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機械仕掛けのバーディー  作者: 陸奥守
第20話 オペレーション・トゥムレイダー
332/358

過去を書き換える努力の果て

~承前




 玉座の間から城の屋上へと向かう道すがら、バードはずっと思い出していた。

 エディが送って来たビデオレターの内容を……だ。


 何故自分がビギンズなのか。ビギンズが何故シリウスの救世主なのか。

 エディはビデオの中で繰り返し言っていた。



 ――――自分は呪われた存在だ……



 ……と。


 エディの魂はこの惑星に囚われ、抜け出せないループの中にいるんだとか。

 ただ、そこらの安っぽいSF小説にある様な時間のループではない。

 人類がニューホライズンと名付けた惑星に関わって何度も生を受けたそうだ。


 ただそれは、洋の東西や宗教や人種を問わず登場する、人類不変の物語。

 様々な文明の中で紡がれた神話の中にだって出てくるものでしか無い。

 バードにしてみれば、仏教説話で何度も聞いた生まれ変わりの話だ。


 『転生者』


 エディは前世の記憶を持ったまま生まれて来たという。



 ――――物心ついた時に聞かされたのだよ

 ――――産まれてすぐに発した言葉は『またか』だったとね

 ――――この星の重力を振りきれない存在なのさ



 エディを産んだ存在が誰かはまだ教えてくれない。

 しかし、エディが何者なのかはビデオの中でついにカミングアウトした。

 そしてその中で、エディは全員に向け静かに言った。



 ――――全ての元凶を断つ支度がやっと出来た

 ――――諸君らは甚だ面白くないだろう。だがあえて言う

 ――――この物語を終わらせる手伝いをしてくれ



 それが何を意味するのかはわからない。しかし、何となく察しがついた。

 エディの『今回の人生』が終わろうとしてるのだ。


 何かまた異なる形でエディはこの惑星に生まれてくる。

 その時にまた何かをするのだろうし、きっとそうなる筈。


 何の根拠もない話だが、バードは妙な確信を持ってそう考えていた。

 ただ、思考を他所にBチームのメンツは何処かソワソワしているのも事実。

 ヘルメットの中で少しばかり苦笑したバードは、黙って聞き耳を立てた。


「なにと遭遇するんだろうな」


 新しい玩具を前にワクワクを押さえられない様な姿のライアン。

 その隣に居るロックはS-16のグリップを握りなおして言った。


「少しは楽しませて欲しいもんだ」


 ウォーモンガー。或いは戦闘中毒。

 そんなふたりを見つつ、バードはバイザーを開け近くにいたアナを見た。

 ヘルメット越しだがバードの視線に気付いた彼女はバイザーだけを開けた。

 瞬間的に赤外が繋がり、こっそり内緒話が始まった。


【なにと遭遇するんでしょうか】


 アナが零した不安は、つい先ほど聞いたエディの一言だ。



 ――――はっきり言う

 ――――これから人智を越えた存在と戦闘する



 言葉だけを聞けば、なんとも荒唐無稽な話しに聞こえるだろう。

 純粋な科学の申し子として存在するサイボーグ中隊の面々にとっては……だ。


 極限まで発達した科学は魔法と見分けが付かないと言う。

 事実として、Bチームの面々は不気味の谷を飛び越えたサイボーグだ。


 人類の科学は一般人の理解を通り越し、普通の人間と見分けが付かない。

