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機械仕掛けのバーディー  作者: 陸奥守
第20話 オペレーション・トゥムレイダー
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別のエディ

~承前




 それは、まったく想定外の状況だった。



 ――――逃げられた!



 少しあきれた様子で立っているバード。

 その眼差しの先は、先ほど飛び出た隠し通路への扉だ。


「……完全に逃げられたな」


 ダニーも少しばかりウンザリ気味だ。

 5メートル四方程度の小部屋は、完全に孤立していた。


「この扉、向こうからじゃないと開きませんよ」


 ダハブは隠し通路への扉を確かめてそう言った。

 こちら側からでは開けられない構造なのだろう。


 取っ手や引っ掛かりと言った部分が一切無い。

 それどころか、完全に閉まった状態では、壁の模様にしか見えないのだ。


「……形態としては、救出部隊が向こうから開けて、追跡を振り切る形ね」


 バードも感心するそれは、重要人物をどうやって逃がすか?の配慮だ。

 その一点について、この城は相当に考え抜かれた構造をしていた。


 そもそも、現代的視点をもってしても、構造的には相当堅牢な城と言える。

 だが、王が陣取る本拠地として考えた場合、攻め込まれた時点で既にアウト。

 しかし、そんな危機的状況に於いても最善の策を希求する仕組みなのだろう。


「裏通りに引き込んで、表側の追跡を振り切る訳ですね」


 ダハブも感心したようにそう呟いた。

 思慮を巡らし、危険の芽をひとつひとつ潰していく。

 結局、何処の世界にもプロフェッショナルはいて、良い仕事をするのだろう。



 ――――すごいな……



 上手く表現出来ないが、少し心が動いた。感動とか感心という奴だ。

 だがそれは、戦場では最もやってはいけない事でもある。


 一瞬の油断。それが感心だとしても、油断は油断。

 集中力や注意力が切れた瞬間、窮地はそんな時にやって来る。



 ――――えッ?



