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1日目

「あのハゲデブ共が!何が巫女様は召喚の儀でお疲れでしょうからお休みください、だ!教会を省いて王宮主導で勇者を動かしたいのが見え見えなんだよ!」


シュジア教会の総本山、グルリア大聖殿。


その中に設けられた巫女の私室。


見た目は地味ではあるが、どれも職人が作った高級品で揃えられた部屋の中でそれらに気を配る事無く巫女は身に溜まる怒りをぶつけていた。


『シャリナ、落ち着くのです。勇者と巫女は切っても切れない縁で……』


「そんな事は分かってるの!問題は王宮側がどんな訓練や教育を勇者にするかって事!せっかく主神に祈って私好みのダメンズを喚んだっていうのに!このままだと矯正されるか、他の女に唾つけられるかされるじゃないの!!」


姿なき声が巫女を諌めようとするが、それを跳ね除けてダメな事を言う巫女。


巫女の怒り、それは自分好みの勇者にアピールする絶好の機会を奪われた事に起因するものだった。


『国家の命運がかかってるのに、ここまで勇者の資質以上に好みを優先する巫女はシャリナが初めてですよ』


「なによ、これまでの巫女だって似た事してたんでしょ」


『あくまで救世に相応しい人物の召喚を祈るのに、少し本音が交ざるぐらいでした。シャリナの場合は全力で自分の好み優先ですよ。今迄の巫女の祈りを救世と好みで割合化するなら9:1であるのに対して、シャリナの場合は真逆の1:9ぐらいです。正直、今回の勇者の力は歴代最弱なのですよ』


「勇者の力不足は私が補えばいいの。もともとその為の巫女であるわけだし、その方がより巫女わたしに依存してくれるでしょう」


その様子を想像したのかうっとりとした表情でヤバい事を言う巫女。


姿なき声は呆れ半分悲しさ半分と言った声音で巫女の現状を嘆いた。


『ああ、小さい頃は真面目な良い子だったのに。それがなんでこんなダメな巫女になっちゃったんでしょう……。ううっ、クトゥエルは悲しいのですよ』


「大げさね。数百年と続くシュジア教至上、最高にして最強の神通力を持つ私のどこがダメな巫女なのよ?」


『それを本気で言ってる時点でもうダメなのですよ。いくら相性が良いとはいえ、わたしを常時降して側に置いとけるだけ力があるのに、情緒教育で失敗しちゃってるのです……』


もし実態があれば両手を床につけて項垂れてるであろう姿なき声に興味をなくしたらしい巫女は再び再燃する怒りを込めてソファーを蹴飛ばす。


職人によってしっかりと造られたソファーは小娘の蹴りではビクともせずに受け止め、蹴りつけた巫女は反動で軽くよろめいた。


「チッ、今に見てなさい宮廷の豚共め。気候を司るゼピュエルに願って連中の領地を干上がらせてやるわ」


『それは止めるのです!それで一番困るのは其処に住む一般の信徒達なのですよ!』


「クトゥがそういうんなら、止めてもいいわ。でも、それなら代わりにクトゥが働いてくれるのよね?」


『え?』


「まぁすぐに何かをしてってことじゃないわ。暫くは勇者の様子を窺って私に報告してくれるだけでいいの」


『あ、あの、わたしこれでも上級神……』


「お願いしてもいいわよね?クトゥ?」


『わ、分かったのですよ。だから怖い顔をしないで欲しいのです』


「ありがとうクトゥ。じゃ、さっそくいってらっしゃい」


『うう、まさか昔から見持ってきた子に覗きを命令されるなんて思わなかったのです……』


フッ、とそれまで部屋に存在した気配が消える。


それを確認した巫女は、再び怒りをぶつけるためソファーを蹴りつけた。



この世界の神様の名前の最後につく“エル”は言わば神様である事を示す称号の様な物。

本名はまた別にあるけど、この世界だと魔法・魔術があり、過去に魔法によって本名を縛られ主神に使わされた闘神が救出に降臨するまで隷属させられた神が出た以降、神界では防犯意識が高まったのでまず名乗りません。

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