 そんなBチームの面々だって、もはや人智を越えた存在なのだ。



 ――――その為に50年掛けてサイボーグ適性の高い者を集めた

 ――――生身の兵士じゃ太刀打ち出来ないンだよ



 エディがはっきり言い切った言葉。

 つまりそれは、自分達が選ばれたと言う優越感の裏側にあるものだ。



 ――――だが何も心配ない

 ――――君らなら全く問題無い



 エディの都合の為に体良く書き換えられた、自分自身の運命かも知れない。

 本当は何らかの別ルートがあって、人間を辞める必要がなかったかも知れない。


 僅かな希望や可能性は、時に真の絶望をもたらす。

 パンドラの箱から最後に出てきた魔物の正体だ。



 ――――ここで、この戦闘で全てを終わらせる

 ――――シリウスに残る絶望の種を片付けるのだ



 ……その為に、こんな姿になってこんな所まで来た。

 思えば遠くに来たもんだ……と、バードは率直に思った。

 鼓動を失った胸の奥底がチリチリと疼いた。


【遭遇すればわかるよ。今から怯えてたって良い事無いしね】


 強がりと言えば強がりだろう。

 だが、幾戦の経験から導き出される無常観がバードをリラックスさせた。


 肩に力を入れっぱなしではダメなのだ。

 時には緩く軽く、それでいてテンションを保っていなければならない。


【ですが、閣下の言葉を思えば……】


 絶対碌な事じゃないですよ?

 そう言いたい感情をグッと押し殺し、アナは冷静な言葉を心掛けた。


 ややもすれば恐怖に叫びたいくらいなのだ。

 AI染みた思考回路の彼女だが、その精神に感情が影響している。

 人間らしい反応と言う意味では微笑ましいのだろうが……


【エディは全部知ってるんだよ。解っててやってると思う。だから心配ない】


 最大限良く言えば、それは無私の信頼だろう。

 ただしこの場合は悪鬼羅刹の仕打ちなどお見通しだというべき部分だが。


 様々な感情がジェットコースターのように駆け巡るなか、不意に声が聞こえた。

 そんな疑念や猜疑心と言ったものを塗りつぶすようにエディが切り出した。


 あまりにも荒唐無稽な、エイダンマーキュリーという人物の前世の記憶。

 それを知った後ならば言葉の意味も違って聞こえてくるというもの。

 バードは僅かに首を動かし、視界の中にエディを捉えた。

 進路を見据えるエディの横顔は、清々しいまでに禍々しい凶相だった。


「世界を変えたいと願った者は、全てを犠牲にせねば成らない」


 エディは外連味無く遠慮も無く、サラっとそう言いきった。

 そこに存在するのは、全てを背負ってでも前進しようとする意志だ。


「如何なる犠牲も省みず、ただただ愚直に前進する意思こそが必要なのだ」


 我が王……と、そう呼ばれる事の多いエディの中身。

 それこそ、いまバードの目の前でエディと並んで歩くコボルドの王だ。


「この時代、私の妻だった女は全てを背負い込んで大地奥深くへと沈んだ。この世界を呪う存在と融合し、この惑星が持つ力を使って少しずつ無毒化する為に」


 エディが介入する前、あのコボルドの王が何をしたのかをエディは語り始めた。

 つまりそれは、エディが犯した失敗の全て。

 それが原因でシリウスに入植した者達が苦しんでいるのだ


「その結果、シリウスの大地は、このニューホライズンの大地は絶望的に痩せ衰えてしまっているのだ。地球と変わらぬ量の施肥をしたところで、農産物が実らぬ程に痩せていて、しかもそれが改善しない。砂漠に水を撒くが如しだ」


