歓迎パーティー(2) サフィー目線
「……お父様。」
目の前でバカ王太子について愚痴をこぼしている我が父。
それを呆れたように聞いているお母様とお兄様。
「すまないな、サフィー。」
いつもキリッとしているレイドお兄様の眉がへにゃっと下がっています。
「いいんですよ。宰相であるお父様に負担をかけているのはわたくしたちですから。お兄様が謝られることありませんわ。」
ニコッと笑ってお兄様を安心させようとしたのだが……。
「サフィー!!!」
あ、ヤバ。しくじった。
とびかかりそうになっているお兄様の衝撃にたえるため身構えます。
ですが……
パシャリ
その音で目をあげて見ると見事にお兄様の顔面に扇が開いた状態でくっついていました。
「あらあら!王太子妃殿下に不埒な者がよっていると思い、扇で制しましたのによもや自分の息子であったとは思いませんでしたわぁ!」
冷ややかな声で言い切るお母様にお兄様がゆっくりと扇に手をかけました。
「母上…!」
あ、バリっていった。
「あらぁ、なぁに?」
あ、投げ捨てた。
「なぁに?じゃ、ありません!!全く!息子の顔に傷がついたらどうするおつもりですか!!」
あ、ほんとだ赤い縦じまが入ってるぅ~。
「あと!サフィー、その楽しそうな目、やめて!!」
「あら、失礼。」
どうやら、扇とお兄様の実況がばれてしまったようですね。
にしても、お母様は怒ってらしてもおきれいです~。
え?怒ってるのって?
えぇ、そりゃあもう、かんかんですね。
だってほら、見てください、あの目。
恐ろしいほど冷たく輝いてるアメジストの瞳!!
口許は笑ってるけど目はひたすら怒りを伝えてるもの!!
あぁ、おかわいそうなお兄様。
屋敷に帰れば地獄を見ることに……。
まぁ、それは置いといて……
いやぁ、久しぶりの家族との会話でしたので思いっきり気が緩んでましたね!!!
周りの気配、全く探ってませんでした!
そしてこれが誰の歓迎パーティーかも忘れてました!
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『サフィー!!』
え?
珍しく、妖精たちが声を荒げています。
どうしてだろう。と一瞬……*注*ほんの一瞬ですよ!!……考えてしまいました。
実際、それがわかっても、もう遅かったのですが……。
「サファイア嬢。」
……暑苦しい、ねっとりした声が私を呼びます。
私はそんな心一つ見せず、美しく淑女の礼を取ります。
「ごきげんよう、オルデン王太子殿下。」
「あぁ、面をあげられよ。」
うわぁ、やだなぁ、顔、あげたくないなぁ(泣)
てか、なんでさっきから私のこと『嬢』って呼んでるのかしら?
私、結婚してるし、しかも王太子妃だから『妃殿下』なんだけど。
「サファイア嬢、私と踊ってくれますかな。」
「えぇ、もちろんですわ。」
(訳)えぇ、嫌だーー!嫌だーー!
殺気立つ背後の家族を手で制し、私は嫌だと内心思いながらバカ王太子の手をとりました。
うげぇ、やだよ~。エディーどこ~。帰る~。
内心では思想がおかしくなっているものの顔は笑みを作っています。
これぞ、スパルタ王妃教育!!
なんだ、その必殺技みたいな言い方。
は!!
一人でボケとツッコミやってたわ!今日はこれが終わったらすぐ寝よう。うん、きっと疲れてるのよ。きっとそうよ。
「サファイア嬢はダンスがお上手なんだな。」
「お褒めいただきありがとうございます。オルデン殿下。」
……いつの間にか踊っていた。
てか、私が上手とかそういうこと言う前にお前のダンスが下手すぎんだよ!!!
あ、あら、失礼。
あなたのダンスがお下手過ぎますの。おほほほ。
もう、やだ~。思考がおかしくなってきたよ~。
「サファイア嬢はいくつなんだ?」
「はい、15でございます。」
げし、っ危ない。足、踏まれる所だった。この人の体重で踏まれたら折れるから!!絶対折れるから!
頼むよ、もうしゃべらないでくれ。
「それでは、エレディオール殿より3つ下なのか。」
「えぇ、そうですわ。」
「ということは、私よりは7つ下ということか。」
「そ、そうですわね。」
ひきつりそう、表情筋が。ヤバイ。
エディー!!どこにいるのーー!!
助けてーーー!!(泣)




