとなんということだろうか、あんなに溜まりに溜まっていた書類の山が完全に無くなっている。
書斎に長机の左右にソファーにもたれかかって休憩している獅子獣人と、ヒトガタ、ハイエルフに天使と悪魔の奴隷たちが居た。部屋の窓際にある私の机の椅子にはマリーが座っており、巨人族によって肩もみが行われている。マリーは口から涎まで垂れてだらしなさそうだ。いや、ここまでに私がさせてしまったのだな。可哀想に。
私に気づいた奴隷たちが一斉に立ち上がり姿勢を正した。マリーの肩もみを行っていた巨人族も、手を止めて姿勢を正した。すると肩もみが止まったことで正常な意識を取り戻したマリーがこちらに気づき、涎を拭いて立ち上がった。
「見ろ。ノーマン。我々は勝ち抜いたのだ。今まで生きている中でこのような解放感と達成感はない。フフフ今なら何でもやれる気がするぞ!」
マリーは結局壊れてしまっていた。書類仕事が終わったことが人生一の解放感と達成感とか、どれだけ人生で何かを成し遂げた瞬間がなかったのだろうか。少しばかり憐れに思える。しかしながら、この場に居る奴隷たちは書類仕事で充分に役に立ったようだった。
「それなら私も見世物小屋に足を運んだ甲斐があったようだな。皆も仕事のほどご苦労だった。あ、そうだちょうどいい。このままの勢いで面談を『バタンッ!』ん?」
私がこの場に居る奴隷たちにちょうどいいから面談を行おうと提案しようとしたときに書斎の扉がものすごい勢いで開かれた。そこに居たのは城に勤務している騎士の一人だった。
「突然の訪問大変申し訳ございません!急ぎの用で少々ばかり強引に入らせていただいた!」
「い、一体何があったんだい?」
「急ぎノーマン子爵に城までご同行願いたい!現人神であらせられる皇帝閣下がお呼び出しになられました!」
どうやら誰かが私を落ち着かせまいと呪っているようだ……。
♢
騎士に着いていき玉座の間の前まで来た。
皇帝と対面するのは二回目だ。以前は宰相閣下に連れられて、拷問官になった時だった。戦うことしか能がないと考えていたが、あの鋭い目は忘れられない。あの子供がどこまで思考して、どこまで考えていないのかが全く読めない。
拷問官に指名された際に私は帝国に貴族として認められたのだが、その時は
「えー。どうせ一代限りの貴族なのだろう?それに子爵だぞ?家名考えるの面倒くさい」
などと言われてしまっているため、私にはまだ家名はなく、ただのノーマンとしか名乗る名を持たないのだ。そんな自由奔放な皇帝が宰相が遠出している間に私に一体何の用なのだろうか。なんにせよ警戒しておくに限る。
そんな風に考えていたら、玉座の間の扉が開いた。レッドカーペットが部屋の一番奥の真ん中にある玉座にまで伸びている。周りの壁には豪華な装飾品であふれている。全てが黄金で作られており、権力と富の象徴となっている。部屋の中では他の貴族たちも一部おり、壁際でこちらを見定めながら立っている。
そして何より、正面に見える玉座には皇帝が座っている。金髪で黒い瞳孔。体中に黄金の鎧を身に纏った、十代前半程度の幼い体つき。だが、そこから放たれる威圧感は自分が生きてきた中でも一番の恐ろしさを放っている。私は急ぎ、臣下の礼をとり膝を立て、伏せた。
「やあやあノーマン。元気そうだね。早速だけどさ。ティモーロスが今帝国離れちゃってるからさあ。君にお仕事をして欲しいんだよ」
皇帝は威圧感の一切を解かずにノーマンに話しかけ続ける。返事も含めて彼の言葉を遮った時には誰彼構わず物理的に首が飛ぶだろう。
「聞いた話だと反乱軍が動き出すらしいじゃないかあ。帝国の人間に手を出すなんて僕様が許さない!ってところなんだけど。今回はノーマン君、目の前でその首魁を取り逃がしてしまったそうじゃあない。それも亜人をだ。人を殺す下等生物をだ。あ、別に君に怒っているわけじゃないよ。ここ最近の君は上手くやっているってティモーロスから聞いているからねえ」
皇帝は威圧感を少しずつ緩めながらノーマンに近づいていく。
「信賞必罰。僕様がここ最近好きで使っている言葉なんだ!響きがかっこいい。そこでだ。最近の君の頑張りに際して今回は見逃してあげる。それにそれでも足りないくらいの功績があるはずだから、貴族の格上げだ!君は今この瞬間から伯爵となるといい!それに別に一代限りではないぞ」
楽しそうな表情で皇帝は語り掛ける。その時、壁際に居る貴族の一人が声を上げた。
「宰相閣下がいらっしゃらない中厳しいのでは?先日の空いた伯爵の二つの枠も、私ともう一人が埋まってしまったため、管理関係などを考えて一度他の褒美でも」
それがその貴族の最後の言葉だった。
「だったら君が枠を開ければいいだろう」
皇帝がそう言った次の瞬間その貴族は何かによって潰れて死んだ。目には見えない圧力なような何かで死んでしまったのだ。
何よりも恐ろしいのはその後だ。潰されて血液だけとなった貴族だったが、その血液がレッドカーペットに勝手に吸い込まれて行っている。
「たまたま空いてるところに入れただけの人間だし、別に誰であろうとも僕様が気にする必要はない。それじゃあノーマン。家名は今度考えておくから、改めて仕事の話をしよう。反乱軍を鎮圧してきて。そして首魁を私の目の前で拷問しておくれ」
私は余計なことを口走る気になどなれずにその場で頷いた。
「お、良かったあ。あ、そうそう。拷問の時返り血とか、玉座の間が汚れるとか気にしなくていいからね。さっきのカーペットが血液を全部吸い取っていってくれるからさ。あのカーペットも元々は金色だったんだけど、亜人の血で赤くなっちゃったんだよねえ」
その後も皇帝から玉座の間の自慢話を散々聞かせられてこの場は終わった。全く持って生きている心地がしなかった。宰相と一緒に来た時とは一切違い、明るい雰囲気などは感じなかった。だが、能力の一端は垣間見ることは出来た。それだけでも進歩だろう。
面談は、明日でいいや。今日はもう酒をあおって寝よう。
ショタ皇帝「べ、別に宰相居なくて寂しくてイライラしている訳じゃないんだからね!」
ただの拷問作品で終わらせない覚悟を決めました!
色んな展開ぶち込みまくるのでよろしくお願いいたします!
それではまた次の拷問で




