解放
「その声はドジャーのおっさんだな! 行くぜ」
「おぉ、バミューダ。よくぞ、よくぞ助けに来てくれた……!」
バミューダは駆け出し声がする方へと向かった。
そして、彼らは抱き合った。
「生きてて、よかったぜ。これで、一安心だ」
二人は数年ぶりの再会だった。
その光景はまるで父と子のようにとても感動的な瞬間だった。
しかし、悠長に再会を喜んでいる時間はなかった。
「こないだは助かった。お前の狙撃によってみな助けられた」
「俺の戦いの中で最も長い長距離射撃だった。っと、いけねぇ。
再会を喜んでいる場合じゃない。みんな、よく聞いてくれッ!」
バミューダはこれまでの経緯を身振り手振りで説明した。
「な、なんと! 赤い戦士がこの星にやってきたのか。
おまけに語り継がれているあのレフィーナの娘だとは。……まさに決戦だな。
リーダーや参謀も前線に出撃したとは。こうしてはいられんッ!
今こそ、立ち上がる時だ。野郎共いいな?」
『おう!』
淀んでいた空気が打って変わり、一気に熱気に包まれた。
もうここには、明日に絶望し生きる希望を失っていた者はいなかった。
「それでこそ、レジスタンスの戦士だ。ただ、武器は必要最低限しか持ってこられなかった。
すまない……」
「これだけあれば十分だ。あとはここで現地到達する。
男はたとえ死ぬと分かっていても、戦わなければならない。
……ってな。とにかく、仲間の解放は俺達に任せろ。誇るべきではないが、
基地内部は知り尽くしている。宇宙海賊の仲間はd-5付近にいるはずだ。
お前はすぐにでも緋音と合流しろ! いいな?」
これまで彼らは交流する機会がなかった。
それでも、基地内部では宇宙海賊が伯爵に負けて囚われていたと噂は流れていた。
そうしたこともあって、レジスタンスの戦士として情報収集を怠ることはなかった。
「ありがとう! それじゃ、俺はそこに向かうよ。あとは頼んだぜッ!」
バミューダは笑みを浮かべて颯爽と立ち去って行った。
その後ろ姿を見て、ドジャーは誇らしい気持ちになっていた。
――その頃、宇宙海賊が囚われている場所では異変に気付き始めている者がいた。
「……一度も見回りが来ない。それにやけに静かだ。外で何か起きている?」
「うぇ~。そういえば、そうだな。ロボットでもサボりたい時あんだろ?」
緋音の仲間――家族と同じぐらい大切な仲間達は無事に全員生きていた。
その中で最も機転が利くマルコは妙な胸騒ぎを感じている。
彼以外、いつもの日常と化してしまった状況下で違和感を覚えなかった。
「いや、何か音が聞こえる……」
シリアスな表情のマルコを見て、流石に他の船員達も黙り込み耳を澄ませた。
カッカッと素早く床を叩く音と、ズド、ズドっと床を勢いよく踏み込むような音が
等間隔に基地内部に響いていた。
次第に音は近くなり、彼らに迫っていた。
「これは人の足音だ。多分、二人だ。……ま、まさか!?」
思わずマルコは隣にいる船員に顔を付き合せ、一つの可能性を信じた。
彼の予感が的中すれば、少し前に旅立った船長が帰還する。
「た、頼む。姉御であってくれ~」
「とりあえず、みんな身の支度をしておけ。予想が当たっても外れても、
この場所から移動せざる得ない気がする。いいな?」
マルコの指示に頷き、一同固まり固唾を飲んでその時を待った。
やがて、足音は彼らの前で止まった。
見慣れた造形の影が動き出し姿を現した。
「みんな、大丈夫か!? 助けに来たぞっ!」
『あ、姉御――ッ!』
数週間振りに再会した緋音と船員達。
この場は歓声に沸いた。
「姉御も無事でよかった! 上手いことレジスタンスへ合流できたんですね」
「色々あったけど、どうにか彼らに迎えられたよ。今、大規模な基地攻略作戦が行われている。
あたしとバミューダと参謀は頭部から侵入し、囚われた人たちを解放する部隊さ」
マルコ達もレジスタンス同様に強制労働を強いられていたが、
まったく交流はなく外部との接触を封じられていた。
緋音からの説明を聞き事態を把握できた。
「なるほど。以前のように彼らは基地攻略作戦を展開しつつ、
別働隊で救出も実行しているんですな。そんで、バミューダと言う人は別々に?
