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銀河機動旋風~真紅の緋音~  作者: 恥骨又造Mark.2
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緋音奮闘

道が開けた場所に出て人影が見えた。


「ぐふふ。迷い込んだが。まさかとは思うが、こんなガキ共がレジスタンスの戦士ではあるまい。

我らの命の糧として連れいく!」

「ギィーっ! このオンボロ機械野郎がッ! 姉ちゃんだけでも逃げて!」


人型の機械が子供に前に立ち塞がり、行く手を阻んでいる。

勇敢な男の子は姉だけでもこの場から逃がそうと、懸命に機械人間へと立ち向かっていた。


「フっ。威勢だけはいいな。こりゃ、数年は延命できる素材だ。

だが、躾は必要だな。クソガキッ!」


機械人間は感情が籠っていない声で少年を罵倒した。

さらに、容赦がない平手打ちで少年の頬を叩いた。

その衝撃によって少年は地面に横たわった。


「ま、マルス。だ、大丈夫!?」


この光景を遠目に見た緋音は全身に『怒り』が込み上がり、闘争本能に火が付いていた。

一切躊躇することなく彼らの間に割って入った。


「そこまでにしな! あたしが相手だよ」

「な、何者だ?」


緋音の乱入によって、機械人間の手が停止した。


「名乗る者でもない。通りすがりの『宇宙海賊』さぁ。

とりあえず、挨拶代わりに一発お見舞いするよ☆」


「宇宙海賊だと? き、貴様は!」


座右の銘? 

