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プロローグ
車椅子に乗った老人の姿が、見えていないわけではなかったのだ。
時間には余裕を持って出かけた。
特段急いでもいなかった。
ただ、面倒くさかったのだ。
閉まりかけたエレベーターのドアをもう一度開いてやる、たったそれだけのことが。
ドアの向こうから老人がこちらを見ていた。
それを見なかったことにした。
ヨシヤは、今朝のそんなちっぽけな不親切を思い出した。
地獄に落ちるまでもないチンケな罪への報いとして、自分はこんな場所に飛ばされたのだ。
そう考えるほかないように思えた。
「なに……これ……?」
レジ袋を手にさげたまま、ヨシヤは立ち尽くした。
奇怪な獣の声が響き渡る。
そこは鬱蒼とした森の中だった。