 そう言葉に出そうとした瞬間、バードは何かに蹴飛ばされ吹き飛んだ。

 機体重量がある筈の装甲体なのだが、そんな物は関係なかった。


 衝撃波の魔法だと気が付いた時には部屋の壁に叩き付けられていた。

 目の前にはダハブが転がっていて、言葉に出来ない言葉で喚いていた。


「DAMM!(チキショウ) FACK!(クソったれめ)」


 少し舞い上がっているダハブはそんな罵倒言葉を吐くと同時に手榴弾を投げた。

 目標は小部屋に繋がる大部屋だ。正体は不明だが二個小隊は人影がある。


 さっきも見た衝撃波系の兵器だろうが、威力は段違いだ。

 魔法かどうかはともかく、直撃を受けると各部に作動誤差を出すほどの衝撃だ。


「おいおい! そりゃ拙いぜブラザー!」


 ダニーは慌てて物陰へと這いずった。

 次の瞬間、鈍い衝撃と共にグレネードが炸裂した。


 スタングレネードでは無く殺傷系の代物だが、炸裂する関係で麻痺もする。

 獣人が使う兵器が魔法だったとしても関係無い。


 同じ効果をもたらすのであれば、その仕組みは関係無いのだから。


「よっしゃ! 効いたぜ! 飛び込もう!」


 いつの間にか愛刀を鞘に収めたロックが銃を構えて大部屋へと飛び込んだ。

 構造的には食堂と言う表現が一番ピッタリだと解る所だ。


 その大部屋にはライオンだけじゃなく様々な姿の獣人が居た。

 半分くらいは蹲っていて、ハンドグレネードの破片を受けたようだ。


 だが、残りの半分は未だ意気軒昂に戦意を漲らせている。



 ――――へぇ……



 なんとも虚無的な感覚だった。

 ライオン人がいるなら他の種族もいるだろうなとは思っていた。


 ただ、いるにはいるが、全くかわいくない、可愛げの無い姿に呆れるばかりだ。

 萌えキャラ状態はあり得ないだろうが、どこか可愛げのある姿を期待していた。


 そんな思いが裏切られたなら、手にした銃の引き金はいつもより軽い……


「なんか呆気無いなぁ」


 ボソリと漏らしたバード。その周囲には夥しい死体。

 僅か4人だけだが、至近距離から大口径自動小銃を受ければこんなもんだ。


 いつの間にか射殺体が転がる状況にも無反応になっている。

 人間的に麻痺しているのだが、本人もそれに気付いていない。


「さて、どうしたもんだろうな」


 ロックがポツリと言ったそれは、今後のことだ。

 追跡は失敗し逃げられてしまった。割と失態だが、どうにもならない。

 リカバリーを図るべきなのだろうが、本体と合流するのも手ではある。


「とりあえず前進しましょ。あっちには多そうだから」


 バードが指差したのは、食堂と思しき大広間の奥だ。

 何処へ繋がっているのかとバードは考え思い出した。


 その通路は程なく大回廊へと出て、そのまま行けば玉座の間だ。

 驚く程豪華な設えの大部屋まで一直線の筈……


「そうだな。ドリー達もそこを通るはずだ」


 ダニーがそんな事を言った時だ。

 何処から湧いてきたのか、牛みたいな角を持つ獣人が現れた。

 ダハブが誰何する前に射撃を加え、獣人は倒れた。


「こんなのも居るんだな…… ってか、これ、水牛か?」


 立派な角をいからせる頭骨の構造をダニーは想像する。

 恐らくは頭蓋から直接生えている形態だろう。


「そうでしょうね。サバンナの水辺にいる奴らだ」


 アフリカ系のダハブは少し懐かしそうな言葉を吐いた。

 ただ、そんなモノもダニーは何処か聞き流している。

 今は医者として医学的見地の興味が勝っているのだ。


 角が独立して動かないなら、むしろ質量的には頭蓋に関節は無い筈。

 太くて逞しい首を見れば、筋肉の付き方も察しが付く。


「あくまで個人的見解だが、ここの獣人を全部解剖してみたい」


 ボソリと呟いたダニーの言葉にバードはいつぞやと同じ感情を持った。

 チームの中でも指折りに謎の多いダニーの過去だ。


 それぞれに重い過去を引きずるメンツの多いBチーム。

 だが、それにしてもダニーの過去は謎に包まれていた。



 ――――聞いてみたい



 そんな衝動をどう抑えようか。

 バードは内心奥深くで逡巡している。


 堂々巡りの思考が加速している時、唐突に無線が入った。


『別働隊。聞こえるか?』


 テッド大佐の声でバードの意識は一気に現実へ引き戻された。

 完全閉鎖ヘルメットの関係で表情は見えないが、4人も顔を見合わせる。


『こちら別働隊。感度良好です』


 最初にロックがそう返答した。

 そして、直後にバードが言葉を継ぐ。


『パッケージと一度は接触したのですが逃げられました。少し様子が変でしたが、戦闘の混乱だけでは無さそうです。意思の疎通は図れそうですけど、向こうにも何か思惑がある様ですね』


 的確な情報の提供と説明。無駄を省く要約のセンス。

 この辺りもまた場数と経験なのだろう。


『あとで映像を確認する。クラウドに上げとけ。それと、城の構造は解るな。パッケージと離別したならこっちへ合流しろ。そこから大通路へ侵入者らしき集団を押し出してこい』