もう一人の参謀はどこに?」
「流石はマルコ。理解が早くて助かるよ。
バミューダは囚われている歴戦のレジスタンスの戦士達を救出中だ。参謀はと……」
「まだまだ、感覚は鈍ってます。どうやら、訳ありのようですな」
謙遜しているマルコだったか、周囲の事象をアップデートできた。
他の船員達は頷きながらも、理解している風だった。
「まぁ、参謀はもうじきやってくるよ☆ とにかく、みんなを解放する。
みんな、扉の前から離れて! 波動弾で撃ち抜くッ! テイっ!」
緋音は愛銃、小宇宙銃剣を構えて波動弾を発射し扉を豪快に破壊した。
部屋へ入り、みんなの拘束具を解除した。
「ありがとう、姉御! これで自由だ! やったぜ」
「早とちりもいいところだ。まだ、やるべきことは沢山ある」
船員達は解放され、歓びを体で表現している。
マルコや緋音は苦笑いをしつつも、彼らの純粋な気持ちに共感もできた。
「あぁ、イケない、いけない……。そうでした。早いとこ、バミューダに合流しましょう」
「うん。後は参謀を待つだけ。もう遅いなぁ~」
半ば呆れている緋音だったが、ドゴっと足跡が聞こえた。
ようやく、参謀が到着した模様だった。
「はぁはぁ……。アン様……。中年には厳しい。体に鞭を打って……」
「おいおい、おっさん大丈夫か? 手を貸そう」
息切れで汗だくの中年を見かねてマルコは方を貸して参謀を補助してあげた。
その際、二人は目線があった。
「すまない……。ってお、おぬしは!?」
「あ、アンタは!?」
顔を合わせると二人は同じリアクションをした。
「れ、レフィーナ様と一緒に未来へと旅立った海賊! おぉ、無事であったか。
よくぞ、これまでアン様を守り育ててくれた」
「や、やっぱりそうか。レフィーナ様やサーシャ様に仕えていた大臣だな。
まさか、こんなところで再会するとは。
となると、現代ではレジスタンスの参謀として戦っていたんだな」
あの日から一万二千年――。
二人はとっては数十年振りの再会だった。
「アン様。いざ、会ってみると不思議な感覚です。
あの日、アン様はまだ赤子で、マルコも若い青年でした。
時の流れを感じ、古い友人に会えて感謝しております」
「アンタも年はとったな。でも雰囲気は変わってないや。
そんで、姉御をなぜアン様と言うんだ?」
この件は最後になるが、緋音と参謀は懇切丁寧にマルコへ説明した。
きっと、本作品ではもう語ることはない。
別の作品では、初出のテイで説明されるかもしれない。
それはそれで。
「な、なんと……。姉御はレフィーナ様の娘だったとは……」
「そうじゃ。これまで説明できず、申し訳ない……」
あの日、半ば強引にマルコ達を巻き込んでしまったと、参謀は罪悪感にかられていた。
それもまた、レフィーナの意思を尊重した結果だった。
「だいじ……。いや、参謀。頭を上げてくれ。俺らはいいんだ。
むしろ、姉御に伝えなきゃいけないことがある……」
マルコはマルコでレフィーナが消失ことを打ち明けた。
「それは、誠かマルコよ。そ、そんなことが」
「あたしのお母ちゃん……。ありがとう、マルコ。ほとんど記憶にはないが、なぜだか懐かしいや」
マルコの中で点と点が線に繋がった瞬間だった。
今の緋音を見て、かつてのレフィーナを彷彿させる姿だった。
「はい……。最後まで姉御を抱いて、別れ際の表情は母親の表情でした。
慈愛に満ちて、俺らに姉御を託されました」
「うん……!」
少しだけ寂しげな表情を見せつつも、緋音は笑っていた。
そんな彼女の表情や雰囲気に大人達は救われていた。
「ますます、この戦いに負けるわけにはいかないね。ねえ、みんな?」
「左様です、アン様。となれば、バミューダと合流しましょう」
再び緋音一行は走り出した。
彼女には心強い仲間――家族も加わった。
「レジスタンスの戦士の多くは地下の牢獄に幽閉されておりやした。
きっと、バミューダはそこに向かい彼らを解放したはずです。
我々も向かいましょう」
一気に戦力が増したとはいえ、船員達は丸腰状態。
乱戦になった際、緋音の負担は拭えない。
今は迅速にバミューダと合流し戦力を強化させるのが鮮明。
「あぁ。バミューダのことだ。上手く仲間の元へ辿り着いているはず。
あたしたちは慎重に進んで合流しよう」
「備えあれば憂いなしです。みな、アン様から離れず慎重にな」
前方は緋音がリードし中間地点は参謀が担い後方ではマルコが目を光らせていた。
完璧な布陣であった。
すると、前方から床を素早く蹴る音が反響するのを耳にした。