彼女の理念が持つ「撃たれる前に撃て」に従い迷うことなく、人型の機械に銃口を向けた。


啖呵を切った彼女の気迫とは裏腹に快音が轟かなった。

プシュ……。

銃口から空気が漏れたような音だけが残った。


「グヘッ。し、しまった!! 弾切れだった。こうなりゃ、接近戦あるのみ」


正確には小宇宙銃剣コスモガンソードに『弾丸』は存在しない。

空気――大気中に存在する微粒子が本体に備わっている

エネルギー機関のコスモドラグーンによって波動弾が生成されていた。


また、使用者の“精神エネルギー”によっても性能や出力などが左右される性質がある。


「あたしとした事がうっかりしてた。でも、二人とも安心して」

「う、うん……」


緋音は動揺せず優しく姉弟に語りかけていた。

この状況下で笑みを見せる彼女へ姉弟は不安を抱きつつも、

その場で緋音を見守ることしかできない。


「ほぉ~。この私相手に剣で挑むか無謀だな。死に体にしてやる」

「へへ。そんな簡単に行くかな? どりゃッ!」


緋音はブレイド形態に変形させ、両手で掴み一気に間合いを詰めて、力一杯振り下ろした。

鈍い音を奏で、機械人間を大きく後方へと吹き飛ばした。


「……! こ、これは」


「波動弾は無理でもエネルギーを“剣”に纏わせることができた。

思いのほか、威力があったね。おかげで、あんたごとぶっ飛ばせた!」


緋音の一撃は想像以上の威力だった。

波動エネルギーを剣に纏わせたことによって、機械人間の思惑が外れた。

咄嗟に銃身で受けたため、銃は砕けていた。


「グっ。思いのほか、人間の女にしてはやるな。

【宇宙機械三銃士】であるこのミケルを追い詰めるとは。気に入った、小娘」

「そりゃ、どうもー。三銃士ってことは、あの伯爵の手下ってことか!」


彼女の見立てとおり機械人間の服装からして、風雅で宇宙機械伯爵らと似た系統の面立ちだった。

緋音はより一層、この場で姉弟を救出して、ケリを付ける決意を固めるのだった。


「脱出した矢先、大物と出くわしたわね。

ここで敵の戦力を削っておけば、後に有利となる。覚悟しな!」

「す、スゴイ! さっきまで正直、不安だったけど、このお姉ちゃん強いや」


緋音の戦いぶりを目の当たりにして、弟のマルスは目を輝かせていた。


「うん。分隊長さんやバミューダと同じぐらい強い! 頑張れ!」


先ほどまでと空気が変わり、いい意味で緊張感が緩み緋音も本領を発揮した。


「あたしは負けない。早いとこあんたを片付けて、レジスタンスと合流する」


「どうやら、お前が『星森緋音』だな。伯爵様、自ら囚われたはずだったが。

レジスタンスの襲撃をいいことに脱出したのだな。だが、あまりいい気になるな。

一度、伯爵様に負けた分際で偉そうに。再び、お前を伯爵様に献上する」


ミケルは不敵な笑みを浮かべて、腰からサーベルを抜刀して緋音を襲った。


「うっ。パワー勝負か! 流石に正面からは分が悪い。

それでも、あたしの方がスピードは上のようだな」


いかに波動エネルギーを纏った剣であっても、生身の女性である緋音は

機械人間の力には劣勢だった。


しかし、彼女は“風”のように素早かった。

縦横無尽に駆け回り翻弄し少しずつ、ミケルへダメージを与えて行った。


「ちょこまかと、目障りな小娘だ。よほど、スピードには自信があるようだな。

次、私に接近したらその足を使えなくしてやる。グフフ……」


――一瞬にして、禍々しい雰囲気に包まれた。


それでも、緋音は退くことはない。

戦況的に彼女が優勢に変化はない。


「こちとら、足を止めた方が厳しい……。

それに万が一、あんたの策にハマってもあたしは斬り抜ける。

こんなところで立ち止まる訳にはいかないッ!」


「その自信が仇となる。まぁ、よい。来るがいい」


緋音は『ギア』をトッギアへと上げた。

再度、旋風を巻き起こしミケルを撹乱し、閃光の如き突きを放った――。


「機械である私の反応を凌駕したか。これも計算の内だ。

チェックメイトだ」


ミケルは懐に手を入れ、ある物を取り出し勢いよく栓を抜いた。

その瞬間、強烈な閃光が炸裂し緋音の視界が奪われた。


「せ、閃光弾!」


緋音は両目を閉じたまま、たまらず後方へと飛んだ。

ミケルは彼女のその姿を見てほくそ笑んだ。

こうなった緋音は恐れるに足らず、止めを刺しに近寄った。


「グフフ……無様な姿だ。無傷で捕らえたいところだが難しい。

多少、汚してもしょうがない」


ミケルは圧倒的に優位な状況になり“サドスティック”な一面を見せた。

無抵抗な緋音を存分にいたぶり【自尊心】を砕き、伯爵の元へと連れ戻す算段だった。


しかし、その思惑は儚く突如、ミケルの右腕に衝撃が走った。


「ウダダウ、しゃべり過ぎ。お陰で波動弾を命中させられた!」

「ぐふ……。し、しまった」


ミケルとの攻防の最中――。

小宇宙銃剣コスモガンソードの波動エネルギーは溜まり、波動弾を生成することができていた。


ただ、緋音も閃光弾が使用されることまでは予知できていなかった。

未来を見通す覇〇があれば造作もないが……。


それでも、両目が一時使用できない状況にも関わらず、

彼女の“精神エネルギー”はいつもより増加し波動弾の出力が上がっていた。

危機的状況下で見事、ミケルの右腕を吹き飛ばし粉砕させた。


「うぅ……。機械の体なのに痛みがある。苦しい……」

「あの伯爵野郎も苦しんでいたな。形勢逆転ってとこかな。降参しな?」


誰が見ても勝敗は歴然だった。

蹲り膝立ちのミケルを緋音は見下ろしている。


生殺与奪の権は間違いなく【真紅の緋音】が握っている。


「宇宙海賊だが、殺すことはしない。あくまでも、敵意がある者を撃ち抜くだけだ。

だが、仁義は貫いて貰おう。この姉弟に謝りなッ!」


「わかった……。すま……ないとでも言うと思ったか? このゴミクズ人間ども!」


ミケルは降参しようと見せかけたところ、サーベルを左手で拾い緋音に投げつけた。

およそ、三銃士という肩書から想像もできないほど惨めな姿だった。


「見苦しいぞ。あたしはもう少し行儀がよかった気がする。……まさか!?」


「フヘヘ。確かに勝負はお前の勝ちだ。だがしかし、私は最強の盾を手にした」


ミケルは詫びを入れずにそのまま敗走すると思っていたが違った。

事態は急展開した。


姉弟を人質にして緋音に選択を迫った。


「こうなっては退くに退けん。お前は頑張り過ぎて私を追い詰めた。

容赦なく殺しておけば、コイツらが死ぬことはなかった」


「迂闊だった。すまない……」


「ま、マルス! あなただけでもこのお姉ちゃんと一緒に逃げて!」


マルスの姉、リナがミケルに捕まった。

ミケルは彼女の首に腕を回した。ガッチリとホールドし身動きを封じている。


「言わなくても分かるよな? 銃を捨てろ」

「あぁ……」


緋音は小宇宙銃剣コスモガンソードを地面に置いた。

万事休す。

永遠にも感じられる時の中で、緋音の背後から声が聞こえた――。


『全員、伏せろ――!』


その声と同時に【赤い閃光】が宇宙機械三銃士ミケルの眉間を貫いた。

ほんの一瞬の出来事で緋音達は驚きが隠せなかった。


「ぐ……。これは……」


赤い閃光によって眉間を撃ち抜かれたミケルは静かに絶命した。


「お前たち遅れてすまない! 大丈夫か?」

「バミューダ! 遅かったよ! でもありがとう!」


さっきまでの殺伐とした雰囲気と打って変わり、和やかなムードに包まれた。

姉弟はバミューダの元へと駆け寄り勢いよく抱き付いた。


「それはすまなかった。他の隊が苦戦していたこともあって応援に回っていた。

俺が来るまでの間、マルス、リナを守れたか?」


レジスタンスの【分隊長】の一人であるバミューダ。

褐色がかった肌色が特徴的だった。


左目には痛々しい切り傷があった。

スラッとした体形だが、ワイルドな風貌でもあった。


それでも、眼の奥底は優しい瞳だった。

バミューダは薄汚れたマルスを見て、これまでの戦いを察し彼の「奮闘」を称えた。

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