第二十話 整備区画の片隅。(空気)
第二十話 整備区画の片隅。(空気)
ハルとミカの間に、ほんのり甘い空気が流れていた。
ハルはミカの差し入れを飲みながら、
珍しく柔らかい表情をしている。
ミカも、照れくさそうに笑っている。
タケル・レイナード・カザマ中尉は、
その様子を遠巻きに見ながら――
(……若いっていいな)
(……甘い……)
(……胃が痛いけど癒される……)
と、それぞれ複雑な気持ちになっていた。
そんな中。
ピピッ……ピピピッ……!
またしても、あの電子音。
---
ハカセ、空気を読まずに乱入
ホログラムがふわりと展開され、
例の“ニヤニヤ笑うタコ”が現れた。
「ほっほっほ……
なんじゃなんじゃ、ええ雰囲気になっとるのう?」
「えっ!?ちょ、ハカセ!?
いつから見てたの!?」
「最初からじゃよ?」
「……やっぱりか」
ミカ「やっぱりじゃないよ!!」
ハカセは二人の間に割り込むようにホログラムを揺らし、
まるで恋愛ドラマを観る視聴者のように身を乗り出した。
---
ハカセの“余計な一言”
「いやぁ、若いってええのう。
“波形の相性”も抜群じゃし、
合体時のシンクロ率も上がりそうじゃ!」
「なっ……!?
な、なに言ってるのハカセ!!」
「……シンクロ率の話だろ?」
「そういう問題じゃない!!」
ハカセはさらに追い打ちをかける。
「ほっほっほ。
二人の距離が縮まれば縮まるほど、
“合体変形時の最終形態”も安定するからのう!」
「合体変形に恋愛要素いらない!!」
「……いや、波形の一致は重要だ」
「ハルまで!!」
---
さらに余計なことを言うハカセ
「それにのう、
二人が“いい感じ”になればなるほど、
タケルの観測負荷も減るんじゃよ?」
「えっ!?僕に飛び火するんですか!?」
「うむ。
二人の波形が安定すれば、
お主の胃痛も軽くなるじゃろうて」
「胃痛の話じゃないです!!」
レイナード「……いや、胃痛の話でもあるな」
カザマ中尉「確かに……安定してくれたほうが助かる……」
ミカ「なんでみんな納得してるの!?
違うでしょ!!」
---
完全に台無し
せっかくの甘い空気は、
ハカセの乱入によって粉々に砕け散った。
ミカは真っ赤になってハルから距離を取り、
ハルはハーブティーを飲みながら小さくため息をつく。
ハル「……ハカセ。
空気ってものがあるだろ」
ハカセ「空気?
そんなもの、観測できんからわからんのう」
ミカ「観測できないなら黙ってて!!」
ハカセ「ほっほっほ。
照れおって可愛いのう」
ミカ「可愛くない!!」
---
そして、また騒がしい日常が戻る
調律者たちは「今の波形、記録した!」「二人の距離が縮まった瞬間だ!」と騒ぎ、
軍の三人は胃を押さえ、
ハルは静かに作業に戻る。
ミカは顔を真っ赤にしながら、
ハカセのホログラムを追い払おうとしていた。
甘い空気は一瞬で消えたが――
それでも、二人の距離は確かに縮まっていた。
---