 話を要約し過ぎるのは軍人の常。

 バードはまだまだ聞きたい事があった。


 ビデオレターで語られたのは、エディの存在に対する疑義の解答だ。

 いまエディが語っているのはこの戦闘の意義と目的。


 しかし、それを実行するには時間が足らなすぎた。

 最後の階段を上って屋上に出た時、目の前にソレが居た。


「さぁ、出会ったぞ。お前に会うために、時代も世界も飛び越えて来たんだ」


 エディが発したその言葉を聞いた時、バードは確信した。

 これはシミュレーター上で繰り広げられている現実の戦闘だ!と。

 しかし、そんな確信を共有する筈の男たちはと言うと……


「……どんな趣味したらあのデザインになるんだ」


 ジャクソンが吐き捨てる様に言ったそれは、空中に浮かぶなにかだ。

 生理的に嫌悪感を持つデザインで、もはや生物かどうかも怪しいレベルだ。


「あの物体に意志があるなら言ってやりてぇ 悪趣味だってよ」


 ペイトンもそう言う醜悪な姿。

 腐った肉の塊に大量の蛆が集っている様な状態だ。

 そしてその蛆は夥しい量の腕で、その掌に眼が付いている。


「……ヘカトンケイルだな」


 テッド大佐が渋い声音でそう言った。

 百眼百手のバケモノ。それこそがヘカトンケイルだ。


「そうだ。ヘカトンケイルだ。ヘカトンケイルはクロノス率いるティーターン族との戦いに参加し、あの腕で1度に大量の大岩を投げ付け、ゼウスらを支援したと言う神話がある。だが、ある意味でその神話は実話なんだよ」


 エディは唐突にそう切り出し、空中遥かを指さした。


「その大岩は山の様な巨大さで着弾の衝撃は一回一回が大震災級だという。そんな大岩の攻撃を休み無く続け、膠着状態に陥っていた戦況を変えたと言う。まるで衛星軌道上からの艦砲射撃だな。それを始末する為に諸君らが必要なのだ」


 エディは満面の笑みを浮かべて続けた。

 その笑みは傲岸な支配者そのものであり、その姿は絶対的な支配者だった。


「S-16では歯が立たない。ここまで使わなかったC-31の出番だ。その為に心血を注いでつくらせたのだからな。役に立ってもらわねば困る」


 エディがそう言った時、テッド大佐は『まいったなぁ』と言わんばかりだ。

 両手を左右に広げ、アンタの差配の一部か!と呆れたようにも見える。



 ――――あぁ、そう言う事か……



 バードは何となくその内側を察した。

 つまり、ここまで時間が掛かったとかつてエディが言った言葉を理解したのだ。


 作戦が進まないとかそんな意味じゃない。必要な兵器が実用化してない。

 その為に戦闘を長引かせたり、或いは技術開発の為に必要な犠牲を積み重ねた。

 深謀遠慮と言うにはあまりにも手の込んだやり方に眩暈すら覚える。


 しかし、同時に一つ気が付いた事がある。

 エディはあのヘカトンケイルを倒す為だけに自分の人生すら犠牲にした。

 それも一度や二度ではなく、幾度も生まれ変わって来て積み重ねたのだろう。



 ――――さてっ!



 背中のマウントにS-16を預け、同時にC-31を持った。

 手首部分の給電ソケットが自動接続され、加速器がキンと音を立てた。


「特に狙う必要はない。とにかく撃て。撃って当てればいい。あの化け物を構成する物質を原子レベルに分解するんだ。その為に荷電粒子砲が必要なんだ」


 シミュレーター上で繰り広げられる現実の戦闘。

 それが何かと問われれば、バードは一言『解らない』と応えるだろう。


 だが、現実に両手の中でC-31が唸りをあげている。

 改良され驚異の耐久性を実現した加速器が荷電粒子を吐き出している。


 その眩い閃光が放たれる度、彼方に居る化け物が削れて行く。

 何者かは理解しがたい存在がパッパと霧散していくのだ。



 ――――削り取ってるよう……



 そう。それはまるで紙やすりに削られるかのようだ。

 閃光が着弾した辺りの物質が分子間引力を失って空に溶けていく。


 電荷による効果なのだろうけど、そのメカニズムは理解出来ない。

 しかし、いま目の前で起きている事は間違いなく現実だとバードは思った。



     ――――これは如何なる攻撃なのだ?



