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2.女子達の夜

「ねぇねぇ、康太くんの彼女ってどんな感じ??」

「二人いっつも一緒にいるからさぁ、色々聞きたくてもチャンスなかったんだよー」


 いつ以来だろう?

 女子達だけに囲まれてこんな恋愛の話するのは。


 最近は嬉しいんだけど康太と一緒に学校で過ごす時間が今まで以上に増えたから、じっくり女の子と話をするって事がだいぶ減ってしまった。

 それにどっちかっていうと、私は康太のファンの子に煙たがられていたと思っていたし、プール事件からは女の子と付き合う範囲をより一層狭めていた。


「みんなまともに聞いたら吐き気するからやめときなぁ」

 優の『またその話かよ』ってうんざりした顔。

 そりゃそうだよね、あんだけ目の前でべったりされてたら。

 私だって自覚はあるし、優には付き合わせちゃって申し訳ないっていつも本当は思ってる。


「新道さんはさぁ、二人と一緒にいる時間長いから色々知ってるんでしょ? ねぇ、どうなの??」


 何故か私より優に注目が……


「どうって……、言っちゃっていいのかな、コレ」

 ムフと悪い顔をする。


「え、待って? 何言うつもり??」

 お願いだから今イチャイチャした事の仕返しすんのはやめてぇ!


「多分コレ柚子知らないんじゃないのかな」


 優の口から一体何が飛び出すのか……


「確か小学校一年か二年くらいの時、国語の授業で大事な人にお手紙を書きましょうっていうのがあったの覚えてる?」

「えー? あったっけ、そんなの」

「小学校っていちいち面倒な授業あったよね、そう言う誰かに手紙書こうとか、絵を描こうとか」


 私は誰に書いたんだっけなぁ……

 康太からは何度かそう言う学校で書いた手紙をもらった気がするけど、……内容は覚えてないや。


「柚子がプールで溺れて助けてもらった日、あんた康太におんぶされて背中で寝てたでしょ?」

「……そうだっけ?」


 あの日の記憶、所々抜けてるんだよなぁ。

 意識なかったり、寝てたりしてたから。


「……って言うかもう、康太くんにチューされて助けてもらうなんて、どっか童話の話じゃない? それ聞いただけでもう興奮して眠れないんけど。私、あの動画保存して何度も見てるし……うふふ」

「やだ! 消してよ!」

「いいじゃん、柚子の顔に自分の顔置き換えて見てんだからぁ。あたしらにもせめて夢くらい見させてよ」

 キャッキャと女の子達は、はしゃいでいる。


「自分の顔に置き換えるとかキモすぎでしょ? きっと康太の本性知ったら即消すわよ?」

 優にとって康太は今、天敵みたいになっちゃってるもんね。


「それでね、あんたが平松の車におんぶされながら移動してる途中、康太の生徒手帳が落っこちてさ」

「うん?」


「あたし、康太は柚子の事おんぶして手が塞がってるから拾ってあげたんよ」

 うんうんとみんな一生懸命聞いている。


「そしたらさ、拾った時パラって一枚の折りたたんだ紙が生徒手帳の中から落ちてね」

「何の話……? 全く分かんない……」

 ここまで聞いても優が何を言いたいのか分からない。


「『こうたすき、ありがとう』って汚ったない字で書いてあってさぁ」

「………?」

「ちょっと? ここ柚子が恥ずかしいがるところなんだけど?」

「え? ホント分かんない」

「は??」


 そんな手紙書いたっけ……?


「それ私からのって間違いないの?」

 もしかしたら他の女の子の物かもしれないし……


「間違いないわよ、ちゃんと『ゆずより』って書いてあったもん」

「何だろうな……??」


 私の鈍感っぷりにざわつき始める部屋。

 でも本当に覚えてない。


「そもそも私が康太の事好きだって思い始めたの4年生の時だし」

「じゃあ、何だったの? あれ……」


「………さぁ?」


 ブーっと誰かが堪えきれずに吹き始めた。

「ちょっと、あんなイケメンが後生大事にもらった手紙取っておいてるのに、書いた本人記憶がないってどーゆー事?!」


「あたしあれ拾って康太に渡したら、『見た??』って凄い形相で睨まれたんだからぁ。面倒だから『ううん』って知らないフリしたけど」

「でも、ほんとに書いた記憶ないんだよな……、そんなラブレター的なやつ」


「あたしはさ、仲良し幼馴染だから、そう言う昔のちょっとした手紙とかって取っておくものなのかなぁって、拾った時はあんまり深くは考えなかったんだよ。もともと柚子が康太の事好きなのは知ってたし」


 全然心当たりが見つからない。


「まさかその時は康太がそんなに柚子の事溺愛してるなんて知らなかったからさ、あいつも差し出し主の記憶にもないもの、大切に今でも持ち歩いてるなんて、ホント報われない男だね」

 ウハハと笑って『ざまぁみやがれ』と吐き捨てた。


「明日自由行動だし、聞いてみようかな」

「そうしたら? あ、でもあたしの名前は絶対に出さないでよ?」

 優が慌てて口止めする。

 私は『ハイハイ』と頷いた。


「明日なんか康太くんと一日中デートみたいなもんじゃん。いいなぁ〜」

「うちのグループ、修ちゃんつきだけど一緒に来る?」

 羨ましそうな女子達の言葉を跳ね除けるように優が言う。


「え? そうなの? それは嫌だなぁ……。二人のデート、気になるけど修ちゃんいるなら遠慮しとくわ」

 そりゃそうだよね、ホントどうしたんだろう、急に一緒に回り出すなんて。

 今日の全体行動の時は私と康太、こっそり手を繋いで歩いてても注意するどころか見向きもしなかったくせに。


「修ちゃんもあの年で独身だし、プリプリの若い幸せカップルに二人に日頃の鬱憤でもぶつけようとしてんじゃない??」

「あはは! ありえるっ!」

「そういえば修ちゃんの甥っ子だっけ? 去年臨時の国語の講師できたイケメン!」

「同じ身内とは思えないよね〜。康太くんは川嶋さんのものになっちゃったし、あの人またうちの学校来ないかなぁ。そしたらもうちょっと成績上がるのに」

「出たよ、どうせイケメンは別腹でしょ?」


「明日夜またたっぷり聞かせて!」


 時計を見ればもう3時。

 冷やかしばっかりだったけど、こんな時間がとっても楽しくて。


「おやすみ、柚子」

「うん、おやすみ」


 なんだかんだ言いながらも、私と康太の事を見守っていてくれる優に感謝して。

 やっぱり女の子同士っていいなぁって、久しぶりに思えた夜だった。



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