 大佐の簡潔な指示にバードは内心でニヤリと笑う。

 今の隊長はドリーだが、何処まで行ってもテッドは特別な存在だ。


『了解です。行動を開始します』


 ロックがそう返答しメンバーをチラリと見た。

 バードはコクリと首肯を返し、Yackでは無くS-16を構えた。


「よし、行こう」


 ダニーが最初に歩き出し、大食堂を出ようとした時だ。

 通路の片隅に斬られて死に掛けの何かがいた。


「ダニー」


 バードが指差すと、ダニーは銃を背中のマウントに預けた。

 兵士では無く医者に様変わりしたダニーは、半死半生の人間を検めた。


「……いや、無理だ」


 一目見てそう診断したダニー。

 上部胸腔が大きく切り裂かれ、内臓が丸見えになっている。

 大量の出血が胸腔内に溜まってて、肺は機能していない。


「じゃ、楽にしてやろう。苦しませても報われない」


 回復の見込みがあれば苦痛を耐えろというのだが、ここでは死を待つだけ。

 それまで苦しみ続けるなら、いっそ楽にしてやった方が良い。


 これが戦場ヒューマニズムの極致なのだろう。

 実際の話、自分ならそうして欲しいと願うのだから。


「そうだな」


 ダニーは立ち上がって胸の前で十字を切り、その後で銃を構えて発砲した。

 頭蓋が一撃で弾け飛び、間違い無く即死した筈だ。


「イヌっぽかったな」


 ダハブがボソリとこぼした。

 どう見たってイヌの城なのに、イヌの軍装じゃないイヌだった。


「イヌにも色々あんだろうさ。まぁ、俺達には関係無い」


 パッと切り替えるのもロックの美点。

 凄いな……とバードが思った時、細い通路の向こうにライオンがいた。


 剣を抜いて今にも飛びかかってきそうな様子だ。

 ここで撃たないとロックがまた活き活きとしてしまう。

 そんな事を一瞬で考えたバードは鋭く叫んだ。


「まだ居るよ!」


 バードはスッと銃を構えて引き金を退いた。

 あっという間に12.7ミリの銃弾でぶちのめされ、挽肉状態となる。


 少しばかりロックが残念そうな素振りを見せるも、バードは無視した。

 今は前進を再開し本体に合流するべきだった。


「……まだまだいるな」


 どこか嬉しそうにロックがそう言う。

 パッと見では10人や20人な雰囲気のオーダーだ。


「押し返しましょう」


 ダハブも収束射撃に加わった。

 その結果、ライオン人間は剣を捨てて逃げ出した。

 いや、ライオンだけでなく雑多な種族全てだ。


「……おいおい」


 収束射撃に加わっていたロックが銃を降ろした。

 その射線の先には夥しい肉片が飛び散った状態だった。


 50口径弾の集中射撃を受ければ、どんなに強靱な肉体でもこうなるだろう。

 人力でコントロール出来る程度の装甲が防げる打撃力では無いのだから。


「結局は追跡だな」


 呆れた様にダニーが言う。

 だが、ロックは銃を再び背中にマウントすると、愛刀を抜いた。


「いや、こっちの方が面白そうだぜ?」


 ヘルメットの下、ニヤッと笑ったロックは通路を走り始めた。

 全身の躍動を見れば、ロックの悪い癖が出たとバードは確信した。


「ちょっと待ってよ!」


 同じ様に銃を背中のマウントへと預けたバードはYackに持ち替えている。

 ドラムマガジンの残弾は各々80程度なので、真面目に撃ったら10秒だ。


 凡そ連射の出来る小火器は装弾数の制約が付いて回るもの。

 高速連射型のYackではドラムマガジンの装弾数125発が少ないと感じる。

 それ以上巨大なマガジンを付ければ取り回しが悪化するアンビバレンツだ。


「支援してくれ!」


 ロックの声が聞こえ、バードは走りながら両手を交差させて銃を構えた。

 いつものスタイルだが、射撃フェーズに入る直前に誰かが叫んだ。



             『 何 奴 ! 』



 誰の声だ?と少し首を傾げたバード。

 しかし、そんな事を気にせず、ロックは逃げる者達を背後から斬り始めた。



    『 親 衛 隊 ! 斬 り 込 め ! 吶 喊 ! 』



 これは明らかにこの世界の住人が発する声だ。

 そう確信したバードは銃の射撃を控えた。

 相変わらずロックはザクザクと斬り伏せているが、その速度は落ちている。



 ――――やっぱ警戒するよね……



 流石だと思いつつ、バードは銃をYackからS-16に持ち替えた。

 チラリとマガジンを見たら残弾が寂しい事になっている。

 素早く新しいマガジンに切り替え、銃を構えたまま前進した。


「後ろに付く!」「こっちも付きます!」


 気が付けばダニーとダハブがバードの少し後方左右に付いた。

 3人の収束射撃は相当凶悪なはずだと思うが、問題はロックだ。



          『 小 癪 な ! 』



 再び熱い声が聞こえた。誰の声なんだ?と少し不思議だ。

 ただ、何となくその声に聞き覚えがあるな……とバードは不思議がる。

 一瞬の間に様々な事を思案したバードだが、その直後に別の声が聞こえた。



    『ヴァルター! 余の足を止めるな! 押し返せ!』



 ――――え?