 唐突に日本語が聞こえ、バードの意識が手元に戻って来た。

 あのコボルドの王がエディに訊ねたのだ。


 魔法のような攻撃で化け物が削り取られている。

 そのシーンを見れば不思議に思うのだろう。


「あれは蒸発してるのだよ。湯を沸かせば水は沸き立ち煙に消えるだろ? さて、次の手立てだ。ここまでは予想通り」


 エディは言葉の途中で少し間を開けてそう言った。

 その直後に英語へと言葉を切り替え指示を飛ばす。

 こうも柔軟に言葉を切り替えられてはバードも面食らうしかない


「そろそろ良いだろう! 次は機体に装備された50口径だ。温存しておいた理由はこれさ! 喰らわせろ!」


 エディの声が弾んでいる。猛烈な勢いで銃撃された化け物は明らかに縮小した。

 そこに着弾する12.7ミリ弾は電磁加速されて音速の5倍強でぶち当たる。


 物体の重量が同じなら速度が重要になるのはニュートンの運動方程式そのもの。

 S-16とは異なる次元まで加速された弾体が化け物を物理的に削った。


「こりゃ凶悪だ」


 ぼそりと呟いたビルはそれ以上の事を言わなかった。

 ただ、なぜそれをビルが言ったのか、バードはすぐに理解した。


 50口径マシンガンをこよなく愛したスミスなら、きっと喜んだだろう。

 激しい衝撃をまき散らしつつ、次々と砕けていく化け物の身体が降り注ぐ。

 それを見ていたコボルドの王は呆れたような表情になった。


「簡単だよ。ル・ガル国軍の銃弾を放つ火薬と一緒さ」


 エディは再び日本語で語りかけた。

 それを聞いたイヌの王はエディを見て言った。



     ――――火薬と同じ?



「あぁ。あのヒルダに当たってめり込んで、そこで爆発する」


 エディは明確にヒルダと呼んだ。あの化け物はヒルダと言うらしい。

 そしてエディの説明通り化け物の本体と言うべき部分が続々と削られていた。

 肉が裂け、その破片は飛び散り、傷口からジクジクと赤い血を流している。


 痛みと苦しみの辛さにヒルダと呼んだ化け物が蠢いている。

 痛覚を刺激するのだから、苦しまない方がおかしい。

 そんな時、エディは唐突にバードを呼んだ。


「バーディー。君の機体にはレールガンが装備されてる筈だ」


 思わず『え?』と聞き返したバード。出撃前に聞かなかった情報だ。

 そしてすぐ気が付いた。コネロはその話をしなかったのではなく知らなかった。

 つまり……


「えっと…… あぁ、ありました!」


 そう。コネロが仕立ててくれたオートクチュールの機体には付いて無かった。

 しかし、ここに突入した機体にはそれが付いている。つまり……



 ――――フフフ……



 バードは何処か楽しくなっていた。

 夢の中なら人間は人魚にもピーターパンにもなれるのだ。

 そして今、バードはその機体に凶悪な砲を装備していた。


「耳を塞げカリオン。この世界では理解出来ない事象が起きる」


 エディはそう叫んだあと、ラジオの中で『やれ!』と叫んだ。

 バードは左手首を緩めて外した。左手がくるりとめくれ上がり砲口が顔を出す。



 ――――えっと……

 ――――はぁ?

 ――――40ミリレールガン??



 G35系列の機体に装備されていたレールガンは12.7ミリだ。

 それをはるかに越える大口径弾体を打ち出すレールガンが火を噴いた。



 ――――凄い!



 バードが驚くのも無理はない。

 軽い衝撃波と共に腕から飛び出した弾体は残像すら見えない代物だった。


 だが、少なくともその効果は解る。

 分かると言うより、嫌でも理解すると言うべきだろう。

 ヒルダの身体に命中した弾体速度が速すぎて驚く程の大穴を開けたのだ。


「超高速で貫通する弾丸はその直径の何倍も肉を抉るのだよ!ハハハ!流石のアレも苦しそうだな。まぁ、ここまでは予想通りだ」


 遠慮なく砲撃し続けるバードを他所に、エディは殊更上機嫌だ。

 ラジオの中で『バード! もう良いぞ! 様子見だ!』と叫んでいた。


「さて。遙かなる異界からやって来た、封印されし無敵の敗残者よ。そろそろ始めたらどうだ? もう十分だろう? それともまだ無様を晒すかね?」


 エディは空に向かってそんな言葉を吐いた。

 ドクドクと脈動している化け物は赤黒い血を流しながら空中にいた。


 一体あれは何なんだ?と僅かに首を傾げたバード。

 その間もBチームの面々は実体弾頭攻撃を続けていた。



    ――――異界だと?



