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第五話:『アイルと胃薬と、守られるべき胃』

第五話:『アイルと胃薬と、守られるべき胃』


合体機体の調律が進み、アイルが“ロマン全部盛り”の価値観を獲得したころ。


観測装置の問題も一段落し、タケルはようやく椅子に座り込んだ。


そのとき——


「イグスリ、ッテナニ?」


アイルの声が、格納庫に響いた。


ミカが慌てて振り返る。


「……アイルはまだ知らなくていいんだよ」


ハルも頷く。


「そうそう。これはね、大人になったらわかるやつだから」


「オトナ……?」


アイルの光が、ほんの少しだけしょんぼりしたように見えた。


ミカは苦笑しながら、そっと機体の装甲に触れる。


「大丈夫。アイルはまだ“子ども”なんだから」


ハルも続ける。


「そうそう。俺たちがちゃんと守るからさ」


——気づけば、二人は完全に“保護者”の顔になっていた。


---


◆ しかし、胃薬の奇跡は終わらない


タケルは机に突っ伏しながらつぶやいた。


「……胃薬の活躍のせいで、むしろ胃が痛くなってくるのって、どういうことなの?」


調律者たちは、なぜか誇らしげに胸を張った。


「だってタケルくんの胃薬、すごいんだよ!」


「未来干渉を安定させたんだよ!」


「世界救ったんだよ!」


「いや、だからこそ胃が痛いんだよ!!」


タケルの叫びを無視して、調律者たちはさらに続ける。


「実はね、タケルくんの胃薬、まだ“本気”を出してないんだよ」


「……は?」


「観測装置の揺らぎを抑えただけじゃなくてね……」


「アイルの精神リンクにも、微妙に影響してるんだよ」


「はあああああ!?!?」


タケルの悲鳴が格納庫に響く。


---


◆ アイル、まさかの反応


その瞬間、アイルがふわりと光った。


——……イ……グ……スリ……

 ……タケル……アリガト……


タケルは固まった。


「……え?俺、今、機体に感謝された……?」


調律者たちは満面の笑み。


「そうだよ!タケルくんの胃薬が、アイルの安定に役立ったんだよ!」


「つまりタケルくんは、アイルの命の恩人!」


「アイルの胃の守護者!」


「胃の守護者って何!?そんな称号いらない!!」


しかしアイルは、まるで本当に感謝しているかのように、

優しく光を揺らした。


——……タケル……スキ……


「やめてええええええええええ!!

 胃が!胃が死ぬ!!」


ミカとハルは、完全に保護者の顔でアイルを見上げていた。


「……アイル、いい子だね」


「うん。タケルの胃薬にまで感謝できるなんて……」


タケルは涙目で叫ぶ。


「だからそれが胃に悪いんだよ!!」


---


『胃薬の魔手、広がる』


観測装置の安定化に成功したタケルは、

自分の胃薬が世界を救ったという事実に震えながら、

机に突っ伏していた。


そのころ、格納庫の片隅では——


レイナードとカザマ中尉が、

夕暮れのような照明の下で黄昏れていた。


二人とも、手には同じものを持っている。


胃薬。


「……タケル、なんだか遠くに行ってしまったな……」


レイナードがしみじみとつぶやく。


「そうですね……まさか胃薬で世界を救うとは……」


カザマ中尉も深く頷く。


二人の視線は、遠くを見つめていた。

まるで、戦友の背中を見送るように。


「……俺たちも、あいつのように……」


「……世界を救える胃になりたいですね……」


「いや、胃じゃなくていいだろ……」


そんな会話をしていると、背後から声がした。


「お、二人とも胃薬持ってるじゃん!」


振り返ると、調律者たちが満面の笑みで立っていた。


嫌な予感しかしない。


---


◆ 調律者、胃薬の“適任者”を見つける


「実はね、観測装置の安定化は成功したんだけど……」


「次の問題が出てきちゃってさ!」


「揺らぎの“二次波”が発生してるんだよね!」


「……二次波?」


レイナードが眉をひそめる。


カザマ中尉は胃薬を握りしめた。


「それって……また危険なんじゃ……」


調律者たちは、なぜか誇らしげに胸を張った。


「安心して!

 その問題を解決するための“適任者”がいるんだよ!」


「……誰だ?」


調律者たちは、同時に指をさした。


レイナードとカザマ中尉。


「「……俺たち!?」」


「そう!二人とも胃薬持ってるでしょ!」


「つまり、タケルくんと同じ“素質”がある!」


「胃の揺らぎを抑える者は、未来の揺らぎも抑える!」


「そんな理屈あるか!!」


レイナードが叫ぶ。


カザマ中尉は震える声でつぶやく。


「……俺の胃が……世界のために……?」


調律者たちは満面の笑みで頷いた。


「そう!君たちの胃薬が、次の奇跡を起こすんだよ!」


「崇高な犠牲だね!」


「胃の犠牲で世界が救えるなんて、ロマンだよ!」


「ロマンじゃない!!」


---


◆ そして、アイルがまた反応する


そのときだった。


格納庫の中央で、アイルがふわりと光った。


——……イ……ノ……チ……

 ……ミンナ……タスカル……


レイナードとカザマ中尉は固まった。


「……アイル、お前……」


「俺たちの胃薬にまで……感謝を……?」


アイルは優しく光を揺らした。


——……レイナード……カザマ……

 ……スキ……


「やめてええええええええ!!

 胃が!胃が痛い!!」


タケルの悲鳴が遠くから聞こえた。




---


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