エピローグ
誠は結局、Uの正体を明かすのは止めた。
人形で桜庭学園に登校し、kiil♡とりうとアイドルバンドを続けていた。
騒がれるだけで意味が無いし、例えばドラマの役柄次第では家族や身内、学校の友達などにも迷惑がかかるし、第一。
影繰りの顔が明るみに出る可能性だってあるのだ、と伊吹たちに諭されたからだ。
内調は、正式に防衛庁の管轄となり、諜報調査室と名前を変えた。
影繰りの数は一気に三倍になり、その他職員も何千人規模で増えた。
防衛庁関係の官僚も出入りするようになり、誠の給与は三倍になった。
「なんだ、ありゃ!」
空自のエリートパイロットである山谷は、今日、自分の率いるF-3戦闘機部隊と演習するという「物」を見つめた。
端的に言って、人間、それも子供のような小柄な身体の人物が、ロボットのようなヘルメットとアニメのようなボディをつけたものだった。
彼? の周りには十数人の白衣の化け学担当らしき人間が取り巻き、それらに指図しているのは白人の少年で油まみれのツナギを着ていた。
「隊長……?」
山田が困惑するが、山谷は、
「いいよいいよ。
諜調の新発明ってんだろ。
鉄○ア○ムと空中戦するなんてさ、光栄じゃねーか、そうだろ」
周りは虚ろに笑った。
「でも、あんなんじゃステルスも使えないだろうし、まー、いつもと違う鬼ごっことでも思えばいいさ!」
山谷とてガキの遊びに付き合うのか、といった気持ちはあるが、軍隊である以上、上の指令に拒否権はない。
F-3六機は轟音と共に空に舞い上がり、すぐにコンピューターと接続する。
と……。
マッハ三で飛行するF-3を、あのロボットもどきが追い抜いていく。
「あの白いの……、どうなってる?」
ジェットを使った形跡も無く、しかも……。
UFOかというように、ひらひらと音速の壁も何も無いように踊るように飛び、パ、パ、パ、とソフトボールのような小さな物を空中に展開した。
が、そのソフトボールも、航空力学を無視した飛行をし、そして……。
一瞬で山谷の部隊は全機撃墜されていた。
内心、腹を立てながら山谷が、諜調の白い子供に近づくと、子供がヘルメットを取った。
中には、中学程度の少年が入っていた。
「おい、諜調、それ、どうやって飛んでるんだ?」
奥でツナギをきた少年が目も上げずに答えた。
「まあ反重量って奴だね」
「なっ……、そりゃSFの真似事か?」
「そう時間もかからずに、空は彼らで埋め尽くされるよ。
ま、あんたたちの仕事はこの子らの支援が中心になるだろうね」
そんな日が来るわけはない。
山谷は鼻で笑った。
戦闘には無限のバリエーションがあり、模擬戦のように綺麗に戦うほうが珍しい。
こんなア○ムもどきが活躍できるのは、せいぜい技術を誇示するためのニュース映像の中くらいに決まっていた。
「やめてくれよな。
実弾飛び交う戦場で子供が吹き飛ぶところなんて見たくもない!」
「彼に実弾なんて当たらないんだ。
すぐに分かるよ」
白人少年は青白い肌で笑った。
やれやれ、ゲームと実戦の区別もつかないんじゃな……。
山谷は肩を竦めて歩み去った。
「リーキー主任。
何なら奴の首をもぎりましょうか?」
小田切誠そっくりの顔で少年は言うが、リーキーは、
「もぎるのは敵の首だよ。
一型、よく覚えておいて」
誠のコピーはいいのだが、IQは変わらなくても、知的には数段劣るものしかできない。
得に、自分の力に自信を持ってしまうところが本物との大きな違いだった。
「平和の手」を持つ友好国との面談の後、Aの計画はいくつかの国家を抱き込んで加速度的に進行していることをリーキーは知った。
全くの悪手だ。
ああいう独裁国と、しかも複数手を組んだら、もはや逃れられない。
だが宮城少年の予言は、あと数年、あるかないか、というところまで進んでしまってしまっていた。
世紀末のラッパは、今やいつ鳴ってもおかしくなかった。