 唐突にコボルドの王がそう言った。恐らくは何らかの事情があるのだろう。

 エディはニヤリと笑ってから王を見て言った。


「あぁ、そうだ。ヒルダは、あの化け物は全く異なる世界からやって来た。そしてこの世界で力比べをして負け、封印されていたのだよ」


 エディの説明にコボルドの王は不思議そうな顔をしていた。

 だが、そんな事を意に介さず、エディはヒルダを指さしながら言った。


「元の世界がどんなだったかは知らぬ。だが、そこも神の実験場なのだろう。この世界がそうであるように完全で完璧な世界ではない。そして、そこに暮らす者は苦労している。そこから異物を排除したのだろうな」



     ――――なるほど

     ――――して、何を始めるというのだ?



 コボルドの王は立続けに質問をぶつけて来た。

 恐らくは理解の範疇を飛び越しているのだろう。


 ただ、同時にバードは気が付いていた。

 これはエディがエディに教育している場なのだと。


「あぁ、それか。なんてことはない。あの化け物が勝ちきる為の手段だよ」


 予想外の言葉だったのか、短く『え?』と聞き返したイヌの王。

 エディは愉悦を隠し切れぬ姿で薄く笑った。


「過去幾度も私はここへ干渉してきた。遠い日、あの河原の陵脇で軽い戦闘をしただろう? 覚えているか?」


 エディが切り出した言葉にバードは思わず『なにそれ』と呟いた。

 だが、それに言葉を返したのはテッド大佐とヴァルター大佐だった。


『そう言う事だったのか』

『状況はずっと昔から続いてたんだな』


 恐らくはふたりの大佐が経験した事だったのだろう。

 その後もエディは何かを騙り続けるが、正直、バードの理解は追いつかない。


 だが、ひとつだけ解る事がある。

 エディは明確な目的を持ってそれをやっていたのだ。


「歴史を修正するのは色々と手間が掛かるもんなのだよ」


 凶悪なまでの笑みを浮かべ、エディは王に何かを語り続けた。

 それを聞くバードは、途中から日本語を英語に訳すことすら忘れていた。


『エディは何の話をしてるんだ?』


 テッド大佐が聞いて来て、バードは『後でちゃんと説明します』とだけ応えた。

 過去のどこかで分岐した、苦悩と後悔に塗れた世界線を斬り捨てたのだ。



     ――――つまり、歴史を変えて来たという事だな?



 イヌの王もそれを理解したらしい。

 未来を生きる別の世界の自分が干渉しているのだという事に。


 そう思えば、このイヌの男は随分と聡明で明晰な頭脳を持っている。

 もう一人のエディだと言い切っても問題ない程度には。


「そうさ。こうなるように幾度も干渉してきた。まぁ、そんな事はどうだって良いじゃないか。問題はあれだ」


 エディが指さした先、ヒルダの大穴が塞がってきているのだ。

 そして、徐々にその姿を変えつつあった。



     ――――なんて事だ

     ――――あれほどの傷を



「心配ない。傷を癒す分だけアレは弱まる。そして……」


 エディは別の方向を指さし、その時バードは初めて気が付いた。

 その指先の方向には、今まで全く気が付かない存在が宙に浮いていた。


 どこかおぼろげな姿で、ややもすれば実体を見失いそうな存在。

 バードは理由もなく直感した。


 あれはエディ以外触れてはいけない存在なのだと……

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