 バードは思わず足を止めた。今、間違い無くヴァルターという声が聞こえた。

 と言うことは、そこにいるのはエディか?と首を捻るのだが……


「なんか芝居がかった物言いだが、なんて言ってるんだ?」


 日本語を理解出来ないダニーがそうたずねてきた。

 バードは一瞬どう説明しようかと思ったのだが……


「いや、なんかね、負けずに敵を押し返せって叫んでるのよ」


 その説明に『へぇ……』と無関心な様子でダニーが応える。

 実際の話、この城の内部で何が起きておるかなど、どうだって良い話だ。


 実際、少し先に居るロックは相変わらず敵を斬り続けている。

 時々は足を止めて血糊を払い、再び斬り掛かっているのだ。



  『もう良い! もう良い! 抵抗しない! 助けてくれ! 頼む!』



 何者かが命乞いを始めた。きっと隊列の前後で次々と人が死んでるのだろう。

 どんな存在でどんな軍勢なのかは一切理解出来ない。だが、少なくとも敵だ。


「さて、面白くなって来やがった!」


 ロックはそんな言葉を吐くと同時、一気に加速して襲い掛かった。

 敵の集団を追い越し、隊列の真ん中辺りで舞うように剣を振った。


「ッセイ!」


 次々と鮮血を迸らせながら敵が死んでいく。

 そもそもロックが太刀を装備したのは強靱なネクサスシリーズへの対抗だった。

 体躯の構造的には銃だと数発程度では殺しきれないと言う経験から装備した。


 そんな太刀での戦闘が、ロックをBチーム最強のCQBスペシャリストにした。

 手を伸ばせば相手に触れられる距離での戦闘なら、銃より刃物の方が強い。

 世界中の如何なる軍隊でも、それはもう経験則として受け継がれてきたもの。


 そんな刃物の中でも最強クラスの日本刀を持ち込んだロック。

 今、ロックの愛刀は次々と敵を斬り続けていた。



     『った! 助けてく――



 何者か解らないが、頭から血を流している人をロックは斬った。

 これと言って手応えの無い斬り味だ。まるで豆腐でも切るようだ。


 バットの芯にボールを捉えると気持良い手応えがあるもの。

 それと同じ様に、ロックの両手センサーは肉を絶ち骨を斬る手応えを伝えた。


 そして……



       『陛下! 御下がりを! この太刀は――



 全身を返り血に染めたイヌらしき獣人が叫んだ。

 その眼差しを目で追ったロックは、そこに立つ人物に言葉を失った。

 通路を抜け、少し広いところに出た所で出くわした予想外の存在だ。


『嘘だろ?』


 思わず無線の中にそう呟いたロック。そこに立っているのはエディだった。

 いや、エディじゃ無いのはすぐに解る。だが、顔も身体格好も正にエディだ。

 少なくともエディの頭にはピンと立ったイヌ耳など無いが、それでも……


『何か起きたの?』


 まだ通路の奥にいたバードは思わずそう聞いた。

 飛び出して良いかどうか一瞬迷ったからだ。


『まだ来るな! ここにヤベェのがいる!』


 ロックがそう言葉を返した時、まだ息の合ったライオン人間が立ち上がった。

 ぶ厚く巨大な盾を持ってるのが見えた。しかし、見かけ倒しな代物でしかない。


 ロックは軽くジャンプしてから体重を乗せて盾ごとライオン人を斬った。

 まるで豆腐を切るようにスパッと斬られ、あっという間に絶命した。

 その周囲にはライオンならぬ種族の獣人が居たのだが、それも全部斬った。


 幾人かは慌てて剣を構えてきたのだが、その全てをいなした上で反撃した。

 正直、膾を切るような容易さだ。いや、もはや児戯レベルだと思った。



『距離を取れヴァルター! この世の剣士では匹敵能わぬ! そ奴は無敵ぞ!』



 エディに似たイヌがそう言った。その時点でロックは気が付いた。

 イヌ耳が頭に立っているのに、その顔は人間なのだ。

 ライオンやイヌやネコと言った獣人の顔が獣なのに……だ。



       『 そ な た は 何 者 な の だ 』



 エディに似たその存在は、どう見ても高級将校だと思った。

 いや、高級将校と言うより支配者だ。この場における最高指揮官そのものだ。


 ロックはどう答えて良いか逡巡し、一旦愛刀を鞘に収めた。

 視界の隅にダイアログが開き、自動手入れするか?と聞いて来たのでOKした。

 次の瞬間、ギュンともギンともつかぬ音が聞こえて来た。


『こんな形の接近遭遇は勘弁して欲しいぜ』


 ロックが少し呆れながら言うのは、その高級将校の言葉だ。



