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召喚されました。チートはありません

作者:馬場翁
「というわけで、あなたには異世界に行ってもらいます」
「いやいやいや! おかしいでしょ!? 何がというわけでなの!?」

 叫ぶのはどこにでもいそうな高校生男子。
 その叫びを聞くのはにこやかな笑みを浮かべた女性。
 人、その笑みを営業スマイルと呼ぶ。

「え? なにこれ? 新手のドッキリ?」
「ドッキリでも何でもありません。あなたには異世界に行っていただき、そこで魔族を倒していただきます」

 どことも知れない空間にいきなり放り出された哀れな男子高校生。
 そこで女性から事務的な口調で訳の分からないことを説明されれば、そりゃ混乱する。

 しかし、男子高校生もただの男子高校生ではなかった。

「そうか! これが噂に聞く勇者召喚ってやつか! ていうことは俺はチート能力をもらって異世界で俺Tueeeすればいいんですね!?」

 そう、彼はちょっぴりオタクだった。
 ちょっぴりなのは本当に異世界召喚なんかされるとは夢にも思っていない、話のネタくらいにしか思っていない割と現実見てる系のオタクだからだ。
 今ちょっとテンションおかしくなってるのはいわゆる現実逃避ってやつである。

「あ、いえ。チート能力とかないです」
「ねえのかよ!?」

 今ちょっとツッコミ体質になっているのもいわゆる現実逃避ってやつである。

 しかし、これは彼にとって由々しき問題である。
 チートはもらえない。
 ちょっぴりオタクな彼の運動神経は並よりちょっぴり下。
 そんな彼がチートもなしに異世界に行って、はたして魔族なんてもんと戦えるのか?
 答えはわかりきっている。

「いやいやいやいや! 無理無理無理無理! 俺武道の心得とかないもん! 実は超能力者とかそういう設定ないから! どこにでもいる普通の高校生男子だから!」

 必死に魔族と戦うなんて無理と訴える。

「大丈夫です! あなたなら絶対勝てます!」

 しかし女性は満面の笑みで太鼓判を押す。
 何がそこまで彼女に自信を与えているのか?
 実は俺には秘められた力があって、それが異世界に行ったら解放されるとかそういうことだろうか?
 なんてことをちょっぴりオタクな彼が妄想し始めた時、彼の足元が光始める。

「では、行ってきてください!」
「ちょっと待って! もうちょっと心の準備ってもんが!」
「あ、ちなみに召喚される場所は魔族との最終決戦の場ですので、気合入れてください」
「え? ちょちょちょっ!? おかしくね!? なんでいきなり最終決戦なの!? こういうのって普通始まりの街とかそういうところでまずは召喚されるんじゃないの!?」
「頑張ってください!」
「ちょっ!?」

 女性の笑みに見送られ、哀れな男子高校生は異世界へと召喚されていった。

 そして、彼の目の前に戦場の光景が広がった。
 足元・・に。

「え?」

 なんかちっさいのがうじゃうじゃ足元にいる。
 そしてそのちっさいのがいろいろと叫んでいるのだが、叫んでいるとわかるだけでよく聞き取れない。
 だって音量もちっさいんだもん。
 そりゃ、聞こえないって。

 よくわからない状況に呆然としたせいで、手に持っていたペットボトルを取り落とした。
 彼の好きな炭酸飲料。
 地面に落ちた衝撃でキャップが外れ、中身がぶちまけられる。
 その波にさらわれていく足元のちっさいの。
 転がったペットボトルに潰されていくちっさいの。

「ああー!」

 まだほとんど飲んでいなかったジュースがダメになっていくその光景に、彼は思わず叫んだ。
 その叫び声で、彼に向って飛翔していったなんかちっさいのが墜落した。
 音量のあまりの大きさで耳がやられたか、はたまた風圧で吹っ飛ばされたかは定かではないが。
 とにかく墜落した。
 この世界で魔王と呼ばれている、彼から見ればなんかちっさいのが。

 そして、その瞬間、彼の足元に光が輝きだす。
 まるで役目はもう終えたというように。
 そりゃ、そうだ。
 魔族の軍勢は炭酸飲料の波にさらわれ、ペットボトルにひき潰され、壊滅。
 魔王も叫び声一つで撃退。
 彼は見事にやってのけたのだ。
 魔族の打倒を。

 そう、彼にチートなどなかった。
 必要なかった。
 だって、彼の召喚された場所は、彼からしてみるとあまりにも小さい小人たちの世界だったのだから。

「お疲れさまでした! あなたは一つの世界を救ったということで、功績ポイントがグーンと上乗せされます。このポイントは死後に使えますので、大切に保管しておいてください。ご利用ありがとうございました」

 そして何が起きたのかわからないで呆然としている彼に、初めの女性が営業スマイルたっぷりで説明をして、そこで彼は現実に戻ってきた。
 目の前には自販機。
 下校中にお気に入りの炭酸飲料を買って、一口飲んだところだった。
 彼の手にそのペットボトルはない。

 彼はそのまましばらく放心状態で固まっていたが、そのうちフラフラと家に帰っていった。
 きっと白昼夢でも見たんだ。
 そう思うことにして。

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