    『 そ な た ら は 何 処 か ら や っ て 来 た 』



 一方的に問いかけられている形のロックは返答に困っていた。

 言葉は間違い無く日本語だが、細かい部分で齟齬があるかも知れない。

 迂闊な事を言って変に拗れるのも面倒だ。



    『いや、どうやってここへ来た。ヒトの世界から来たのであろう』



 人の世界ってなんだ?とロックは思った。

 異なる世界の住人かも知れない。いや、間違い無くそうだろう。

 そう考えたなら、色々と腑に落ちる点も多かった。



     『余を育てた父もヒトであった。如何なる手立てなのか――



 思わず『はぁ?』と言葉を漏らしたロック。

 それが無線の中だったのは誉めて欲しいとすら思った。


 その直後、エディっぽい男が率いる兵士が唐突に叫んだ。



             『 敵 襲 !』



 それと同時、先ほどヴァルターと呼ばれた黒いイヌが剣を構えた。

 日本刀では無く西洋剣のような両刃片手持ちの剣だ。

 その剣を構えつつ『まだいるのか!』と叫んでいた。


 ただ、そんなイヌが斬り掛かっていったのを見て、ロックは唖然とした。

 あまりにも遅いのだ。いや、手際は良いし太刀行きも速い。

 十分な速度だし十分な威力を発揮している。


 だが、遅い……


 21人目を斬った辺りでロックもいよいよ我慢出来なくなった。

 そんなタイミングでバード達が姿を現した。



 ――――あぁ……なるほど……



 何処かに潜んでいた敵がバード達に追い出されたのだ。

 ならば……


「遅い」


 ロックはそんな言葉を吐くと、再び剣を抜いて斬り掛かった。

 いつものように猿叫の言葉を吐きつつ一撃でライオン人を斬った。

 完全に真っ二つになった死体を蹴り飛ばし、更に斬り掛かる。


 その速度は疾風の如く、その威力は暴風の如し。


 一方的に斬ってる時、視界の隅に別の集団を見付けた。方向的には玉座の側だ。

 と言うことは、既にテッド大佐達は玉座の間へ到着した公算が高い。



 ――――やべぇ!



 何を言われるか解ったもんじゃ無い。

 少しばかり焦ったロックだが、黒いイヌの剣士が『新手!』と叫んだ。

 広間に出たバードにも見えた新手は10人ほどだ。


『任せて!』


 バードが銃を構えるのが見えた。

 ふと見れば、先ほどの黒いイヌの剣士が激昂していた。

 大方、玉座の間から来たのが気に入らないのだろう。



 ――――こいつらバカか……



 少し呆れたロックは『動くな。邪魔だ』と言いつつ体術で組み伏せた。

 呆気無くテイクダウンされたイヌの剣士は驚いてロックを見ていた。

 恐らくは何かを言おうとした時、バード達3人の銃撃が始まった。


 マガジンが空になるまで連射したバード。

 ダニーとダハブも同じ様に射撃し、素早くマガジンを代えた。



         『 そ な た ら は…… 』



 エディ似の高級将校がそんな事をポツリと呟いた。

 それと同時、テッド大佐の声が無線に流れた。


『別働隊。玉座の間を占拠した。ここにエディも居る。その場にいる奴をここまで連れて来るんだ。丁重にな』


 この時点で流石のロックも察しが付いた。

 エディはこの為に降りてきたんだ!と。



 ――――相変わらず……

 ――――人が悪ぃぜ……



 ヘルメットの中で苦笑いしたロックはイヌの剣士を引っ張り起こした。

 鉄火場を幾つも潜ったであろうイヌの剣士も言葉を失っていた。


『さて、面倒になったぜ』


 何処か人見知りなロックだ。

 チラリとバードを見れば、銃を手にしたまま様子を伺って居た。


『行かないとまずそうよ?』

『……だな』


 ロックはヘルメットをエディ似な高級将校の方へ向けた。

 顔が見えない構造のヘルメットだが、これなら意味が通じるだろう。


 側近らしき存在とあれやこれや話しているのが見える。

 だが、こちらにはそんなのは関係無い。


「一緒に来い」


 ロックは再び背中の鞘へ剣を戻した。

 今度は自動整備が推奨されなかった。



       『 何 処 へ 行 く の だ ? 』



 高級将校は側近と顔を見合わせつつ、怪訝な様子でそう問うた。

 碌な事じゃ無いと確信している。そんな空気が痛々しい。

 ロックはひとつ息を吐いてから言った。


「玉座だ」

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